ユーロ週報「2017年安値を試しに行く可能性大」(3月第4週)

欧州でのパンデミックによる欧州売りという状況も重なり2月安値を下抜けると急速にユーロ売りが広がりました。

ユーロ週報「2017年安値を試しに行く可能性大」(3月第4週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロは週間レンジを600pipsに拡大しドル円同様に大きな動きを見せました。前週までもドル買いの動きによるユーロ売りは出ていましたが、欧州でのパンデミックによる欧州売りという状況も重なり2月安値を下抜けると急速にユーロ売りが広がりました。

現在の金融市場では人の移動制限が全ての業種に影響し、今週以降発表される各種経済指標は大幅に悪化するであろうという見方が更に株安を呼び、リスク資産の代表である株価の下げがキャッシュへの逃避、そして資金市場ではドル資金のひっ迫がドル買いに繋がるという構図でした。3月第1週まではリスクオフの動きで少なくともドル建ての金には買いが入っていましたが、それ以降は利益の出る金も売ってキャッシュ化という展開です。

資金市場では各国中銀が協調して流動性の確保に奔走し、ECBも既存のQEをCP(コマーシャルペーパー)にまで拡大した資産購入を7500億ユーロ実施することを表明しました。このQEはPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)と名付けられ年末まで実施されますが、上限は見直しも含めコミットメントに限界は無いとしています。今回の感染者拡大が欧州で下火にならない限り、欧州の景気減速はもっとも大きくなると考えられ、明日の主要国PMIも軒並み大幅低下(前月から製造業で8、サービス業で10程度の低下)が予想されています。

世界的な資金需要によるドル買いの動きに加えて欧州景気の大幅悪化懸念(欧州委員会はリーマンショック後の2009年と同程度の悪化を想定)もあり、当面の為替市場はユーロの戻り売りが出やすい状況でしょう。現時点ではどの国の通貨も売りという流れの中で、感染者が急拡大したイタリアを抱える欧州がより弱いと判断されます。これは資金市場からの派生によるドル買いがある程度収まったとしても継続しやすいと考えています。

次にテクニカルにはどうなのかを見てみましょう。まず週足です。

今週の週間見通しと予想レンジ

ユーロドル週足

既に昨年安値を下回っていますので、現状ここよりも下のサポートとしては、2017年安値の1.0340が大きなターゲットとなっています。現行水準からはまだ距離はあるものの400pips弱ですから、今週試しに行っても不思議ではないどころか、その可能性のほうが高いかも知れないという市場環境にあります。

今週の週間見通しと予想レンジ 2枚目の画像

ユーロドル日足

日足チャートで見ても太いピンクの水平線が1.0340と、以下のように決して遠くは無い距離感です。
また、この1.0340を下抜けてしまうと1999年にユーロがスタートしてからの最安値0.8231まで目立ったサポートは無くなります。3月末に向けてユーロにとっての正念場を迎えることとなりそうです。今週は下方向に余裕を見て1.0300レベルをサポートに1.0850レベルをレジスタンスとするレンジを見ておきます。

今週のコラム

今週はポンドの月足を見てみます。

今週のコラム

ポンドドルは既に2017年安値を下回り、底なし状況のチャートですが、ポンドドルの変動相場制移行後の最安値は1985年2月につけた1.0520です。この1985年2月はプラザ合意のあった年で、その時のドル円が262.80だったことを考えると、いかにポンドが売られ続けられた歴史であったのかがわかります。

さすがに1.0520をつけるのはまだまだ先だと思いますが、EUからの離脱後にはつける可能性が高いと見ています。現状はピンクの下降ウェッジで示した中での緩やかな下降トレンドを続けているという見方でよいでしょう。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

3月23日(月)
24:00 ユーロ圏3月消費者信頼感速報値


3月24日(火)
17:15 フランス3月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ3月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ユーロ圏3月製造業・サービス業PMI速報値
18:30 英国3月製造業・サービス業PMI速報値
**:** G7外相会議(テレビ)

3月25日(水)
18:30 英国2月PPI


3月26日(木)
16:00 ドイツ4月GFK消費者信頼感
16:45 フランス3月企業景況感
18:30 英国2月小売売上高
21:00 英中銀MPC


3月27日(金)
16:45 フランス3月消費者信頼感


3月29日(日)
**:** 欧州市場が夏時間に移行

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時からNY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

3月16日(月)
ユーロドルは、東京市場ではドル円とドルとしての歩調を揃え、早朝のFRB緊急利下げによるドル売りからユーロは上昇しました。しかし欧州市場に入ってからはドル円とともにユーロ円も下げたことからNY前場には1.11台割れとなり、その後はドル円、ユーロ円の買い戻しとともにユーロドルも買い戻しが入っての引けとなりました。


3月17日(火)
ユーロドルは東京市場では横ばいとなっていたものの、欧州市場序盤以降はドル円同様にドル買い(ユーロ売り)が続きました。為替市場でのドル買いは、FRBによるゼロ金利政策にもかかわらず金利市場で金利上昇、仕方なく為替のドル買いで調達した動きでした。こうなると、株式市場の上下から離れてドル需要が為替市場ではドル買いが続くことになることを感じさせた一日となりました。

3月18日(水)
ユーロドルは東京市場ではドル売り・ユーロ買いが先行しましたが、欧州市場に入ってからは急速に値を下げ、NY市場では1.0802レベルまで水準を下げました。ドルインデックスも102.04と2017年3月の水準へと上がってきました。現時点では世界的混乱の中にあり米国もドルの水準がどうのということも言う状況ではないため、あまり材料視されませんでした。フランス中銀総裁は欧州の混乱に対して、さらなる追加緩和策導入を示唆する発言をしました。


3月19日(木)
ユーロドルもドル円同様にドル高地合いではあるものの東京市場ではユーロの上値が重たい程度に留まっていました。欧州市場に入り改めてユーロ売りの流れが強まり、ユーロドルはNY市場後場には1.06台半ばへと押して安値引けとなりました。

3月20日(金)
ユーロドルは東京市場では前日安値をわずかに更新した程度で急反転上昇、欧州市場序盤には1.08台前半の高値をつけました。その後はドル買いの動きが再開しNY後場には日中安値を更新し、やや戻しての引けとなりました。

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