ドル円見通し 新値更新にもかかわらず失速(2/27)

26日夜の米経済指標はまちまち。

ドル円見通し 新値更新にもかかわらず失速(2/27)

ドル円見通し 新値更新にもかかわらず失速

【概況】

2月14日高値111.12円から15日安値110.25円まで下げた後は110円台後半での持合いが続いていたが、22日夜からの上昇で持ち合いを上抜け、26日未明には111.23円をつけて2月14日高値を突破して1月3日暴落以降の戻り高値を更新した。新値更新からはテクニカル的にも心理的にも上昇に弾みが付きやすいものだが、27日午前には111円をあっさり割り込んだ。110.75円を支持線としていったんは下げ渋っていたものの深夜にドル安感が強まって一段安となり、27日未明には110.42円まで下げた。2月16日以降の安値更新であり、2月15日安値110.25円に対して余裕が乏しくなった。新値を取ったところから失速した状況は、それだけ111円台に対する高値警戒感もかなりあるという印象を与えた。

米中協議の進展、3月1日の交渉期限延長と米中首脳会談の可能性が高まったとして市場全般は米中問題への楽観を強めてきたが、年末から継続してきたNYダウのV字反騰と比較してドル円の動きは慎重なものに止まっていた。25日夜の上昇は慎重さの中で株高に背中を押されての上昇だったが、26日は株高も一服し、米中問題もまだ具体的な結果を得ていないとしてまだまだ様子見という慎重論もぶり返しているようだ。

26日夜の米経済指標はまちまち。米商務省が発表した昨年12月の住宅着工件数は年換算で107万8000戸となり前月比11.2%減少、市場予想の125万戸を大幅に下回った。マイナスは2カ月ぶりだったが、先行指標の住宅着工許可件数は132万6000戸で市場予想の129万戸を上回り前月比は0.3%増だった。
米コンファレンス・ボードが発表した2月の消費者信頼感指数は131.4となり前月の121.7から上昇、市場予想の124.7を上回った。

消費者信頼感指数が強めだったことは若干のサプライズだが、住宅着工件数の低下は最近の住宅関連指標及び生産、小売統計の鈍化、消費者物価の伸び鈍化等とともに米景気が頭打ちとなっている印象を与えている。中国、欧州等の経済指標も弱い数字が多く、米国第一主義による保護主義的な動き、EU内部の弱体化、新興国経済の伸び鈍化等への影響が出始めている印象だ。

英国のEU離脱問題が相変わらず混乱しているものの、26日は「合意無き離脱」によるハードランディングではなく「離脱期限の若干の延長要請合意ある離脱」でのソフトランディングの可能性が高まるのではないかとの見方から英ポンドが上昇、ユーロもつれ高となりドル指数を押し下げた。

【パウエル議長の議会証言】

2月26日夜には米連銀のパウエル議長が米上院銀行委員会で証言した。「忍耐強いとは政策判断を急がないことだ」と述べて当面は利上げ棚上げが妥当だとの姿勢を示した。2018年の米GDP伸び率は3%を幾分下回るとし2019年は鈍化するとしたが見通しは良好と景気への楽観姿勢を示した。ただし「最も大きなリスクは中国と欧州経済の減速」と指摘して世界経済の減速リスクを特に注視している姿勢を示した。
証言内容に特段のサプライズは無く、明日も下院で同様の証言を行うものと思われるが、当面追加利上げが棚上げされるという姿勢が再確認されたことで市場も安堵し、ドル安反応となった。

【人民元高、ドル指数下落とドル円】

2月27日から米朝首脳会談が始まるため、米中協議問題はひとまず脇に置かれるが、3月5日からの全人代明けの米中首脳会談へ向けて調整が進んでいるようだ。為替条項では米中が大筋合意しているとも伝えられており、ドル人民元は2月26日への下落で1月31日安値を割り込み、昨年10月31日以降の安値を更新している。
ドル円の趨勢を見る上ではメジャー通貨の加重平均であるドル指数動向とともに、ドル人民元の動きもかなり重要だと思う。人民元動向はドル指数に反映しないが、新興国通貨を代表するものとしてドルのグローバル指数には影響を与える。
ドル円は1月3日に急落したが、年初の薄商いのなかでの短期的な暴落に止まってその後は自律反発も含めて上昇してきているが、その間にもドル人民元ではドル安元高が進んでいる。ドル指数も1月10日から2月14日までは戻してきたがその後は下落基調に入っている。ドル指数の下落と元高ドル安に対してドル円が2月26日未明に高値を更新したことには違和感がある状況だ。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月15日昼安値を前回のサイクルボトム、20日高値110.94円を同サイクルトップとして下向きの流れに入っていたが、26日未明への上昇で14日高値を上抜いたために26日朝時点では21日深夜安値と23日朝安値をダブル底とした強気サイクル入りとした。また今回の高値形成期を26日未明高値も含めて27日にかけての間とし、110.75円割れからは弱気転換注意とした。
26日夜までは110.75円を支持線として下げ渋ったが深夜に110.75円割れから急落となったため、26日未明高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。新たな安値形成期は28日朝から3月4日朝にかけての間と想定する。110.75円を下回る内はボトム形成への下落継続警戒とし、110.75円超えからは強気転換注意とする。

60分足の一目均衡表では26日深夜からの下落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、遅行スパン好転からは先行スパン下限試しとするが、強気転換は両スパン揃って好転するところからとする。
60分足の相対力指数は27日未明に30ポイントまで下げたが、相場の安値更新に対する指数のボトムアップという強気逆行はまだ見られないため、指数がボトムを切り下げなくても相場が一段安しやすい状況と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、27日未明安値110.42円を下値支持線、110.75円を上値抵抗線とする。
(2)110.75円を下回る内は110.42円割れから2月15日安値110.25円試しとし、さらに割り込むところからは110円前後試しへ向かうとみる。110円割れではいったん買い戻しも入りやすいとみるが、110.50円以下での推移が続いている場合は28日の日中も安値を試しやすいとみる。
(3)110.75円超えからは強気転換注意として111円手前を試すとみるが、110.75円から111円手前のゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。(了)<9:55執筆>

【当面の主な予定】

2/27(水)
米朝首脳会談(ハノイ、28日まで)
17:00 (独) ワイトマン独連銀総裁、記者会見
19:00 (欧) 2月 経済信頼感 (1月 106.2、予想 106.0)
19:00 (欧) 2月 消費者信頼感確定値 (速報 -7.4、予想 -7.4)
24:00 (米) 1月 住宅販売保留指数 前月比 (12月 -2.2%、予想 -0.4%)
24:00 (米) 1月 住宅販売保留指数 前年同月比 (12月 -9.5%)
24:00 (米) 12月 製造業新規受注 前月比 (11月 -0.6%、予想 0.9%)
24:00 (米) パウエル米連銀(FRB)議長、金融サービス委員会証言(半期金融政策報告)

2/28(木)
08:50 (日) 1月 鉱工業生産速報 前月比 (12月 -0.1%、予想 -2.5%)
08:50 (日) 1月 鉱工業生産速報 前年同月比 (12月 -1.9%、予想 1.3%)
08:50 (日) 1月 小売業販売額 前年同月比 (12月 1.3%、予想 1.1%)
09:00 (NZ) 2月 NBNZ企業信頼感 (12月 -24.1) ※1月発表無し
09:01 (英) 2月 GFK消費者信頼感 (1月 -14、予想 15)
09:30 (豪) 10-12月期民間設備投資 前期比 (前期 -0.5%、予想 0.5%)
10:00 (中) 2月 国家統計局製造業PMI (1月 49.5)
14:00 (日) 1月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (12月 2.1%、予想 11.0%)
22:00 (独) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 -0.8%、予想 0.5%)
22:00 (独) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 1.4%、予想 1.5%)
22:00 (米) クラリダFRB副議長、全米企業エコノミスト協会での講演

※米GDP統計は政府機関閉鎖時の影響で速報値と改定値が統合で発表
22:30 (米) 10-12月期GDP 前期比年率 (前期 3.4%、予想 2.4%) 
22:30 (米) 10-12月期個人消費 前期比 (前期 3.5%、予想 3.7%)
22:30 (米) 10-12月期コアPCE 前期比 (前期 1.6%、予想 1.6%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 ( 前週 21.6万件、予想 22.0万件)
22:50 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
23:45 (米) 2月 シカゴPMI (1月 56.7、予想 58.0)
25:00 (米) 米カンザスシティ連銀2月製造業活動指数
25:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
27:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る