ユーロ週報 下降チャンネル継続、基本は戻り売り(5月第4週)

ユーロを取り囲む材料は悪材料が多いため、基本は戻り売りということになるでしょう。

ユーロ週報 下降チャンネル継続、基本は戻り売り(5月第4週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週もユーロドルは下降チャンネルの中での動きを継続したことで、新安値を更新後は買い戻しが入るというこれまでと同様の動きとなりました。このチャンネル内での動きを認識していれば新値を突っ込んで売るということなく逆にカウンターの買いで入るという動きも可能ですが、いかんせんユーロを取り囲む材料は悪材料が多いため、基本は戻り売りということになるでしょう。

今週は現在ほぼ議席が確定してきている欧州議会選挙を主なテーマとします。

先週は23〜26日にEU各国で欧州議会選挙が実施されましたが、先々週あたりからはその選挙に向けイタリアからは半分人気取りとも思える財政規律無視の発言なども出て、ベースにある欧州景気の悪さとともにユーロを売りやすい地合いとしました。また金曜にはメイ首相が辞任を発表しましたが、直前の再国民投票の可能性に言及したことが保守党、労働党双方から信任を失うきっかけとなりました。

英国民は現状では残留希望が多いと言われますが、2度目の国民投票というプロセス自体がメイ首相自身もこれまで述べていたように民主主義に反するものですし、政治的には欧州議会選挙でブレグジット党が第1党となっていますし、新首相がメイ首相よりも強硬派であればますます離脱協議は不透明感を増してきます。金曜からポンドもユーロも買い戻しが目立っていますが、今後のことを考えた場合、決して買い材料とは思えません。

またEU主要国のドイツでは与党CDUが第1党は維持したものの、SPDは大きく議席を減らし第2党は緑の党となっています。ドイツではブレーメンで地方選も行われましたが、戦後常に第1党だったSPDが第2党に陥落とSPDの後退が顕著で、今後の大連立に対する見直しも考えられますし、早ければ年明けにも解散総選挙といった話も出ているようです。

フランスではマクロン大統領率いる与党よりも極右のルペン党首率いる国民連合が第1党となる勢いですし、全議席で見てもこれまで過半数を占めていた中道右派と中道左派の2党で43%台に留まり、各国でポピュリズムと反EUが勢力を伸ばしている様子がうかがえます。欧州議会選挙自体は参加する各国ではなくEUとしての代表ではあるものの、今後の国内政治に与える影響は皆無ではありませんから、EUしいてはユーロにとっての悪材料という見方が当面は続くと考えられます。

次にテクニカルな観点から日足チャートをご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ

ユーロドル日足

日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週も代わり映えのしないチャートですが、長期的には年初からの下降チャンネル(ピンクの太線)の中での動き、中期的には4月高値からのレジスタンスラインとそれに平行に4月安値から引いたラインとで構成される小さな下降チャンネル(青の細線)の中での動きが続いています。それゆえ新値更新時には反発して戻すということが繰り返されます。

しかし、大きなトレンドが下を向いていますので、上がったところを売るというスタンスはもっと確実ですし、ユーロにとっての悪材料ばかりが目立つ中で買いは短期筋による売りの買い戻し程度です。さらに悪材料が多いとなるとこのチャンネルの中での動きがいつまで続くかもわからず、状況によっては一気に下抜けるというリスクもあります。今週も基本は戻り売り、若干の新安値を見る可能性もありそうだという見方が妥当だと考えます。

現在、短期下降チャンネルのレジスタンスラインは1.12台前半を下降中、多少の誤差を考えて1.12台半ばを明確に上抜けることが無ければ下降トレンドを継続、もし上抜けることがあった場合には長期下降トレンドのレジスタンスが戻りの限界点と考えられますが、同ラインは1.13水準を下降中です。上抜けした場合でも大きく上昇する流れでは無いと言えます。

いっぽう、下値はこれまで同様に新安値をつけるとすれば1.11トライということになりますが、それでも大きく下抜けるリスクよりもこれまで同様に新値更新後は買い戻しが入るというパターンが繰り返されるでしょう。1.1080レベルがいいところではないかと見ています。今週は1.1090レベルをサポートに1.1240レベルをレジスタンスとするレンジを見ておきます。

今週のコラム

今週のコラム

先週はポンドドルを見ましたが、今週はユーロポンドのテクニカルです。
さっそく日足チャートをご覧ください。

ユーロポンド年初来安値となる0.8473の手前の大台0.85水準で4月も5月も反発しましたが、5月はブレグジットの不透明感が強まったことから、4月高値、3月高値を次々と上抜け、先週は0.8850レベルの高値をつけました。テクニカルには年初来高値0.9042と年初来安値の61.8%戻しにあたる0.8856とほぼ一致し、いったん落ち着きどころとなる可能性もあります。

しかし、メイ首相が辞任した後の英国政治の一段の混乱が、最悪のシナリオとして合意無き離脱へと進んでいくリスクがあること、しかもそれが決して低くは無さそうだということを考えると新首相が決まるまでユーロポンドでのポンド売りが継続しやすいと考えた方がよさそうです。

その場合、次のターゲットとしては78.6%(61.8%の平方根)戻しとなる0.8960を視野に入れることとなりますが、同水準は昨年12月から今年1月のもみあいを下抜けた水準とも重なり、テクニカルにもいい水準です。今週は下がったところを丁寧に買う動きが出やすいのではないかと見ています。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

5月27日(月)
**:** LDN、NY市場休場


5月28日(火)
15:00 ドイツ6月GFK消費者信頼感
15:45 フランス5月消費者信頼感
16:30 フランス中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏5月消費者信頼感
**:** 臨時EUサミット


5月29日(水)
15:45 フランス5月CPI速報値
15:45 フランス4月PPI
15:45 フランス1〜3月期GDP改定値
16:55 ドイツ5月失業率

5月30日(木)
 (特になし)



5月31日(金)
15:00 ドイツ4月小売売上高
21:00 ドイツ5月CPI速報値

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

5月20日(月)
ユーロドルは終日方向感のはっきりしない展開を続けました。週後半に欧州議会選を控えていることや、米中間の貿易摩擦激化はユーロドルとしては材料にしにくい部分もあって、1.11台半ばで23pipsのレンジに留まりました。


5月21日(火)
ユーロドルは欧州市場序盤まではじり安の展開となり1.1142レベルへと前日安値を割り込み、その後も安値圏でのもみあいが続きました。動きがあったのはNY市場前場にメイ首相が議会に二度目の国民投票を含んだ案を提出するとのニュースにポンドの急騰がユーロも押し上げましたが、その後否定的な意見が相次ぎポンドの下げとともにほぼ上昇前の水準に押して引けました。

5月22日(水)
ユーロドルは、リスクオフの円買いがユーロ円でも見られたことで欧州市場までは上値の重たい展開が続きました。NY市場の朝方にはドル売りに反応して一時的に買い戻しも出ましたが、イタリアの成長鈍化見通しやオーストリアでの首相不信任案提出など、悪材料に事欠かない状況で引けにかけては再び安値圏に押しての引けとなりました。


5月23日(木)
ユーロドルは、相変わらずの欧州悪材料が影響して東京市場から上値の重たい展開となり、リスクオフの動きによるユーロ円の売りが重なったこともあって一時1.1107レベルと年初来安値をわずかに更新しました。NY市場ではドル全面安の動きに転じたことからユーロドルも上昇、1.1188レベルまで上伸し高値圏での引けとなりました。

5月24日(金)
ユーロドルは、底堅い動きが続き、欧州市場でメイ首相が辞任を表明した動きには、ユーロポンドでのポンド売りが見られたことで、買われる動きに。NY市場でもドル売りの動きからユーロ高となり1.1212レベルの高値をつけ1.12台を維持して引けました。

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