トルコリラ円見通し 円高ぶり返しとドル高リラ安に押される(20/2/25)

トルコは新型コロナウイルス問題以外でもシリアとの軍事衝突もあるために投機ポジション調整売りの対象となりやすくなっている。

トルコリラ円見通し 円高ぶり返しとドル高リラ安に押される(20/2/25)

トルコリラ円見通し 円高ぶり返しとドル高リラ安に押される

【概況】

トルコリラ円は1月17日高値18.82円からの下落基調が続いて2月18日夕には18.05円まで安値を切り下げてきたが、2月19日からの急激な円安により反騰に転じて2月20日夜には18.40円まで上昇した。しかし急激な円安は20日夜で行き詰まり、21日夜から24日朝にかけては円高がややぶり返す一方、ドル/トルコリラでのドル高リラ安が加速したために2月24日朝に18.11円まで反落、いったん戻したものの18.30円に届かずに失速して24日夕刻には24日朝安値を割り込んで一段安となっている。
新型コロナウイルスの感染拡大に対して楽観的な強気姿勢を示していた米国株が週末に大幅下落し、週明けの24日もダウ先物が大幅下落となる中で売られた。

2月24日のNYダウは前日比1031.61ドル安となり、2018年2月上旬以来約2年ぶりの下げ幅となった。またナスダック総合指数は355.31ポイント安と大幅下落した。株安債券高により米10年債利回りは前日比0.10%の大幅低下で1.37%となり、株安と長期債利回り大幅低下を背景にドル円はリスク回避による円高感がぶり返して2月25日未明には110.32円まで大幅下落となった。これら株安円高の流れからトルコリラ円も24日深夜には17.99円まで下落で18円を割り込んだが、その後は下げ一服で18.10円台まで戻している。

【ドル高リラ安+トルコ株安】

ドル/トルコリラはシリア情勢が緊張度を増す中でドル高リラ安感が強まって2月18日から20日へ3連騰し、21日には6.1002リラをつけて2019年8月底以降の高値を更新した。週末終盤に小反落していたものの24日は6.1604リラまで高値を更新して2019年5月高値6.2539リラに迫ってきている。週足では先週まで6週連続の陽線となっている。

イスタンブール100株価指数もシリア情勢を背景に2月18日から下落に転じ、20日には2.98%安の大幅下落となったが、21日にいったん戻したものの24日は再び反落となり、前日比1.75%安となっている。
ドル/トルコリラもイスタンブール100株価指数もトルコ・シリア情勢の緊張に加えて新型コロナウイルスの感染拡大による金融市場全般のリスク回避感から売られている。中国の経済活動が停滞していることに加え、韓国や日本で感染拡大がみられること、イタリアやイランでの感染拡大も顕著になってきていることが不安を拡大している。

【新型肺炎の感染拡大が中東へ迫る】

新型コロナウイルスの感染拡大による肺炎死者数は2月25日朝時点で中国本土が2596人、感染者数は7万7271人に拡大している。確定診断例の増加は一時期と比較すればかなり低下しているものの、大量の重症事例を抱えており死者数の拡大は続いている。

日本は大型クルーズ船による感染例も含めて850人、韓国は新興宗教協会等の集団感染により833人へ急増している。世界的な拡大も顕著となり、欧州ではイタリアで感染者数が229人、死者7人となった。トルコと国境を接するイランでは感染者が61人、死者12人となる中でトルコはイランとの国境を封鎖した。トルコ国内での感染者は確認されていないものの、イスラエルで6名の感染者、クエートで5人、レバノンでも感染者が発生等、中東への感染拡大も懸念される状況に陥っている。

リスク回避感が強まると投機性の高い新興国の通貨・株式が売られやすくなる。トルコは新型コロナウイルス問題以外でもシリアとの軍事衝突もあるために投機ポジション調整売りの対象となりやすくなっている。

2月19日から20日にかけてはドル円が110円台序盤にあった抵抗線を突破して急伸したため、円安効果でトルコリラ円も上昇した。しかしドル円は21日に上昇がストップし、24日は円高がぶり返してきている。19日夜の急騰時には日本売り的な円安感も出ていたが、ダウ先物が大幅下落する中で金融市場全般のリスク回避感が強まるとクロス円全般での手仕舞い売り=円の買い戻しにより円高反応へ戻っている印象だ。円高感が強まると、ドル高リラ安とともに円高による売り圧力も加わってトルコリラ円が一段安へ進みやすくなると警戒すべきところか。

【シリア・トルコの軍事緊張さらに増す】

シリア情勢もトルコリラ円には売り圧力となっている。
2月3日にシリアのアサド政権軍がトルコ軍を砲撃、トルコ軍が報復の空爆を行い、2011年からのシリア内戦開始以降で初めての両正規軍同士の大規模軍事衝突が発生した。その後もシリア・アサド政権軍の攻勢とトルコ軍の反撃、アサド政権軍と呼応したロシア軍によるトルコ軍制圧領域への空爆等も発生している。

トルコはロシアと2月17日から協議を持ってきたが19日時点で交渉は決裂、21日もエルドアン大統領とプーチン大統領が電話会談を持ったが交渉成果は見られない。
2月21日にもシリア・アサド政権軍とトルコ軍による砲撃合戦が繰り広げられ、ロシア軍もアサド政権軍と呼応してイドリブ県等で空爆を行っている。
トルコはまだシリアとの全面戦争突入を望んでいないと思われるが、軍事衝突を繰り返すうちに一線を超えて全面戦争化しかねないリスクも警戒すべきだろう。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月18日夕安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして18日夜から20日にかけての間への上昇を想定していたが、20日夜高値からの反落により21日午前時点では20日夜高値でサイクルトップを付けた可能性があるとし、21日未明安値(18.27)を割り込む場合は弱気サイクル入りとしていた。

2月24日朝の下落で21日未明安値を割り込み、さらに一段安したため、20日夜高値をサイクルトップとして弱気サイクル入りした。しかしボトム形成期は21日夕から25日夕にかけての間と想定されるので既に24日深夜安値でサイクルボトムをつけている可能性が高い。このため、24日深夜安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとするのを妥当とみて、234日深夜安値を直近のサイクルボトムとする。トップ形成期は25日夜から27日夜にかけての間とするが、戻りは短命の可能性もあるので18.05円割れを弱気転換注意とし、24日深夜安値割れからは新たな弱気サイクル入りとして27日夜から3月2日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では2月21日夜の下落で遅行スパンが悪化、24日朝の一段安で先行スパンから転落したが、24日深夜からの反発により遅行スパンは好転しやすい位置にある。遅行スパン好転からは先行スパン下限を試すとみるが、戻りは短命の可能性もあるので遅行スパンがいったん好転しても再び悪化する場合及び好転できずに24日安値を割り込む場合は安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は2月20日未明高値から20日夜高値への一段高に対して指数のピークが切り下がる弱気逆行を見せていたので21日午前時点では反落注意としていたが、24日の急落で30ポイントを割り込んだ。その後は50ポイントへ迫っている。60ポイント手前までを戻り抵抗とし、35ポイント割れからは下げ再開を疑う。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、18.05円から2月24日深夜安値17.99円を下値支持線、18.15円から18.20円を上値抵抗線とする。
(2)18.05円以上での推移中は上昇余地ありとし、18.15円超えからは18.20円前後試しを想定する。18.20円以上は反落注意とするが、24日深夜安値割れ回避の内は26日も上昇余地が残るとみる。
(3)18.05円割れからは下げ再開警戒とし、24日深夜安値割れからは1月6日安値17.94円試しを想定する。17.95円以下は反騰注意とするが、1月6日安値を割り込む場合は17.85円前後試しまで下値目処を引き下げる。またその場合は4か月サイクルレベルでの下落期入りとして先行きは17.50円前後を目指す可能性が高まると考える。

【当面の主な経済指標等の予定】

2月26日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合議事録要旨公開
2月27日
16:00 2月経済信頼感指数 (1月 97.1)
2月28日
16:00 10-12月期GDP (前期 0.9%)
16:00 1月貿易収支 (12月 -43.3億ドル)

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