ドル円見通し 111円手前から小反落するも3月23日からの騰勢継続(21/4/1)

ドル円は3月31日昼高値で110.96円へ上昇、3月24日安値108.39円以降の戻り高値を切り上げ、1月6日底102.57円以降の最高値を更新した。

ドル円見通し 111円手前から小反落するも3月23日からの騰勢継続(21/4/1)

111円手前から小反落するも3月23日からの騰勢継続

〇ドル円、31日昼110.96へ上昇し1/6底102.57以降の最高値を更新
〇米ADP3月全米雇用報告、非農業部門民間就業者数は前月比51万7000人増で2月から倍増以上に
〇31日の米10年債利回りは前日比0.03%上昇の1.74%
〇バイデン大統領による大規模なインフラ等投資計画発表をナスダックは好感して上昇
〇ダウは週末の米雇用統計と聖金曜日祝日を控えて利益確定売りが優勢で前日比85.41ドル安
〇31日昼高値110.96超えからは111円台序盤を目指すとみる
〇31日深夜110.40割れからは110前後への下落を想定するが、押し目買いされやすいと見る

【概況】

ドル円は3月31日昼高値で110.96円へ上昇、3月24日安値108.39円以降の戻り高値を切り上げ、1月6日底102.57円以降の最高値を更新した。111円台に乗せれば昨年2月20日天井112.21円とのダブルトップであった3月24日高値111.71円以来の水準となるところだったが、米長期債利回りの上昇一服でドル高感が弛んだために111円到達には至らずにいったん仕切り直しの調整安で31日深夜には110.40円まで小反落した。しかし中勢としてのドル高基調は継続的であり、米長期債利回りも31日夜にかけてはやや低下していたものの高止まりの範囲となり1日早朝にかけては上昇再開となったことでドル円も持ち直しに入り、高値更新を伺うところとなっている。

米ADPによる3月全米雇用報告では、非農業部門民間就業者数は前月比51万7000人増となり市場予想の55万人増を下回ったが2月の17万6000人増からは倍増以上となった。
米MNIインディケーターズによる3月シカゴ購買部景況指数は66.3で2月59.5から上昇して市場予想の60.7を上回った。
米不動産業者協会(NAR)による2月中古住宅販売仮契約指数は前月比10.6%低下して市場予想の2.6%低下を大きく下回ったが、寒波の影響が指摘されている。

【バイデン政権の巨額インフラ投資計画踏まえて米長期債利回り上昇基調は継続】

3月31日の米10年債利回りは前日比0.03%上昇の1.74%だった。30日午後には1.77%台まで一段高していたところからはいったん調整的に低下して31日朝から夜にかけては1.70%台から1.74%前後までの範囲で落ち着いていたが、31日深夜から上昇再開となり1.75%へ迫ってきている。
3月31日のNYダウは前日比85.41ドル安、ハイテク株中心のナスダック総合指数は201.47ポイント高と強弱が分かれた。バイデン大統領による大規模なインフラ等投資計画発表をナスダックは好感して上昇したが、ダウは当初は強含んだものの週末の米雇用統計と聖金曜日祝日を控えて利益確定売りが優勢となったようだ。

為替市場では31日夜にかけてドル高が弛んだため、ユーロドルは31日昼に1.1702ドルまで下げて年初来安値を更新したところから深夜に1.1750ドルをいったん超えるところへ戻したが、その後は失速している。ポンドドルは30日深夜へ下げたところからは持ち直しを続けており、3月25日安値からは新たな安値更新を回避している。豪ドル米ドルは31日深夜へやや戻したものの30日昼高値には届かずに失速して3月25日安値割れには余裕が乏しくなっている。一方で新興国通貨は総じて上昇するなど、ドルの強弱はややまちまちとなっているが、ドル指数の過半を占めるユーロと円は年初からの下落基調の範囲での推移であり、ドル高感が多少弛んでもドル安へ転じる勢いには欠けている印象だ。やはり米長期債利回りの上昇基調が継続していることが大きい。

3月31日にはバイデン米大統領によるインフラ投資計画の発表があった。インフラ整備や気候変動対策、中国へ対抗したIT基盤整備などにより8年間で2兆ドルを超える投資規模となっている。内訳では道路整備等に6210億ドル、電気自動車普及への充電施設整備による脱炭素化、高速インターネット網の拡大と人工知能(AI)等の先端技術研究開発に1800億ドル、製造業の振興策で3000億ドル等となっている。決定済の新型コロナウイルス対策としての1.9兆ドルの経済対策に続く大型財政出動であり、4月には社会福祉関連投資の追加発表もあり、今回の2兆ドルから総額は3兆ドルを超える規模へ拡大して1930年代のニューディール政策以来の規模となる見込みだ。財源はトランプ政権時代に21%へ低下した法人税を28%へ引き上げて賄うとしたが、大量の国債発行を伴うことは必至であり、債券需給緩和による米長期債利回り上昇基調はさらに続きそうで、米長期債利回り上昇=ドル高円安の流れもまだ終点が見えないと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月26日夜高値から29日午後安値へいったん反落してから一段高したために3月30日朝時点では3月29日午後安値を押し目底として新たな強気サイクルに入ったとし、高値形成期を31日から4月2日夜にかけての間と想定した。
3月31日昼高値から深夜へ小反落したものの切り返しているのでまだ上昇継続中とし、米雇用統計反応次第では週明けへの上昇延長もあるとみるが、31日深夜安値を割り込む場合はいったん調整安に入るとみて1日の日中から5日にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では29日午後安値からの反騰と一段高により遅行スパンは好転、先行スパンを上抜いた状況も継続している。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とする。遅行スパンは悪化しやすい位置にあるので遅行スパン悪化からは安値試し優先とするが、先行スパンを上抜いた状況を維持するうちはその後に遅行スパンが好転するところから上昇再開とみる。弱気転換は31日深夜安値を割り込むところからとし、その際は遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げ足が早まる可能性もあると注意する。

60分足の相対力指数は31日夜の下落で50ポイントまで低下したがその後は持ち直しているので上昇継続とみる。31日高値を超える場合は70ポイント台回復とみるが、50ポイント割れからはいったん調整安に入り40ポイント割れを目指す可能性があると注意する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月31日深夜110.40円を下値支持線、31日昼高値110.96円を上値抵抗線とする。
(2)110.40円以上での推移中は上昇余地ありとし、110.96円超えからは111円台序盤(111.00円から111.30円)を目指すとみる。111.30円以上は反落警戒とするが、110.40円以上での推移なら2日も高値試しへ向かいやすいとみる。また勢い付く場合は昨年3月24日高値111.71円を目指す動きを予想。
(3)110.40円割れからは110円前後への下落を想定するが、そこは押し目買いされやすいとみる。110.40円を割り込んだ後に110.75円を超えるところからは上昇再開とするが、110.40円を割り込んだ後も110.50円以下での推移なら2日も安値試しへ向かいやすい見立てとなる。

【当面の主な予定】

4/1(木)
休場(聖木曜日)メキシコ
09:30 (豪) 2月 貿易収支 (1月 101.42億豪ドル、予想 97.00億豪ドル)
10:45 (中) 3月 財新製造業PMI (2月 50.9、予想 51.3)
15:00 (独) 2月 小売売上高指数 前月比 (1月 -4.5%、予想 2.0%)
15:00 (独) 2月 小売売上高指数 前年同月比 (1月 -8.7%、予想 -6.3%)
16:50 (仏) 3月 製造業PMI改定値 (速報 58.8、予想 58.8)
16:55 (独) 3月 製造業PMI改定値 (速報 66.6、予想 66.6)
17:00 (欧) 3月 製造業PMI改定値 (速報 62.4、予想 62.4)

17:30 (英) 3月 製造業PMI改定値 (速報 57.9、予想 57.9)
21:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 68.4万件、予想 68.0万件)
21:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 387.0万人)
22:45 (米) 3月 製造業PMI改定値 (速報 59.0、予想 59.2)
23:00 (米) 3月 ISM製造業景況指数 (2月 60.8、予想 61.3)
23:00 (米) 2月 建設支出 前月比 (1月 1.7%、予想 -1.0%)
26:00 (米) フィラデルフィア連銀総裁、講演

4/2(金)
休場(聖金曜日) メキシコ、ニュージーランド、オーストラリア、シンガポール、独、スイス、仏、英、南ア、カナダ
休場(聖金曜日) 米国(為替通常取引、債券短縮取引、株式・商品休場)
休場(清明節) 香港
07:05 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、討論会参加
08:50 (日) 3月 マネタリーベース 前年同月比 (2月 19.6%)
21:30 (米) 3月 非農業部門就業者数 前月比 (2月 37.9万人、予想 63.0万人)
21:30 (米) 3月 失業率 (2月 6.2%、予想 6.0%)
21:30 (米) 3月 平均時給 前月比 (2月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 3月 平均時給 前年同月比 (2月 5.3%、予想 4.5%)

注:ポイント要約は編集部

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