トルコリラ円 米・トルコ関係悪化への懸念、エルドアン大統領の利下げ圧力でリラ安再開(21/4/26)

トルコリラ円は4月23日夜安値で12.78円まで下落、3月22日暴落以降の安値を更新した。

トルコリラ円 米・トルコ関係悪化への懸念、エルドアン大統領の利下げ圧力でリラ安再開(21/4/26)

米・トルコ関係悪化への懸念、エルドアン大統領の利下げ圧力でリラ安再開

〇トルコリラ円、23日に12.78まで下落し3/22暴落以降の安値を更新
〇暴落一服での下げ渋りから転落で昨年11/6の史上最安値12.03を目指し始めた印象
〇対ドルでは26日朝に8.43まで続落して開始、3/30安値割れを試す勢い
〇カブジュオール新総裁「金融引き締め策を現在16%超のインフレ率が5%に下がるまで維持」
〇バイデン米大統領は24日、第1次世界大戦中のアルメニア人大量殺害を「ジェノサイド」と認定
〇トルコの捜査当局は23日、仮想通貨交換業者「トデックス」の関係者60人超を拘束
〇13円を超える場合は13.10手前を試すとみるが13.10以上は反落警戒圏とみる
〇12.60割れからは4/16からの続落基調がそのまま続けば12.00試しへ向かう可能性も

【概況】

トルコリラ円は4月23日夜安値で12.78円まで下落、3月22日暴落以降の安値を更新した。23日深夜にいったん12.90円台へ戻したものの再び売られており、4月26日早朝には12.76円まで安値を切り下げている。
日足は4月16日から6日連続の陰線で安値を更新。
週間では4月16日終値の13.44円から12.85円への大幅下落となり、3月30日にかけての暴落一服による3週間の持ち合いから下放れた。
トルコリラ円は4月22日夕刻安値12.87円へ急落した段階で中銀総裁更迭による暴落で付けた3月30日安値13.01円を割り込んだ。対ドルでのトルコリラは3月30日安値割れを回避しているが、トルコリラ円は4月からのドル円における円高の影響も見られるためドル/トルコリラに先んじて安値を更新した。
トルコリラ円は2月16日高値15.26円と3月19日高値15.13円でダブル天井を形成、3月22日の暴落でダブル天井の中間点にあった3月8日安値13.97円を割り込んでダブル天井が完成となり、暴落一服での下げ渋りから転落したことにより昨年11月6日に付けた史上最安値12.03円を目指し始めた印象だ。

4月23日のドル/トルコリラの終値は8.37リラ、22日終値の8.30リラから下落、取引レンジは8.41リラから8.27リラ。日足は4月16日から6日連続の陰線で下落、3月30日への暴落一服後の戻り高値であった4月2日の8.18リラと4月15日の8.15リラをダブルトップとしての下落であり、3月30日に付けた暴落時安値8.45リラに迫る展開となった。週明け4月26日朝には8.43リラまで続落して開始しており、3月30日安値割れを試す勢い。
週間足は4月16日終値の8.05リラから8.37リラへと大幅下落する大陰線となった。3月30日への暴落時には11月6日の史上最安値8.57リラ割れを回避したが、4月16日からの続落により史上最安値更新を再び試し始めた流れと思われる。

国民主権とこどもの日で4月23日はトルコは祝日。トルコ10年債利回りは4月22日終値で17.75%。3月30日へのリラ暴落時に18.60%へ上昇、4月15日に17.15%へ低下するなど4月入りからは落ち着いた動きだが、15日からは上昇再開の気配。3月22日のリラ暴落前の3月19日時点では13.63%だった。
4月22日時点のイスタンブール100株価指数は前日比1.1%高と上昇したが、週間ベースでは前週比4.47%安の下落。リラ安再開の動きに押されてきている。終値ベースでは4月21日時点で3月23日への暴落時終値を割り込んで3月17日以降の安値を更新している。

【中銀新総裁、利下げはしないが利上げもしない】

トルコ中銀のカブジュオール新総裁は4月23日にテレビ生放送番組において「政策金利は経済指標に応じて設定される」とし「金融引き締め策を現在16%超のインフレ率が5%に下がるまで維持する」と述べた。一方で中銀が政策金利を現行の19%からさらに引き上げることができると言った場合の実体経済への影響について懸念を示した。この発言により、当面は利下げに踏み切らないであろうと市場は理解したものの、利上げ否定派としての総裁のスタンスに変化はないとみてリラ売り材料とされた印象だ。

トルコ中銀のアーバル前総裁が3月19日付け官報で突然の解任が報じられた直後の営業日であった3月22日にトルコリラは暴落となり、カブジュオール新総裁は拙速な利下げへ進むことはないと繰り返し発言して市場の動揺を抑えようと躍起になった。4月15日の金融政策決定会合では市場予想通りに政策金利は19%で据え置かれた。しかし「必要に応じて追加引き締めを実施する」とアーバル前総裁が繰り返してきたタカ派的な文言を声明からは削除したためいずれは利下げしたいという姿勢の表れとしてリラ売りが再開した。
エルドアン大統領は4月7日の演説で「インフレが最近加速したが我々は物価上昇率を1桁に押し下げる決意だ」「金利も1桁に引き下げることを決意している」と述べて中銀に対する利下げ要求を強めている。また4月22日には貿易相を突然解任し、野党による外貨準備高不足に対する批判に反論するなど、トルコ金融・経済政策への不透明感が増している。

【米国との関係悪化への懸念】

バイデン米大統領は4月24日に第1次世界大戦中に起きたオスマン帝国によるアルメニア人の大量殺害を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定した。
サキ米大統領報道官は23日にバイデン大統領が6月11-13日の英南西部コーンウォールで開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)と、6月14日にブリュッセルで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席すると発表した。

バイデン大統領は23日にトルコのエルドアン大統領と電話会談を行い、NATO首脳会議に合わせて首脳会談を行うことで合意した。この電話会談においてバイデン大統領はエルドアン大統領に対してアルメニア人虐殺について米国が「ジェノサイド」と認定する意向を表明した。ホワイトハウスによるとバイデン大統領はエルドアン大統領に対し「協力分野を拡大し見解の相違に効果的に対応する建設的な二国間関係構築への関心を伝えた」としている。トルコ大統領府も両首脳が相互利益に絡む問題における協力拡大を巡り連携の重要性で一致した」と表明した。今のところ、目立った対立の深刻化は見られず、トルコ側もジェノサイドではないとの否定を表明しつつも米国に対しての協議姿勢も示しているが、両国の対立関係がいずれ深刻化してゆくのではないかとの懸念も膨らんだことは確かだろう。

【トルコの仮想通貨取引規制と混乱】

アナトリア通信によると、トルコの捜査当局は23日、同国を拠点とした仮想通貨交換業者「トデックス」の関係者60人超を拘束したと発表した。報道によると約20億ドルの顧客資金を持って創業者が国外逃亡し、国際指名手配された。トデックスは約39万人が計数100億ドル規模の資産を取引していたとされる。また当局は23日、別の交換業者「ウェビットコイン」に対する捜査も開始し、取引が停止されたという。
トルコ中銀は4月16日に仮想通貨への規制が不十分でリスクが高いとして仮想通貨による決済を禁止した。リラ安に対してトルコ国内投資家がハードカレンシーやゴールド、仮想通貨へと資産をシフトしている流れを阻害することでリラ防衛を狙っている印象があるが、こうした混乱がかえってリラ安を招くことになるのだろうと懸念される。

【40週サイクルによる下落期入り、5か月で4円強の下落リズム】

【40週サイクルによる下落期入り、5か月で4円強の下落リズム】

トルコリラ円は週足レベルにおいて概ね40週前後の周期で底打ちを繰り返してきた。2020年11月6日安値でこのサイクルの直近の底を付けて反騰期に入った。2018年8月13日底以降におけるこのサイクルの底打ちは2019年5月9日安値、2020年1月8日安値、そこから44週目の2020年11月6日底と推移してきた。
2018年8月13日底からの反騰が2018年11月29日までの16週で上昇一巡となって下落に転じたため、2020年11月6日底からの上昇についても16週というのが壁として注目されたが、今年2月16日高値がちょうど16週目となり、3月22日への暴落発生と4月16日からの一段安開始により、今回も上昇16週目の今年2月16日高値で40週サイクルのピークを付けて下落に転じたと思われる。
40週サイクルにおける底打ち間隔は8か月から11か月の範囲で推移してきたため、昨年11月底から8か月目なら今年7月、11か月目なら今年10月を目指す可能性が考えられる。

2月6日高値からの下落規模は2か月で2円を超えているが、昨年6月3日高値からの下落時や一昨年12月2日と昨年1月17日高値をダブルトップとしての下落時よりも急角度で進んでいる。一昨年12月から昨年5月7日底までが5か月で4.47円安、、昨年6月3日高値から昨年11月6日までが5か月で4.22円安あり、今回も5か月規模の下落で4円を超える下落規模とすれば、7月以降へ向けて11月6日底を割り込んで11円台序盤試し、さらに8月以降へ長引く場合は10円台を試す可能性もあるのではないかと懸念される。

以上を踏まえて、今週のポイントを示す。
(1)当初12.60円を下値支持線、13.10円を上値抵抗線とみておく。
(2)12.90円から13円にかけては戻り売りにつかまりやすいとみる。13円を超える場合は13.10円手前を試すとみるが13.10円以上は反落警戒圏とみてその後に12.90円を割り込むところからは下げ再開を想定する。
(3)12.60円割れからは12.50円、12.40円、12.30円と段階的に試してゆくとみるが、4月16日からの続落基調がそのまま続けば12.00円試しへ向かう可能性もあると注意する。

【当面の主な予定】

4月26日
 16:00 4月 製造業景況感 (3月 110.8、予想 105.0)
 16:00 4月 設備稼働率 (3月 74.7%、予想 74.4%)
4月29日
 16:00 4月 経済信頼感指数 (3月 98.9、予想 97.0)
 20:30 週次 外貨準備高 グロス 4/23時点 (4/16時点 496.9億ドル)
4月30日
 16:00 3月 貿易収支 (2月 -33億ドル、予想 -24億ドル)
 16:00 1-3月期 観光収入 (10-12月 39.1億ドル、予想 37.6億ドル)
 17:00 3月 観光客数 前年比 (2月 -68.96%、予想 -72%) 

5月3日
 16:00 4月 消費者物価 前月比 (3月 1.08%、予想 2.1%)
 16:00 4月 消費者物価 前年同月比 (3月 16.19%、予想 17.63%)
 16:00 4月 生産者物価 前月比 (3月 4.13%、予想 3.6%)
 16:00 4月 生産者物価 前年同月比 (3月 31.2%、予想 34.21%)
 16:00 4月 イスタンブール製造業PMI (3月 52.6)
5月6日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 19.0%、予想 19.0%)

注:ポイント要約は編集部

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