ユーロ週報「ドル売りが強くユーロは上昇もECB理事会には注意」(3月第2週)

今週も基本的に株式市場を中心としてリスクオフの流れがどの程度続くのかを見極めながらの展開となります

ユーロ週報「ドル売りが強くユーロは上昇もECB理事会には注意」(3月第2週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロは、週を通して見るとドル円同様にドル売りが継続しましたが、株式市場を中心としてリスクオフ相場となったことからユーロ円でも下げが続いたことで、ユーロドル自体の上昇はドル円に比べて勢いが無い状態が続きました。

今週も基本的に株式市場を中心としてリスクオフの流れがどの程度続くのかを見極めながらの展開となりますが、大きな材料としてはECB理事会があります。先週の緊急G7とともに米国は来週のFOMCを前に0.5%の利下げをしましたが、その後も長期金利は低下し続け政策金利の先物取引では、更に0.75%の利下げを織り込む異常事態となっています。

米国の利下げが先週の緊急利下げでいったん終わったのであれば、今週のECB理事会では現状維持で経過するという見方で良かったのでしょうが、米国の更なる利下げを考えることなれば、決して景気がよくない欧州も何らかの追加緩和をすると考える参加者が増えていてもおかしくはありません。

先週の緊急G7時点でのラガルドECB総裁は必要に応じ適切に対応するとの発言で、その後は米国の利下げだけかと思われていたのですが、その後米国の追加利下げ思惑の高まりとともにECBも追加緩和でマイナス金利の深堀り(マイナス0.5%から0.6%へ)や長期オペ(TLTRO)の拡充といった思惑が出ています。果たしてどのような動きになるのか、現状維持であれば、来週のFOMCに向け金利差縮小思惑による一段のユーロ買いに動きそうですし、何らかの追加緩和策を導入する場合には、一時的にユーロ売りの動きとなりそうです。

G7の中でもマイナス金利となっているECBと日銀は、悩ましい選択を迫られるでしょうが、仮にECBが緩和に動くとなると、FOMC翌日の19日に会合を開く日銀にも緩和圧力が加わることとなりそうです。ましてやFRBが追加利下げに動く場合にはなおさらです。そうした意味では今週のECB理事会の動きは来週の日米の会合に向けて注目度は高いと言えるでしょう。

それ以外はあまり目立った材料が無い週となりますのでテクニカルな観点からチャートを見ていきます。まず、週足チャートをご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロ上昇により、これまで2018年半ばから続いてきたほぼ平行な下降チャンネルを上抜けてきました。そして2018年高値と2020年安値のフィボナッチ・リトレースメントを考えると、現状は38.2%戻しにあたる1.1457を視野に入れてのユーロ高トレンドとなっていると考えられます。同水準は昨年の高値圏にも重なりますので、1.14台半ばを見た後にはいったん踊り場となりやすそうです。

上記の大きな流れを念頭に日足チャートもご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ 2枚目の画像

ドル円ほどの値幅では無いとはいっても、仮に1.14台半ばまで上昇すると年初来安値の1.0778レベルから700pips弱の上げ幅となり、一波の動きとしてはかなり大きい動きです。ドル円がさらに円高に走るかどうかの影響もありますが、いったん1.14台半ばを見た後にはやや反落(38.2%押し=260pips程度が入るとすると1.1200水準)が入る動きを考えています。

今週は上のターゲットはありそうですが、下はそこまでの調整が一気に進むとも考えにくいため。今週は1.1250レベルをサポートに1.1450レベルをレジスタンスとするレンジを見ておきます。

*筆者注:執筆直後のドル円急落でユーロドルも瞬間高値1.1495を見ました。最近は荒っぽい値動きをしているために、上記レンジを既に抜けた格好となっていますが、1.14台半ばよりも上のターゲットはやや遠いことから、1.1250〜1.1500のレンジと考えていただくとよさそうです。

今週のコラム

ユーロドルの上昇でドルインデックスは一時の100の大台間近から随分と調整が進んできました。ドルの水準を考える上でもドルインデックスは重要な指標となりますので、現在の水準を見ておきましょう。

今週のコラム

ドルインデックスに占めるユーロの比率が大きいこともあって、ユーロドルの週足チャートを上下さかさまにしたものと似通っています。本日のドル一段安で2018年安値と2020年高値の38.2%押しは達成していますので、半値押しの93.98を次のターゲットとしやすいことを頭の片隅に置いておくとよさそうです。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。


3月9日(月)
**:** NY市場夏時間移行
16:00 ドイツ1月貿易収支、鉱工業生産


3月10日(火)
10:30 中国2月CPI・PPI
16:45 フランス1月鉱工業生産
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP確報値

3月11日(水)
18:30 英国1月貿易収支、鉱工業生産


3月12日(木)
19:00 ユーロ圏1月鉱工業生産
21:45 ECB理事会
22:30 ラガルドECB総裁会見


3月13日(金)
16:00 ドイツ2月CPI
16:45 フランス2月CPI

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

3月2日(月)
ユーロドルは、早朝時点で前週高値を上回り底堅い地合いとなっていたところに、東京市場ではドル円同様に株価に沿って動くユーロ円の影響が強く一段高の動きとなりました。海外市場に移ってからは米金利が一段と低下するとともにユーロドルの買いが目立ち、NY市場ではNYダウの大幅上昇によるユーロ円一段高の動きから1.1185レベルの高値をつけた後にやや押しての引けとなりました。


3月3日(火)
ユーロドルは、ドルの調整売りが出ている中でユーロ円でのユーロ売りもあり、方向感が出にくくやや上値が重たい流れが続きました。NY市場に入り米国利下げ後は金利差縮小に反応してのドル売りで動き、ユーロドルは1.12台乗せを見ましたが、引けにかけては再びユーロ円の売りが上値を抑え、やや押しての引けとなりました。

3月4日(水)
ユーロドルは、値幅は伴わないもののドル円同様にドル高基調での動きが続きましたが、欧州市場に入り米長期金利の低下から一時ユーロ買いの動きも見られました。株式市場では金利低下を素直に買い材料としていますが、為替市場では金利差縮小によるドル売り要因となっていることから、ドル買いの動きは限定的と考える参加者が多い様子でした。


3月5日(木)
ユーロドルは東京市場では全く動きが見られませんでしたが、海外市場に移りドル安が続く中でユーロ買いも進み、1.12台半ばへと近づいての引けとなりました。ただ、ドル円での下げがユーロ円でもリスクオフの動きとなっていることもあり、ドル売りの動きとしてはドル円よりは勢いが無い状態が続きました。

3月6日(金)
ユーロドルは東京市場ではまったく動かないことが多いのですがこの日も同様でした。欧州市場に入って10年債利回りが0.7%を割り込むなど米金利低下によるドル売り・ユーロ買いで1.13台に乗せる動きとなりました。その後もユーロは底堅い動きを続け、NY前場には1.1355レベルまで水準を切り上げ、引けにかけては1.13台前半を中心としたもみあいで一週間を終えました。

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