トルコリラ円見通し 3月30日安値を割り込む一段安、日足は5日連続陰線で下落(21/4/23)

トルコリラ円は4月22日夕刻安値12.87円へ急落した。

トルコリラ円見通し 3月30日安値を割り込む一段安、日足は5日連続陰線で下落(21/4/23)

トルコリラ円見通し 3月30日安値を割り込む一段安、日足は5日連続陰線で下落

〇トルコリラ円、4/22夕刻安値12.87へ急落、日足は4/16から5日連続陰線、3/30安値13.01を割り込む
〇対ドルでも8.36リラへ急落、4/16から5日連続の陰線で下落、3/30安値に迫る
〇4/22トルコの10年債利回りは17.75%で上昇一服、イスタンブール100株価指数は前日比1.1%高
〇エルドアン政権への不信感強まる、対円及び対ドルでのトルコリラが一段安となった材料的な背景か
〇米国とトルコの対立深刻化への懸念も、市場も注目
〇12.87割れ回避のうちは13.10前後への上昇余地ありとみるが、13.10以上は反落注意とする
〇12.87割れからは12.70台への下落を想定、12.75以下は反発注意とする

【概況】

トルコリラ円は4月22日夕刻安値12.87円へ急落した。その後は13円台をいったん回復したものの深夜の反落で再び13円を割り込んでいる。日足は4月16日から5日連続の陰線による下落となり、中銀総裁更迭による暴落で付けた3月30日安値13.01円を割り込んだ。
トルコリラ円は2月16日高値15.26円と3月19日高値15.13円でダブル天井型となり、3月22日の暴落でダブル天井の中間点にあった3月8日安値13.97円を割り込んだが、3月30日以降は暴落一服となり4月2日には13.84円まで戻した。しかしその後は小幅なレンジでの小康状態となったものの戻り高値が徐々に切り下がり、4月15日の中銀金融政策発表直後に13.56円まで戻したあとは先行きの利下げ懸念を背景に下落基調に転じていた。
4月21日夜にかけて4月15日の高安レンジを割り込む下落へ進み、安値で13.13円まで一段安していたが、22日はこの流れがさらに加速して13.20円を割り込んだ状況が続き始めたことで午後から投げ売り的なリラ安へと進んだようだ。

対ドルでのトルコリラも8.36リラへ急落した。3月22日から30日にかけての暴落で8.45リラへ下落、4月2日に7.96リラまでいったん戻した後は暴落一服商状で確りしていたものの、4月16日から下落再開に入り、4月22日まで5日連続の日足陰線で下落、3月30日安値に迫ってきている。
4月22日のトルコの10年債利回りは17.75%。21日に17.76%へ上昇したものの22日は上昇一服。リラ安によるトルコ債売りが加速する動きは見られなかったが、トルコ債への買い意欲後退により依然として利回りは高水準を維持している。
4月22日のイスタンブール100株価指数は前日比1.1%高と上昇。21日に前日比2.55%安となったが22日は安値更新を回避して買い戻された。トルコリラ円及び対ドルでのトルコリラの急落の割にはトルコ債及びトルコ株は確りだが力強さに欠けた状況の範囲にある。

【エルドアン政権への不信感、米国との対立深刻化への懸念】

4月22日にトルコリラ円及び対ドルでのトルコリラが一段安となった材料的な背景は、前日にエルドアン大統領が「トルコ中銀は必要なら再び外貨準備高を使用するだろう」「野党の中銀批判は間違っている」「野党は金融危機を望んでいる」等と野党による中銀の外貨準備高減少問題への追及に対して反論したことと貿易相を突然更迭したことなどにより市場の不信任感が強まったためといえる。
エルドアン大統領は4月7日の演説で「インフレが最近加速したが我々は物価上昇率を1桁に押し下げる決意だ」「金利も1桁に引き下げることを決意している」と述べて利下げ再開を目指している。新任のカブジュオール中銀総裁による初めての金融政策会合であった4月15日の中銀声明では前任のアーバル総裁が繰り返してきた「必要に応じて追加の引き締め政策をとる」との文言を使わなかったことも4月15日以降のリラ安を徐々に進めてきた原因となっている。

トルコリラへの売り圧力としては米国とトルコの対立深刻化への懸念もある。米バイデン政権は第1次世界大戦中に起きたオスマン帝国時代のトルコによるアルメニア人の大量殺害について、正式に「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定する見込みと報じられた。政府関係筋によるとバイデン大統領は4月24日の犠牲者追悼記念日の声明で「ジェノサイド」という言葉を盛り込む公算が大きいという。サキ米大統領報道官は4月21日に「踏み込んだ発言」をする可能性が高いと述べた。
これに対してトルコ大統領府は4月22日にエルドアン大統領がこの問題に関して協議したとし「エルドアン大統領はいわゆるアルメニア人のジェノサイドを巡るうそと政治的な動機に基づきこのような誹謗中傷を支持する人々に対し真実を主張し続けると表明した」と発表している。

ウクライナ国境付近に大量集結していたロシア軍は演習終了として撤退したことでウクライナを巡る軍事緊張は後退したが、ウクライナ問題ではトルコもウクライナに無人機を提供するなどでロシアと対立している。またトルコは黒海へのイスタンブール運河建設により米軍艦隊が同運河を利用して黒海へ侵入することを可能とする動きを見せている。逆にロシア製ミサイルをNATO加盟国のトルコが導入したことで米国及びNATO諸国との対立もある。トランプ前大統領はエルドアン大統領へ好感を示していたがバイデン大統領はかつてエルドアン氏を独裁者呼ばわりしており、バイデン政権発足からの米国・トルコ関係の先行きへの緊張感も増している状況にあるが、複雑に入り組んだ状況でもあり、バイデン政権がストレートにエルドアン政権を刺激するか、それに対してエルドアン政権があからさまな反抗的な姿勢を示すのかどうか、市場も注目している。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4月15日夜の中銀金融政策発表直後の急落から持ち直したために16日午前時点では12日夕安値から3日目となる15日夜安値を直近のサイクルボトムとしたが、4月19日夕刻への下落で弱気転換目安とした13.40円を割り込んだために20日午前時点では16日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして20日午後から22日夜にかけての間への下落を想定した。
22日夕へ一段安してからいったん戻したが、前回ボトムから5日を経過したので22日夕安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとするのを妥当とみて22日夕安値を直近のサイクルボトムとする。底割れ回避のうちは23日の日中から26日にかけての間への上昇余地ありとするが、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして27日から29日夕にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では17日未明への下落で遅行スパンが悪化、19日夕刻の下落で先行スパンからも転落したが、その後も両スパン揃っての悪化が続いている。安値更新を回避して推移すれば遅行スパンは好転しやすくなるが、先行スパンを上抜き返せないうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後の悪化から下げ再開とし、強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。

60分足の相対力指数は22日夕刻の一段安で20ポイントを割り込んだが、その後はやや持ち直しているものの50ポイントに到達できずにいる。30ポイント以上での推移中は上昇余地ありとするが、30ポイント割れからは再び10ポイント台への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。

(1)当初、4月22日夕安値12.87円を下値支持線、13.10円を上値抵抗線とする。
(2)22日夕安値割れ回避のうちは13.10円前後への上昇余地ありとみるが、13.10円以上は反落注意とし、13.10円を超えた後に13.00円を割り込むところからは下げ再開とみる。
(3)12.87円割れからは12.70円台への下落を想定する。12.75円以下は反発注意とするが、13円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

4月26日
 16:00 4月 製造業景況感 (3月 110.8)
 16:00 4月 設備稼働率 (3月 74.7%)
4月29日
 16:00 4月 経済信頼感指数 (3月 98.9)
 20:30 週次 外貨準備高 4/23時点 
4月30日
 16:00 3月 貿易収支 (2月 -33億ドル)
 16:00 1-3月期 観光収入 (10-12月 39.1億ドル)
 17:00 3月 観光客数 前年比 (2月 -68.96%)


注:ポイント要約は編集部

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