ドル買い・円売りの動きも107円までか(週報3月第1週)

先週もドル円はドル高・円安が進んだ一週間となりました。

ドル買い・円売りの動きも107円までか(週報3月第1週)

ドル買い・円売りの動きも107円までか

〇先週のドル円、ドル高・円安が進んだ一週間に
〇米金利急上昇は米国株式市場では懸念材料となり日経平均にも調整が入るが株安による円高の反応はなし
〇通常なら低金利下で株高、金利が上昇すると株式の配当利回りと比較する見方へ
〇国際利回りが上昇すると価格変動リスクのある株式への投資を控える傾向に
〇金利緩和縮小の思惑が金融市場全体の波乱要因になる可能性
〇今週の注目材料は米国雇用統計
〇今週は105.90レベルをサポートに106.90レベルをレジスタンスとする流れ

今週の週間見通し

先週もドル円はドル高・円安が進んだ一週間となりました。他の主要通貨では必ずしも米金利上昇がドル高とはならないケースが多いのですが、ドル円に関してだけは金利高=ドル高の図式が続いています。最初にドル円と10年債利回りを並べた日足チャート(下段が米金利)をご覧ください。

今週の週間見通し

2月第3週こそ米金利上昇の中でドル円は下げていますが、それ以外の期間では年初からほぼ同じ値動きとなっていることがわかります。同期間に関しては主要通貨に対してドルが全般に下げる動きにドル円も追随した動きとなったことは先週書いた通りですが、直近一週間米金利は前週の利回りを更新し1.614%にまで上昇する動きとなりました。この金利急上昇は米国株式市場では懸念材料とされ、株安の動きとなり日経平均にも調整が入りましたが、ドル円には株安による円高という反応は全く見られませんでした。

通常の金融市場であれば低金利下では株高となり、金利が上昇すると株式の配当利回りと比較するという見方がしばしばされますが、景気回復期待が先行している時はまだしも最近の株式市場では景気回復期待はある程度織り込まれているため、株式の配当利回りより国債利回りが上昇すると価格変動リスクのある株式への投資を控える傾向が出てきます。先週の木曜はまさにその状態で、債券利回りが1.6%を超え米国の主要株価指数であるS&P500の配当利回りは現在の株価で1.5%をやや下回ります。

仮に1.5%を超える水準で米金利が推移すると、金利の動きは為替市場以上に株式市場でより注目されるようになってくると言えそうです。また、金利上昇は市場参加者だけでなくFRB関係者も注視してはいるようですが、パウエル議長のインフレ懸念は無いという発言や、地区連銀総裁によるインフレ目標達成に好ましいといった全く懸念していない状況に反して、市場参加者は警戒感を高めている状況が続きます。すぐでは無いにせよどこかでテーパリング(緩和縮小)の話が出てくるに違いないといった思惑が、目先の金融市場全体の波乱要因になる可能性は常にあるでしょう。

今週は月初ということで注目材料としては米国雇用統計があります。こちらもパウエルFRB議長は雇用労働市場にかなりの緩みがありFRBが考える最大雇用には程遠いという見解を議会証言で示した後ですから、今回も含めて雇用の数字が改善してくると市場参加者によるテーパリング思惑は一層強まる可能性がありそうです。その場合、株式市場は下げる可能性が高いでしょうし、その時には為替市場では円高の動きになりやすいと見ています。

テクニカルにも見ていきます。いつもの日足チャートをご覧ください。

年初来安値を起点としたサポートとそれに平行に引いたラインとで構成される上昇チャンネル(青い太線による平行線)の中を着実にドル高・円安に進む展開が続いています。先週は水準的にも日柄的にもいったん調整が入る可能性を考えましたが、想定以上に米金利が上昇し、それに伴って一気に反転上昇の動きとなりました。サポートラインには届かなかったものの、上昇チャンネルは継続していると考えてよいでしょう。

今週はこの上昇チャンネルの上限が週末には107円に到達しますし、1月下旬の安値を起点とした上昇N波動では100%エクスパンションが106.84(ピンクのターゲット)、2月下旬の安値を起点とした上昇N波動でも100%エクスパンション(青のターゲット)は106.72と106円台後半はいったんターゲットとしながらも調整が入りやすい水準であることがわかります。

金融市場に対して市場参加者は懸念を示している中で、テクニカルにもそろそろ上限に近づいてきたと見て、今週は105.90レベルをサポートに106.90レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

3月1日(月)
10:45 中国2月MarkIt製造業PMI
16:00 トルコ10〜12月期GDP
16:00 トルコ2月製造業PMI
17:50 フランス2月製造業PMI
17:55 ドイツ2月製造業PMI
18:00 ユーロ圏2月製造業PMI
18:30 英国2月製造業PMI
22:00 ドイツ2月CPI速報値
23:00 NY連銀総裁講演
23:05 ブレイナードFRB理事講演
23:45 米国2月製造業PMI
24:00 米国2月ISM製造業景況指数
28:00 アトランタ連銀総裁、(クリーブランド連銀総裁、ミネアポリス連銀総裁)討論会

3月2日(火)
08:30 本邦1月失業率・有効求人倍率
09:30 豪州1月住宅建築許可件数
12:30 豪中銀政策金利発表
16:00 ドイツ1月小売売上高
16:00 英国2月住宅価格
17:55 ドイツ2月失業率
19:00 ユーロ圏2月CPI速報値
27:00 ブレイナードFRB理事講演
28:00 サンフランシスコ連銀総裁講演
30:45 NZ1月住宅建築許可件数

3月3日(水)
09:30 豪州10〜12月期GDP
10:45 中国2月MarkItサービス業PMI
16:00 トルコ2月CPI
17:50 フランス2月サービス業PMI
17:55 ドイツ2月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏2月サービス業PMI
18:30 英国2月サービス業PMI
19:00 ユーロ圏1月PPI
22:15 米国2月ADP全国雇用者数
23:45 米国2月サービス業PMI
24:00 米国2月ISM非製造業景況指数
24:00 (フィラデルフィア連銀総裁講演)
24:30 週間原油在庫統計
27:00 シカゴ連銀総裁講演
28:00 ベージュブック
29:15 NZ中銀総裁講演

3月4日(木)
09:30 豪州1月貿易収支
17:10 オランダ中銀総裁講演
18:30 英国2月建設業PMI
19:00 ユーロ圏1月失業率、小売売上高
21:30 米国2月チャレンジャー人員削減予定数
22:30 米国新規失業保険申請数
24:00 米国1月製造業新規受注
26:05 パウエルFRB議長講演

3月5日(金)
16:00 ドイツ1月製造業新規受注
16:45 フランス1月貿易収支
22:30 米国2月雇用統計
22:30 米国1月貿易収支
**:** 中国全人代(〜12日)

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

2月22日(月)
東京市場では米金利が上昇する動きとともに105.83レベルまで上昇、米国10年債利回りは今年最も高い1.394%をつけました。その後海外市場では米金利低下とともにドル売りの動きとなりNY市場では105円を割り込みそのまま安値圏での引けとなりました。

2月23日(火)
前日NY市場昼前に底打ちとなった米金利への反応はNY市場では追随しなかったものの、東京が休場となった23日に遅れて反応する動きとなり、ドル円は買い戻しが目立ちました。104円台では買いたい向きが多かったということもあり、NY前場には105.43レベルの戻り高値をつけ、パウエルFRB議長の議会証言を前に押しを挟んだものの底堅い地合いでの引けとなりました。

2月24日(水)
円全面安の1日となりました。東京朝方から円売りが先行する中で仲値すぎにポンド円が150円台へと急騰、それとともに他のクロス円でも円売りが進みました。その後欧州市場まではやや動きは鈍ったものの、米金利上昇をきっかけにドル買いの動いとなり、NY前場には106円台乗せ。引けにかけては米金利低下とともに調整の売りも見られました。

2月25日(木)
上下しながらも円安トレンドが続きました。東京朝方からドル円、クロス円ともに円売りが強まりドル円は仲値すぎには前日高値を上抜け106.14レベルをつけましたが、17日高値の106.22レベルは試せずに反落。東京後場の105.84レベルからは米金利上昇とともに再び上昇し、米国10年債利回りは一時1.614%にまで上昇、NY後場には106.41レベルの高値をつけやや押して引けました。

2月26日(金)
東京前場のドル円は早朝こそ買いが出たものの、米金利低下と日経平均の下げに反応してドル売りに転じ、昼前に105.85レベルの安値をつけました。東京後場以降は金利や株価の動きよりもユーロドルでの下げに反応してドル買いへと歩調を揃え、上下しながらもNY昼過ぎには106.69レベルへと週間高値を切り上げ、引けにかけては若干押しての月末クローズとなりました。

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