トルコリラ円見通し 12月3日深夜安値から下げ渋りだが反騰に勢い付かず(19/12/5)

ドル円は109円に迫るところまで上昇し、トルコリラ円も18.93円まで戻した。

トルコリラ円見通し 12月3日深夜安値から下げ渋りだが反騰に勢い付かず(19/12/5)

【概況】

トルコリラの対ドルでの下落一服と12月2日へのドル円の上昇を背景としてトルコリラ円は11月27日深夜安値18.87円から12月2日午後高値19.08円まで上昇してきたが、12月2日夜からのドル円の急落によりトルコリラ円も失速に転じた。
12月2日深夜の下落は米国の香港人権法に対する反発や米ISM製造業景況指数の悪化がきっかけとなり、12月3日夜の一段安はトランプ米大統領が米中貿易協議の合意について「期限は設けていない」「中国との合意を大統領選挙後まで待つのは良い考え」等と述べたことで米中協議の早期合意期待が大幅に後退したためだった。

12月4日も日中は冴えない展開が続いてドル円は12月2日以降の安値を切り下げ、トルコリラ円も18.83円まで再び下落した。しかし、夕刻にブルームバーグ通信が追加関税撤回範囲をめぐっての米中合意が近いと報じたことからリスクオンへと流れが変わり、ドル円は109円に迫るところまで上昇し、トルコリラ円も18.93円まで戻した。
ブルームバーグ通信は米国が発動した対中制裁関税の撤回範囲について米中双方が合意に近づいていると複数関係者の話を報じたが、その一方で中国の米国産農産物等の輸入についての両国間の隔たりはまだ残っているとした。米中通商協議問題については12月15日の米国による対中国制裁関税第4弾発動予定の12月15日までの余裕もなくなってきているが、直前の合意実現か、継続協議のまま関税拡大発動は先送りするか、決裂で協議の先行きが見えなくなるのか、まだ予断が許されない状況にあり、土壇場まで紆余曲折が続いてドル円も大きく動き、トルコリラ円も左右されてゆくと思われる。

ドル/トルコリラは11月21日から11月27日まではドル高リラ安で推移していたが、11月28日からドル安リラ高へ揺れ返し、11月29日以降はほぼ横ばいの推移でトルコリラ円への影響度が薄くなっている。
メジャー通貨に対する加重平均であるドル指数は11月29日高値から反落し、12月4日まで4営業日続落している。ドル指数下落はリスク回避により米国債が買われて10年債利回りが低下してドルが売られるという図式だが、このドル安がドル円にとっても自ずと下落要因となっており、12月4日はドル指数も安値からやや戻したものの下ヒゲのある陰線の連続で終わり、ドル円の反発及びトルコリラ円の反発も鈍い程度に止まっている。

【NATOでのトルコの立ち位置は変わらず】

12月3日からNATO首脳会議がロンドンで始まった。3日には英独仏とトルコのエルドアン大統領がシリア北部情勢等で会談した。英独仏はトルコ軍によるクルド勢力への攻撃を批判する立場で、トルコはクルド勢力もテロ組織として攻撃対象とする姿勢を継続している。首脳会談前にはマクロン仏大統領がNATOはトルコ等のせいで脳死状態だと述べ、エルドアン大統領が脳死はフランスと言い返していた。4カ国会談では「テロとの戦いを継続する」という曖昧な確認にとどまったが、トルコにとっては情勢悪化のきっかけにはならなかったようだ。エルドアン大統領は4日にトランプ大統領とも30分程度会談したが、特に新たな動きは見られなかった。
ウクライナ情勢、ロシアとの関係性等からトルコは地政学的にも重要な位置にあるため、トルコの軍事外交姿勢がロシア寄りになれば欧米との緊張感が増すが、欧米もトルコを必要以上には刺激したくないところもあってバランスが保たれている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

12月4日深夜安値から戻しているため、現状は引き続き10月末からの18.80円前後を支持線とし、19円台を維持しきれない持ち合いの範囲内にあるが、持ち合いの中心値である18.95円以下での推移が続く場合は持ち合い下限試し、あるいは下放れへ進む可能性が高まるところと注意される。

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月2日深夜の急落で弱気転換目安とした12月2日朝安値を割り込んだため、12月3日午前時点では12月2日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は12月4日深夜にかけての間としたが、4日午前時点では前回ボトムから4日を経過しているのでボトムをつけての反騰注意期とし、18.93円超えからはいったん強気サイクル入りとした。
12月5日未明に18.93円まで戻したため、3日深夜安値を直近のサイクルボトムとする。高値形成期は12月5日午後から9日にかけての間と想定されるが戻りは短命の可能性もあるので18.87円割れからは弱気転換注意として3日深夜安値試しとし、底割れからは弱気サイクル入りとして6日夜から10日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では12月5日未明への上昇で遅行スパンが好転してきたが先行スパン下限が抵抗となっている。遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からは下げ再開を疑い、3日深夜安値割れからは一段安入りとなるため遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は12月3日深夜安値と4日夕安値がほぼ同値だったところで指数のボトムが切り上がる強気逆行となって上昇に転じた。しかし60ポイント台には届かずにいるため戻りが鈍い印象だ。60ポイント超えからは上昇に勢いも付くとみるが、40ポイント割れからは下げ再開を疑う。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、18.87円を下値支持線、12月5日未明高値18.93円を上値抵抗線とみる。
(2)18.87円を上回る内は上昇余地ありとし、5日未明高値超えからは18.95円から18.97円にかけてのゾーンを試すとみるが、18.95円以上は反落注意とする。
(3)18.87円割れからは下げ再開を警戒して12月3日深夜安値18.83円試しとし、底割れからは18.80円、さらに11月15日未明安値18.77円試しへ向かう流れとみる。18.80円以下は反発注意だが、18.87円以下での推移なら6日の日中も安値試しを続けやすいとみる。

【最近のトルコ・シリア情勢推移】

10月14日 米国がトルコに経済制裁発動
10月23日 トルコが米国提案の恒久的停戦を受け入れ、米国のトルコ制裁解除
10月27日 トランプ大統領、IS指導者バグダディ氏殺害を報告。
10月29日 米下院によるトルコ制裁決議可決
11月01日 トルコとロシア、シリア北東部の合同巡回開始
11月11日 トルコ政府、IS戦闘員の本国送還を開始
11月13日 トランプ米大統領とエルドアン大統領がワシントンで首脳会談
11月23日 トルコ国防相、米国がF35売らないなら別の道を選択 11月23日 第14回シリア保証国会議を12月10-11日に開催
11月25日 トルコがロシア製S400ミサイルシステムの試験開始
11
月26日 シリア北部ラスアルアイン付近で自動車爆弾による大規模テロ事件発生
12月03日 NATO首脳会議、英独仏とトルコの首脳会談
     米トランプ大統領、トルコのロシア製ミサイル調達への制裁検討中と発言
12月04日 米トランプ大統領とエルドアン大統領会談、特に動き無し

【当面の主な経済指標等の予定】

12月11日
16:00 10月経常収支 (9月 24.8億ドル)
12月12日
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 14.00%)
12月13日
16:00 10月鉱工業生産 前年同月比 (9月 3.4%)

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