トルコリラ円見通し 史上最安値に歯止めかからず、トルコ財務相発言もリラ売りを加速(10/28)

トルコリラ円は27日午後からはさらに下げ足が早まり、22時過ぎには12.66円までフラッシュクラッシュ的な急落で最安値をさらに更新した。

トルコリラ円見通し 史上最安値に歯止めかからず、トルコ財務相発言もリラ売りを加速(10/28)

史上最安値に歯止めかからず、トルコ財務相発言もリラ売りを加速

〇トルコリラ円フラッシュクラッシュ的な急落、12.66で最安値更新
〇トルコ財務相のテレビ会議発言でリラ売り加速した印象
〇対ドルでは27日深夜に8.192リラまで安値更新、28日午前も下げ止まれず
〇27日夜安値12.66割れからは12.60前後、12.50前後を段階的に試す可能性
〇12.80超えからはいったん戻りを試し12.90前後への上昇を想定
〇ただし、短期的な買い戻しで急反発しても材料が伴わなければ戻りは短命か

【概況】

トルコリラ円は26日午後の下落で23日夕刻安値を割り込み史上最安値を更新、27日朝には12.92円まで最安値を更新していたが、27日午後からはさらに下げ足が早まり、22時過ぎには12.66円までフラッシュクラッシュ的な急落で最安値をさらに更新した。
トルコのアルバイラク財務相が「新型コロナによる観光業への影響がリラ安要因」、「多くの多国籍企業がアジアから我々の地域へと生産拠点を移動し始めた」「資本規制などは全く考えていない」等と海外投資家とのテレビ会議で述べたことで、現状のリラ暴落に対する危機感がないとしてリラ売りがさらに加速した印象だ。
22時台の一時的な急落からいったん戻したものの12.80円には届かずにその後はジリ安の推移となり28日午前も12.70円台中盤で徐々に安値を切り下げてきている。

【対ドルでの最安値更新続く】

対ドルでのトルコリラは10月26日夜に8.09リラへ大幅続落して史上最安値を更新した後は下げ渋っていたが、27日午後から急落商状となり8.10リラを超え、27日深夜には8.192リラまで安値を更新した。28日午前も8.195リラへ続落しており下げ止まれなくなっている印象だ。
対ドルでのトルコリラは8月30日の週から8週連続の週足陰線で下落、今週も大幅続落気配で既に前週比2.9%を超える下落となっている。月間足では8月が前月比5.4%安、9月が5.0%安、10月は現時点で6.2%安となっている。7月末からの下落レベルは2020年5月の通貨危機的下落時を上回る勢いだ。
対ユーロでのトルコリラ安もかなり強烈になっている。5月24日の週から急落が始まったが、3週続落に1週挟んで8週連続の下落、1週挟んで4週の続落、1週挟んで先週まで4週続落となり、今週も既に2%を超える大幅続落の気配で進んでいる。

トルコリラ安の背景は外貨準備高減少、経常収支悪化、コロナ不況による観光収入激減、消費者物価上昇率が政策金利を上回る実質マイナス金利状態とこれらに対する政権及び中銀の対応力の欠如。地政学的リスクでは東地中海問題でのギリシャ・EUとの対立、ロシア製ミサイルシステム導入によるNATO内での批判や制裁懸念、ナゴルノ紛争への介在と紛争長期化など目白押しとなっている。
トルコ中銀が10月22日の会合で利上げを見送ったことが22日以降のリラ安をさらに加速させているが、地政学的リスク解消への姿勢も見られず、フランスで発生したイスラム過激派による教師殺害事件に関してマクロン仏大統領が風刺画文化はやめないとしたことでイスラム圏との対立も深刻化する中、エルドアン大統領が仏製品の不買運動を提唱するなど、フランスとトルコの関係がその他の地政学的リスクを巡る対立とも重なって深刻化する気配であり、仏、欧州勢のリラ放れを助長する事態となっている印象だ。当面は安値を出し切って自律的に底打ちが見えるところまで行きつく必要があるが、通貨危機的な状況に陥る可能性もあると警戒すべき状況だろう。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月15日夜安値を直近のサイクルボトムとして上昇したが、21日午後高値13.44円と22日の中銀政策金利発表前の高値13.42円をダブルトップとして下落期に入った。
22日に急落した後も連日の安値更新であり、当面は落ち着くところを見定める必要がある。27日夜の急落後にいったん戻してからジリ安に入っているので、27日夜安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとなる可能性もある。強気転換は27日夜反発時の高値12.86円を超えるところからとし、超えないうちは一段安警戒が続くとみる。

60分足の一目均衡表では22日夜の急落で先行スパンから転落し、その後も転落状態が続いている。反騰入りには先行スパンを上抜き返すほどの上昇が必要であり、先行スパンからの転落が続くうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後の悪化から下げ再開へ進むと考える。

60分足の相対力指数は27日の下落で10ポイント台まで低下したがその後も30ポイント以下の水準が続いている。40ポイントを超える反騰に入れないうちは一段安警戒が続くとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、27日夜安値12.66円を下値支持線、12.80円を上値抵抗線とする。
(2)12.80円以下での推移中は一段安警戒とし、12.66円割れからは12.60円前後、12.50円前後を段階的に試す可能性があるとみる。12.80円以下での推移が続くなら29日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)12.80円超えからはいったん戻りを試しに入るとみて12.90円前後への上昇を想定するが、短期的な買い戻しで急反発しても材料が伴わなければ戻りは短命に終わって次の下落期に向かうとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

10月28日
 16:00 10月経済信頼感 (9月 88.5、予想 85.1)
 16:30 トルコ中銀インフレレポート
 20:00 トルコ中銀MPC(金融政策決定会合)議事要旨
10月30日
 16:00 9月貿易収支 (8月 -62.8億ドル、予想 -43.0億ドル)
 16:00 7-9月期観光収入 (4-6月 41.0億ドル、予想 34.0億ドル)
 17:00 9月観光客数 前年比 (8月 -71.23%、予想 -48.8%)

11月2日
 16:00 10月イスタンブール製造業景況指数 (9月 52.8)
11月3日
 16:00 10月消費者物価上昇率 前年比 (9月 11.75%)
 16:00 10月消費者物価上昇率 前月比 (9月 0.97%)
 16:00 10月生産者物価上昇率 前年比 (9月 14.33%)
 16:00 10月生産者物価上昇率 前月比 (9月 2.65%)

注:ポイント要約は編集部

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