ドル円 雇用統計で上値は重くなるももみあい継続(週報5月第2週)

先週のドル円は東京が週前半3連休となったこともあって週明け月曜と週末金曜を除くと動意薄の一週間でした。

ドル円 雇用統計で上値は重くなるももみあい継続(週報5月第2週)

雇用統計で上値は重くなるももみあい継続

〇先週のドル円、週初はドル買い先行、金曜米雇用統計発表直後に前週29日の安値下回る
〇長期的なドル高の流れの中で短期的にドル売りの動きがやや長引きそうな状況とみる
〇米金利も雇用統計後にテーパリング思惑後退から低下するも、引けにかけ発表前水準以上に戻す
〇長期的な米金利先高観とともに為替においてもドル高という流れは依然有効
〇今週は108.30レベルをサポートに、109.30レベルをレジスタンスとする流れ

今週の週間見通し

先週のドル円は東京が週前半3連休となったこともあって週明け月曜と週末金曜を除くと動意薄の一週間でした。週初は前週木曜のFOMCで大きなイベントを通過したことから金曜のドル買い戻しの動きを受けてドル買いが先行しました。しかし、高値は109.70レベルまでで110円の大台での上値の重さを感じさせたことから、週末までは高値を徐々に切り下げる流れが続きました。イエレン財務長官が米金利上昇を容認する発言も見られましたが、ドル円への影響は見られず、雇用統計を迎えました。

米国雇用統計はNFP(非農業部門雇用者)が26.6万人と予想の4分の1程度という非常に悪い数字が出て、失業率自体も予想より悪かったことから最近の雇用統計にしては珍しく大きく動くこととなり、数字が発表された直後には前週29日の安値も下回ったことで、ドルの上値の重さを確定的なものとした動きとなりました。

今回の雇用統計はあまりに予想と離れていたことから急激な反応とはなりましたが、長期的な傾向としては雇用は回復を続けていますし、今回の数字も来月には上方修正される可能性も否定できませんので、これだけでドル売りに流れが変わったというよりも長期的なドル高の流れの中で短期的にドル売りの動きがやや長引きそうな状況になってきたという見方で良いでしょう。

米金利についてもFRBは前週のFOMCでテーパリングは時期尚早としながらも、イエレン財務長官は景気回復の流れの中で金利が上昇する動きを容認する発言をしており、このあたりは多くの市場参加者の見通しと近いものがあります。雇用統計後には一時的にテーパリング思惑後退から米金利は低下したものの引けにかけては発表前の水準以上に戻す動きとなり、依然として市場参加者による金利先高観が根強いことを感じさせました。

こうしたことを考えると長期的な米金利先高観とともに為替においてもドル高という流れは依然有効と考えられるのですが、年初から3月末までのドル高に対して4月は最終週までドル売りが進み、その後の買い戻しも5月3日の109.70レベルと110円の大台を試すことが出来なかったことで、市場参加者の見方も上下やや分かれてきたというのが今週初の状況です。

ただ、材料面では引き続き米金利と、史上最高値を更新する米国株式市場の動きを見ながら、ドル円に関してはどちらもドル買い方向に作用しやすい中で、日々のニュースや指標等で細かな動きが出てくるという見方がニュートラルなところでしょう。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

ここまでの動きは年初来高値と4月安値の61.8%戻し109.62がほぼ5月高値と一致し、また4月安値と5月高値の61.8%押し108.32がほぼ先週雇用統計後の安値と一致しています。また年初からの動きを見るとサポートラインは年初来安値とその後の1月の安値を結んだラインがいまだ有効で、このサポートラインを下回らない限りはドル安トレンドへの転換は考えない方がよさそうです。いっぽうでレジスタンスラインは年初来高値と5月高値を結んだラインとなっています。

つまり現状ではこれら2つのラインに挟まれ高値を切り下げ安値も切り上げるもみあいとなっていて、明確にどちらかに抜けるまで次の方向性は保留というところです。今週も基本的には先週のレンジの中でやや上値が重たいという見方で良いでしょう。

今週は108.30レベルをサポートに、109.30レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

5月10日(月)
10:30 豪州4月企業景況感
16:00 トルコ3月失業率
27:00 シカゴ連銀総裁講演

5月11日(火)
08:01 英国4月小売売上高
08:50 日銀会合主な意見公表
10:30 中国4月CPI・PPI
15:00 ドイツ4月PPI
16:00 トルコ3月鉱工業生産
18:00 ドイツ5月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏5月ZEW景況感
23:30 英中銀総裁講演
23:30 NY連銀総裁講演
25:00 ブレイナードFRB理事講演
26:00 サンフランシスコ連銀総裁講演

5月12日(水)
15:00 英国1〜3月期GDP速報値
15:00 英国3月貿易収支、鉱工業生産
15:00 ドイツ4月CPI
18:00 ユーロ圏3月鉱工業生産
18:00 英中銀総裁講演
21:30 米国4月CPI
22:00 クラリダFRB副議長講演
23:30 週間原油在庫統計

5月13日(木)
**:** シンガポール、トルコ市場休場
08:01 英国4月住宅価格
08:50 本邦3月貿易収支
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国4月PPI
24:00 カナダ中銀総裁講演
29:00 (セントルイス連銀総裁講演)

5月14日(金)
**:** トルコ市場休場
21:30 米国4月小売売上高
21:30 米国4月輸入物価
22:15 米国4月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国5月ミシガン大消費者信頼感速報値
23:00 米国3月企業在庫
26:00 (ダラス連銀総裁講演)

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

5月3日(月)
ドル円は前週末NY市場でのドル高の流れを継続し、特に材料は無かったものの3日アジア市場で一段高、欧州市場序盤には109.70レベルの高値をつけました。しかし109円台後半から110円の大台にかけてはドル売りオーダーがあったこと、またユーロドルでのユーロ買いの動きからドル円でもドルが連れ安の展開となりました。NY市場では弱めの経済指標をきっかけにドル売りが強まり、米金利低下も重なったことから日計りのストップも巻き込みながら108.90レベルまで水準を切り下げました。108円台ではドル買いも見られ109円台に戻して引けました。

5月4・5日(火・水)
4・5日連休中のドル円は109円台後半の売りと108円台後半の買いを確認したことや、東京勢が連休で休みとなったこともあり、月曜のレンジ内で109円台前半を中心として、高値を切り下げ、安値を切り上げるもみあいを5日のNYクローズまで続けました。イエレン財務長官が米金利の上昇を容認する発言をしたことで、米金利が上昇する動きも見られましたが、ドル円への影響は限定的なものとなりました。

5月6日(木)
連休明けのドル円は東京前場は株高とともに円安の動きが先行しましたが、昼前につけた109.43レベルが1日の高値となり失速。NY市場まではじり安となっていましたが、米国の強めの経済指標をきっかけに買い戻しも見られましたが、東京前場の高値は抜けられず、109.00レベルまで下げて安値圏での引けとなりました。

5月7日(金)
ドル円は米国雇用統計を控え、また東京勢はゴールデンウィークで休みのところもありほとんど動きのないままのNY市場入り。NFPは予想(100万人)を大きく下回る26.6万人、失業率も予想(5.8%)より悪化し6.1%となったことでドルは発表直後に108.34レベルまで水準を切り下げました。直後にはテーパリング思惑後退もあって大きく低下していた米金利が徐々に水準を戻す動きとともに108.88レベルの戻り高値をつけ、引けにかけては108円台半ばでもみあいのまま引けました。

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