トルコリラ円見通し ドル高リラ安だが急激な円安により上昇(20/2/21)

ドル円が110円台に乗せても維持できない持ち合いを続ける中でトルコリラ円はドル高リラ安に押されて下落してきた。

トルコリラ円見通し ドル高リラ安だが急激な円安により上昇(20/2/21)

【概況】

トルコリラ円は1月17日高値18.82円からの下落基調が続いて2月18日夕には18.05円まで安値を切り下げて1月6日安値17.94円に徐々に迫っていたが、2月19日からの急激な円安により反騰に転じ、2月20日未明に18.32円まで上昇、20日深夜には18.40円まで続伸した。21日未明には18.27円まで小反落したがその後は持ち直している。

新型コロナウイルスの感染拡大によるリスク回避でドルが全面高となり、トルコ・シリア国境での両軍の軍事衝突による有事リスクの拡大も加わってドル/トルコリラではドル高リラ安が進行し、ドル円が110円台に乗せても維持できない持ち合いを続ける中でトルコリラ円はドル高リラ安に押されて下落してきた。

ドル/トルコリラはシリア情勢が緊張度を増す中で2月18日に前日比0.32%高、19日に0.30%高、20日も0.32%高と連騰し、20日の高値では6.1080リラを付けて2019年8月底以降の高値を更新して2019年5月高値6.2539リラに迫ってきている。週足では先週まで5週連続陽線、今週の続伸により6週連続の陽線でドル高リラ安が進行している。

シリア情勢の緊張を背景にイスタンブール100株価指数も2月18日に前日比1.01%安、19日に0.32%安、20日は2.98%安の大幅下落で3日間続落となっているが、20日の大幅下落により2月10日安値を割り込んだため、1月22日高値からの下落は三段下げに発展しており、1月22日高値を当面の天井とした下落感が強まってきている。これらドル高リラ安、トルコ株安、シリア情勢の緊張という中にあって、本来ならトルコリラ円も大幅下落しても不思議ない状況なのだが、それを上回る円の急落によりトルコリラ円が上昇するという現象となっている。

ドル円における円安が、円の暴落的な下落感を強める場合はドル高リラ安の進行と並行してトルコリラ円の上昇が続くという可能性もあるが、円の暴落的な下落が一服する場合はドル高リラ安が全面化してくるためにトルコリラ円が戻り一巡から下落再開へ転じる可能性も抱えていると注意したい。

【シリア・トルコの軍事緊張さらに増す】

2月3日にシリアのアサド政権軍がトルコ軍を砲撃、トルコ軍が報復の空爆を行い、2011年からのシリア内戦開始以降で初めての両正規軍同士の大規模軍事衝突が発生した。その後もシリア・アサド政権軍の攻勢とトルコ軍の反撃が続いてきた。またアサド政権を支援するロシア軍もアサド政権軍とともに空爆等に参加してトルコとロシアの関係も悪化している。トルコはロシアと2月17日からこの問題の協議を継続してきたが19日時点で交渉は決裂しており、エルドアン大統領は新たな犠牲者が発生する場合は軍事行動に出るとし、2月19日は「トルコ軍が軍事作戦を開始するのは時間の問題だ」と警告した。
2月20日、トルコは米国に対して迎撃ミサイル「パトリオット」2基を南部の国境に配備するよう要請した。パトリオットが配備されればトルコはF16戦闘機によりシリア・アサド政権軍へ踏み込んだ空爆が可能になる。

2月20日にもシリア北西部イドリブ県ではアサド政権軍の空爆でトルコ軍兵士2人が死亡、トルコ軍の報復攻撃でアサド政権軍兵士50人を死傷させたと報道されている。ロシア国防省はトルコ軍が反体制派を援護するためにアサド政権軍に対して砲撃したことでトルコを非難している。
今回の衝突で、ロシア側がアサド政権への支援姿勢を強めていることで、トルコストリームやロシア製ミサイル等の調達で構築されてきたロシア・トルコの協力関係が崩れている。トルコがシリアのアサド政権領内への軍事攻撃を本格化させる場合、駐留するロシア軍との軍事衝突等により中東情勢が一挙に緊張状態となる可能性もあるため、引き続き注視してゆきたい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月18日夕安値から下げ渋りと19日夜の急伸により、20日午前時点では2月18日夕安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。また2月13日深夜高値を基準としてトップ形成期を18日夜から20日にかけての間と想定したが、急激な円安が発生したために円安状況次第ではトップ形成期がさらに延びる可能性があると指摘した。
2月20日夜へ一段高した後は小反落してるので20日夜高値でサイクルトップを付けた可能性があるが、21日未明安値(18.27)を割り込まないうちは上昇余地ありとし、21日未明安値割れからは弱気サイクル入りとして21日夕から25日夕にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では2月19日夜の急騰で遅行スパンが好転、先行スパンも突破し、その後も両スパンそろっての好転が続いているが、新たな高値更新へ進めないと遅行スパンは悪化しやすい位置にある。21日未明安値を割り込まないうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後の好転から上昇再開とするが、21日未明安値を割り込んで遅行スパンが悪化するところからは反落入りとみて安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は2月20日未明高値から20日夜高値への一段高に対して指数のピークが切り下がる弱気逆行を見せているので反落注意と思われる。70ポイント超えへ切り返す場合は上昇再開とするが、50ポイント割れからは下げ再開と仮定して30ポイント前後への下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、2月21日未明安値18.27円を下値支持線、2月20日夜高値18.40円を上値抵抗線とする。
(2)18.30円以上での推移なら上昇余地ありとし、20日夜高値更新からは18.50円を目指す上昇を想定する。18.45円以上は反落警戒とするが、21日未明安値割れ回避のうちは週明けも高値試しを続けやすいとみる。
(3)18.27円割れからは弱気サイクル入りと仮定して18.15円前後への下落を想定する。18.15円以下は反発注意とするが、18.25円以下での推移が続く場合は週明けも安値試しを続けやすいとみる。円安進行がストップしてリラ安が進む場合は2月18日安値18.05円試しへ向かう可能性もあると注意する。

【当面の主な経済指標等の予定】

2月24日
 16:00 2月景況感 (1月 104.1)
 16:00 2月設備稼働率 (1月 75.5%)
2月26日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合議事録要旨公開
2月27日
 16:00 2月経済信頼感指数 (1月 97.1)
2月28日
 16:00 10-12月期GDP (前期 0.9%)
 16:00 1月貿易収支 (12月 -43.3億ドル)

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