トルコリラ円見通し トルコ中銀の政策金利現状維持で一時リラ売りが進むも想定内でやや戻す(20/8/24)

週明けの8月24日朝は14.28円まで下落して開始したが早々に14.30円台へ戻している。

トルコリラ円見通し トルコ中銀の政策金利現状維持で一時リラ売りが進むも想定内でやや戻す(20/8/24)

トルコ中銀の政策金利現状維持で一時リラ売りが進むも想定内でやや戻す

〇トルコ円、週明け14.28へ下落も早々に14.30台へ回復
〇トルコ、黒海で推定3200億立方メートルの天然ガス田発見、同海域では過去最大級
〇成功すれば将来的に重要な収入源になるものの、生産開始に7〜10年かかるとの見方も
〇黒海での発見により東地中海の探査活動に強硬姿勢、地政学的緊張感高まる可能性
〇14.21を割り込み後14.40超えでいったん戻し、その後安値更新で14円以下を目指す下落を想定
〇14.50超えから14.65-70のゾーンを試すとみる

【概況】

トルコリラ円はドル円の下落と対ドル等でのトルコリラ安により8月19日午前安値14.21円まで下落して8月10日午前安値14.07円に迫ったが、底割れを回避して8月19日夜にはドル円の上昇と対ドル等でのトルコリラ安一服により14.61円まで反騰した。
8月20日はトルコ中銀の金融政策決定会合を控えて再び売られ、トルコ中銀が政策金利を現状維持として利上げを見送ったことから14.32円まで下落したが目先の売り材料一服で下げ止まり、21日はトルコの黒海ガス田発見報道から14.65円まで上昇して19日夜高値を超えた。しかし黒海ガス田については供給開始にまでは数年を要する話のために買い一巡後は急落に転じて先週末は14.40円で取引を終えた。フィッチ・レーティングスがトルコの格付けをネガティブへ引き下げたことも影響したようだ。
週明けの8月24日朝は14.28円まで下落して開始したが早々に14.30円台へ戻している。

【黒海ガス田開発問題】

トルコのエルドアン大統領は8月20日に「明日金曜日(8月21日)に吉報を明らかにする」と述べたことでトルコ中銀が利上げしなかったことによる下落に歯止めがかかった。21日にエルドアン大統領は黒海で推定3200億立方メートル規模の天然ガス田を発見したとし、同海域では過去最大級の発見であり、2023年までの生産開始を望むと述べた。
ガス田や油田の発見については可採埋蔵量や年間の生産可能量がどの程度になるのか、供給開始までの時間と供給継続コストの見込み等が重要だが、そうした詳細がはっきりする前の段階と思われる。
3200億立方メートルというガス田規模は、天然ガス埋蔵量世界1位であるロシアのが47.8兆立方メートル、2位のイランが33.7兆立方メートルと比較すれば小さく、アルゼンチンの埋蔵量とほぼ同等で世界37位にあたるとされる。

開発投資は数十億ドル規模、3年から5年でガス抽出を開始するのではないかとの見方もあるが、生産開始までに7年から10年はかかるのではないかとの見方も出ており、成功すれば将来的にはトルコにとって重要な収入源となるもののまだこのことをもってトルコリラが大上昇期に入るというインパクトはないだろうと思われる。
エルドアン大統領は8月19日にも今回のガス田発見をにおわせるような発言をエネルギー業界にしていたとされ、19日にトルコのエネルギー株上昇や19日深夜以降のトルコリラ反発にも影響を与えていたのではないかとの報道もある。
トルコは現在、黒海とは別となるギリシャ等が領有権を主張する東地中海でトルコ海軍を伴った独自のガス田探査を進めており、ギリシャが軍艦を派遣して反発を強め、フランスも空軍機を近隣に派遣するなど緊張が高まっている。エルドアン大統領は黒海ガス田発見で勢い付き、東地中海での探査活動も強硬に続ける姿勢を示しているので、東地中海の地政学的緊張感も高まりかねないところだ。

【対ドル、対ユーロでのトルコリラ急落は一服】

トルコリラは対ドルで8月に入ってから急落した。6月中旬からは6.85リラを中心としてほぼ横ばいの動きにとどまっていたのは取引規制や市場介入によりリラ安を抑えていたためだが、消費者物価上昇率が政策金利を上回る実質マイナス金利状態が長引き始めたことと通貨防衛のための外貨準備高の減少への懸念から欧米勢のリラ売りが強まり、トルコ国内でもリラから相対的な安全通貨であるドルやユーロへ換金する動きが強まったことで急落商状に陥った。8月18日には7.40リラまで史上最安値を更新した後は19日に7.19リラへ反騰、20日のトルコ中銀により利上げ見送りで反落した後の21日に7.18リラまで再び反騰する場面があったが、週末は7.33リラで終了しており、7.20リラ前後を抵抗線、7.35リラ台を下値支持帯として史上最安値近辺で乱高下している状況だ。

週間ベースでは7月26日の週に1.78%安、8月2日の週に4.60%安、8月9日の週に1.03%安と下落した後、8月16日の週は0.41%高と上昇して終了した。
対ユーロでは8月18日に8.82リラの史上最安値まで大幅下落してきたが、19日夜に8.56リラへ反騰、21日も一時8.46リラまで上昇したが8.65リラまで反落して先週を終えている。週間ベースでは6月21日の週から8週連続の下落となり史上最安値更新に至ったが、先週は0.79%高と反発した。

トルコ中銀は8月20日の金融政策決定会合で政策金利の週間レポレートを現行の8.25%に据え置いた。5月22日に8.25%へ利下げしてからは3会合連続の据え置きとなった。トルコリラ急落により利上げの可能性も指摘されていたが直前の市場予想は据え置きだったために市場の混乱は見られなかった。

トルコ中銀はプライマリーディーラー等によるリラ供給量を制限し、国内銀行に対するオーバーナイトの貸し出し金利を実質的に引き上げる裏口的な政策でひとまずリラ安の進行に歯止めをかけた状況にある。政策金利の週間レポレートは8.25%であり、翌日物の貸し出しレートは1.50%上乗せの9.75%だが、さらに1.50%を上乗せして11.25%となっている貸し出しレート(Late Liquidity Window )を適用することでリラ供給の蛇口を絞った格好だ。
ひとまずリラ安が落ち着く可能性もあるが、外貨準備高の減少、コロナ不況による観光収入の大幅低下等は続いており、再び先行き不透明感を背景にリラ売りが強まる可能性も懸念される。
格付け会社フィッチ・レーティングスは8月21日にトルコの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。外貨準備の減少と、金融政策に対する信頼性の弱さが外国からの資金調達リスクを悪化させているためとした。トルコの信用格付けについては投資適格級から3段階下の「BBー」で据え置いた。

【4か月サイクルによる下落圧力はまだ解消せず?】

【4か月サイクルによる下落圧力はまだ解消せず?】

トルコリラ円は2018年8月の通貨危機以降、概ね4か月周期のサイクルで主要な底値を付けてきた。2018年8月13日底以降では、2019年1月3日、同年5月9日、同年8月26日、2020年1月6日と底打ちし、今年1月底から4か月目の5月7日で前回の底を付けている。すでに6月3日高値でこのサイクルの反騰期は一巡して下落期に入っており、5月7日底を基準とすれば今回の底打ち期は9月序盤前後=やや短くて8月後半からやや長引いて9月中旬にかけての間と想定される。
8月19日午前安値から21日夜高値へ戻し、その後は再び失速しており、8月19日安値割れへの余裕はさほどない。8月19日安値では底打ちには日柄が浅い印象があり、対ドル、対ユーロ、対円での史上最安値更新の動きが収まったとまでは言えない状況のため、8月19日安値を割り込んで8月末から9月序盤にかけての間へもう一段安しかねないところと警戒したい。

【短期サイクルと当面のポイント】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月19日午前安値をサイクルボトムとして反騰入りしたが、20日夜へ反落してから21日夜には19日夜高値を上抜き、その後に20日夜安値を割り込む展開となっているので、8月21日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。当面のボトム形成期は24日朝から26日午前にかけての間と想定されるので、14.50円以下での推移中はまだ一段安余地ありとするが、14.50円超えからは強気サイクル入りとして26日夜から28日夜にかけてもう一段高へ戻す可能性が出てくると考える。またいったん強気サイクル入りしてもその後の下落で8月21日以降の安値を更新するところからは新たな弱気サイクル入りとなるため、週末から来週にかけて安値試しへ向かいやすくなるとみる。

以上を踏まえて今週のポイントを示す。
(1)当初、8月19日午前安値14.21円を下値支持線、14.50円を上値抵抗線とする。
(2)14.50円以下での推移中はもう一段安余地ありとし、8月19日午前安値割れからは14.10円前後への下落を想定する。14.10円前後は買い戻しも入りやすいところとみるが、対ドル等での下落が厳しくなる場合は14.00円台前半へ下値目途を引き下げる。また8月19日午前安値を割り込んだ後に14.40円を超えるところからはいったん戻しに入るとみるが、その後に安値を更新するところからは下げ再開として14円以下を目指す下落を想定する。
(3)8月19日安値割れを回避して14.50円を超えるところからは21日夜高値14.65円から14.70円にかけてのゾーンを試すとみる。ただし14.60円以上へ戻した後に14.45円を割り込むところからは下げ再開注意とし、21日夜以降の安値を割り込むところからは下げ再開とみて14.10円、次いで14.00円前後を目指す下落を想定する。

【当面の主な経済指標等の予定】

8月24日
 16:00 7月観光客数 前年比 (6月 -96%、予想 -78%)
 16:00 7月自動車生産台数 前年比 (6月 -5.4%)
8月25日
 16:00 8月製造業景況感 (7月 100.7、予想 98.0)  
 16:00 8月設備稼働率 (7月 70.7%、予想 70.5%)
8月27日
 20:00 トルコ中銀金融政策会合議事要旨公開
 20:30 週次外貨準備 8月21日時点 (8月14日時点 453.8億ドル)
8月28日
 16:00 8月経済信頼感指数 (7月 82.2、予想 79.0)

8月31日
 16:00 4−6月GDP 前年比 (1−3月 4.5%、予想 -12.9%)
 16:00 4−6月GDP 前期比 (1−3月 0.6%、予想 -8.2%)
 16:00 7月貿易収支 (6月 -28.5億ドル)
9月1日
 16:00 8月イスタンブール製造業PMI (7月 56.9)
9月3日
 16:00 8月消費者物価 前年比 (7月 11.76%)
 16:00 8月消費者物価 前月比 (7月 0.58%)
 16:00 8月生産者物価 前年比 (7月 8.33%)
 16:00 8月生産者物価 前月比 (7月 1.02%)

注:ポイント要約は編集部

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