ドル円見通し 104円を割り込み戻しているが、7月31日安値を割り込んだ衝撃も残る(週報9月第3週)

ドル円は9月21日夕刻安値で103.998円を付けて7月31日安値104.18円を割り込んだ。

ドル円見通し 104円を割り込み戻しているが、7月31日安値を割り込んだ衝撃も残る(週報9月第3週)

104円を割り込んでから戻しているが、7月31日安値を割り込んだ衝撃も残る

〇ドル円、21日夕刻安値103.998から、22日深夜には105.07まで上昇
〇9/17未明のFOMCメンバーによる金利見通し「ゼロ金利解除は早くても2024年以降」
〇NYダウ、高値警戒感から弱気材料に反応しやすく9/17、18、21と3日間続落
〇ユーロドル9/21に欧米株安から急落し、22日深夜に1.16915まで安値切り下げ
〇104.40を上回るうちは上昇余地あり、105.25を超えれば105.50前後への上昇を想定
〇104.40割れからは21日夕安値103.998試しを想定

【概況】

ドル円は9月21日夕刻安値で103.998円を付けて7月31日安値104.18円を割り込んだ。103円台は2月後半からのコロナショック暴落で3月9日安値101.17円を付けた直後の3月12日以来6か月ぶりの安値水準となった。
8月28日の安倍首相辞任報道をきっかけとして当日昼高値106.94円から当日夜安値105.17円まで急落した後は105円割れをひとまず回避し、その後はユーロドルの上昇を中心としたリスク選好感の回復によるドル安の再燃で上昇して9月3日夜には106.54円まで戻した。そこまでは米国株高にも支えられていた印象だが、9月3日にNYダウが一時千ドルを超える下落となり前日比807.77ドル安と崩れ始めたところから円高ドル安が徐々に始まった。

NYダウは9月10日に2万7447.08ドルまで下げた後は下げ一服でやや持ち直していたが、9月3日から9月10日までの下落規模は2月後半から3月にかけてのコロナショック暴落の開始時に近い動きとなっており、ドル円はリスク回避感を優先させ始めて9月14日には106円台序盤を中心とした持ち合いから転落して105円台半ばへ下落、15日夜に105円台序盤、16日夜に104円台後半、17日夜に104円台半ば、18日夕刻へ104円台序盤と5夜連続の下落となってきた。
9月21日はダウ先物が大幅下落となる中で夕刻へ一段安となりついに104円を割り込むところとなったが、NYダウが一時900ドルを超える下落だったところから509.72ドル安まで下げ幅を削ったことと、ドルストレートでのドル高がドル円にも波及したことで21日夜には104.87円まで反発、22日は夕刻に104.40円までいったん下げたもののその後はNYダウが小幅ながら上昇したこととドル高継続により22日深夜には105.07円まで上昇、23日早朝も105円を挟んだ水準でしっかりしている。

【FOMCはドル安加速材料にならず、それよりも欧州感染第二波によるリスク回避と株安】

9月17日未明の米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利を現状維持としたが、8月27日のパウエル議長によるジャクソンホール講演で示されていた「物価上昇率が2%を超えても長期間のゼロ金利を維持する」という方針を正式に決定した。またFOMCメンバーによる金利見通しでは2023年末時点もゼロ金利となり、ゼロ金利解除は早くても2024年以降とされた。しかし資産購入プログラムにおける量的緩和規模は現状維持とされたこと、従来から消極姿勢であった長期金利を抑え込もうとするYCC(イールドカーブコントロール)への言及はなく、ドル安を一段と推進させる内容を欠いた。このためFOMC直後はドルの買い戻しによるドル高が発生した。ユーロドルは9月17日昼まで続落した後はいったん反騰したもののFOMC前の高値には届かずに9月21日には欧米株安から急落して9月17日昼安値を割り込んだ。22日深夜には1.16915ドルまで安値を切り下げている。

NYダウは9月17日に前日比130.40ドル安、翌9月18日も244.56ドル安と続落し、9月21日は509.72ドル安と3日間の続落となった。株式市場はFOMCがゼロ金利を長期化するといっただけではコロナショック前の史上最高値を更新してゆく根拠にならないとして高値警戒感から弱気材料に反応しやすくなり、スペインやフランス、英国等での第二波的な感染急拡大、米国の感染も収束へなかなか向かえず再拡大の兆候があること、米中対立の継続、11月の米大統領選挙へのリスク、さらに米国金融大手等による巨額マネロン事件騒動等がリスク回避感を強めている。9月22日は下げ一服ではあるが、先行き不安を抱えた状況と思われる。

株高局面では為替市場もリスク選好となり、ユーロやポンド、豪ドル等が積極的に買われてきた。ドルストレートでのドル安とクロス円での円安が交錯する中でドル円の動きは鈍く、7月31日安値から8月13日高値へ反騰して以降は105円台序盤を下値支持線、107円前後を抵抗線としたボックス型持ち合いで方向感に欠け、9月序盤はユーロ等の下落によるドル高で下支えられていたもののクロス円での円高圧力が徐々に強まって106円台序盤のごく狭いレンジでの膠着状態となり、株安が進み始める中で大きく崩れ始めたということだろう。9月21日夜以降は株安一服とドル高継続によりドル円としても持ち直しの動きに入っているが、直前の大幅下落に対する突っ込み警戒感からリバウンドしているという程度かもしれない。

【2か月から3か月の底打ちサイクル】

ドル円は月末月初に安値を付けやすい。米雇用統計等の重要指標の集中する月初まで下げてから戻しに入るか、月末までに安値を付けて雇用統計後へ戻しを入れるのか、いずれかのパターンが多く、この1か月前後の周期による底打ちサイクルが2セットないしは3セットで概ね2か月から3か月周期の底打ちサイクルを形成している。直近では3月9日のコロナショック暴落底から2か月目の5月6日安値、さらに3か月目の7月31日安値で底を付けてきたが、9月21日安値で7月31日安値を割り込んだため、現状は8月13日の戻り高値を起点とした下落期にあり、9月21日夕安値から戻しているものの、まだ当面の底が見えない状況にある。

9月10日から18日までは7日連続の日足陰線だったが、9月21日は長い下ヒゲを付けた陽線で下げ止まり、22日は続伸の陽線連続となった。104円割れという水準に達しての反発のため、いったん数日間の戻りを入れても不思議ないところにある。7月31日からの反騰時も直前に6日連続の日足陰線で下げてから急反発しているので、105円台を維持してさらに続伸に入り、株式市場が持ち直せば105円台中後半へ戻してもよいところだが、9月21日の下ヒゲを潰す下落となれば下げ足りないとしてさらに月末への安値更新、あるいは10月第1週へ続落する可能性もあるところと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月21日夕安値から1円近い反騰となって戻り高値切り下がりが続いてきた中で9月19日早朝高値を上抜いたため、21日夕安値で直近のサイクルボトムを付けたと思われる。トップ形成期は23日から24日にかけての間と想定するが、9月22日夜反落時の安値104.40円を割り込む場合は弱気サイクル入りとして24日午後から28日夕にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では9月21日夕安値からの反騰で遅行スパンが好転、先行スパンからも上抜けた。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、26本基準線割れを弱気転換注意とし、遅行スパンの悪化と先行スパンからの転落が揃うところからは下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は9月18日夕安値から21日夕安値への一段安に際して指数のボトムがやや切り上がる強気逆行を見せて反騰した。21日夜高値を22日深夜高値で上抜いたがその際には指数のピークも切り上がって弱気逆行はまだ見られないので上昇余地ありとみるが、50ポイント割れから続落に入る場合は下げ再開を疑う。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月22日夜反落時の安値104.40円を下値支持線、105.25円を上値抵抗線とする。
(2)104.40円を上回るうちは上昇余地ありとし、105.25円を超える場合は105.50円前後への上昇を想定する、105.50円以上は反落注意とするが、104.75円以上での推移なら24日午前も高値試しへ進みやすいとみる。
(3)104.40円割れからは21日夕安値以降の底上げパターンが崩れるので下げ再開とみて21日夕安値103.998円試しを想定する。104円割れはもう一度買い戻しも入りやすいとみるが、株安再開によりリスク回避感が再び強まる中で円高となる場合は底割れから103円台前半へ向かう流れと考える。

【当面の主な予定】

9/23(水)
11:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
13:30 (日) 7月 全産業活動指数 前月比 (6月 6.1%、予想 1.3%)
14:30 (日) 黒田日銀総裁、大阪経済4団体共催懇談会(オンライン)
15:00 (独) 10月 GFK消費者信頼感 (9月 -1.8、予想 -1.0)
16:15 (仏) 9月 製造業PMI速報値 (8月 49.8、予想 50.6)
16:15 (仏) 9月 サービス業PMI速報値 (8月 51.5、予想 51.7)
16:30 (独) 9月 製造業PMI速報値 (8月 52.2、予想 52.5)
16:30 (独) 9月 サービス業PMI速報値 (8月 52.5、予想 53.0)
17:00 (欧) 9月 製造業PMI速報値 (8月 51.7、予想 51.9)
17:00 (欧) 9月 サービス業PMI速報値 (8月 50.5、予想 50.5)

17:30 (英) 9月 製造業PMI速報値 (8月 55.2、予想 54.0)
17:30 (英) 9月 サービス業PMI速報値 (8月 58.8、予想 56.0)
22:00 (米) 7月 住宅価格指数 前月比 (6月 0.9%、予想 0.5%)
22:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
22:45 (米) 9月 製造業PMI速報値 (8月 53.1、予想 53.1)
22:45 (米) 9月 サービス業PMI速報値 (8月 55.0、予想 54.7)
23:00 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、下院特別小委員会証言
24:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、米国経済と金融政策について講演
25:00 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、米国経済について講演
27:00 (米) クォ―ルズFRB副議長、経済見通しについて講演

9/24(木)
休場、南ア
日銀、新型コロナ感染症対応の金融支援特別オペ
EU臨時首脳会議(9/25まで → 10月1-2日に延期)
07:45 (NZ) 8月 貿易収支 (7月 2.82億NZドル、予想 -3.50億NZドル)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
16:30 (ス) スイス国立銀行 政策金利 3か月物銀行間取引金利誘導目標 (現行 -0.75%、予想 -0.75%)
17:00 (独) 9月 IFO企業景況指数 (8月 92.6、予想 93.8)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 8.25%、予想 8.25%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 86.0万件、予想 85.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1262.8万人)

23:00 (米) 8月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (7月 90.1万件、予想 89.2万件)
23:00 (米) 8月 新築住宅販売件数 前月比 (7月 13.9%、予想 -1.0%)
23:00 (米) ムニューシン米財務長官、パウエルFRB議長、上院銀行委員会証言
23:00 (米) ベイリー英中銀総裁、商工会議所のイベントで講演
24:00 (米) 米カンザスシティ連銀9月製造業活動指数
25:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、金融政策について講演
26:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、米国経済と金融政策について講演
27:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、イベントで挨拶
27:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 4.50%、予想 4.25%)

注:ポイント要約は編集部

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