一段の利下げを示唆、緩やかなユーロ安の地合い継続か
【今回のポイント】
〇 想定通り政策金利は0.25%引き下げ
〇 文言変更で一段の利下げを示唆
〇 ユーロは対円、対ドルで下落が続きそうなムード
【ECB理事会の結果】
欧州中央銀行(ECB)理事会は、全会一致で主要政策金利を0.25%引き下げた。ECB声明は、「大部分の基調インフレ指標は、理事会が中期的な目標とする2%近辺で持続的に安定すると示唆している」とし、「十分に制約的な政策」を維持するとの確約を削除した。また、「理事会は特定の金利の道筋を事前に確約しない」とも表明するなど一段の利下げを示唆した。
ラガルドECB総裁は記者会見で下記のような発言をした。
「金融政策の決定において「適切」であり続けたい。文言を比較するなら「制約的な」ではなくなり、「適切な決定」がそれに取って代わる。」
「現在のところ、進むべき方向は非常に明確だ。明らかに、多くの領域がカバーされている。」
「(関税の影響に対しては)インフレへの全体的な影響は不確実だ。非常に複雑な変数がある。」
「ここ数日で話し合ったことが一つあるとすれば、それはわれわれが直面している不確実性のレベルだ。」
「中立金利について議論はしていない。」
「目標にほぼ近づいていると完全に確信するためには、インフレの構成に変化が見られることを望んでいる。インフレに対するリスクは、以前よりも二面性が高くなっている。」
「2024年最後となる今回の理事会では、まだインフレに対する勝利宣言はできず、職務は達成されていないが、中期的には2%の目標達成に向けて順調に進んでいることを認めることとなった。」
「25bp利下げ提案は理事会の全メンバーの同意を得た。」
「50bp利下げの可能性も検討するという議論もあったが、全員が一致して合意したのは25bpが正しい決定だという点だった。」
「経済成長に対するリスクは引き続き下振れ傾向にある。」
「貿易摩擦が激化しなければ、より低利になった融資が消費を押し上げるはずだ。しかし、世界貿易における摩擦拡大のリスクは、輸出を抑制し世界経済を弱めることでユーロ圏の成長を圧迫する可能性がある。世界貿易の摩擦が拡大すれば、ユーロ圏のインフレ見通しはより不透明になるだろう。」
【市場の反応】
0.25%利下げは市場の想定通りだった一方、声明の文言変更に伴う一段の利下げ示唆は想定外の結果となった。ただ、市場では独仏の不透明感やトランプ次期政権での貿易摩擦激化などを考慮すると一段の利下げは想定線との見方が強く、ユーロは対円で160円水準、対ドルでは1.04ドル水準とさほど大きな動きは観測されなかった。ラガルドECB総裁が「50bp利下げの可能性も検討するという議論もあった」といった発言に対しても影響は限定的となった。
【今後、ユーロはどう動く?】
市場では、来年1月のECB理事会でも0.25%もしくは0.50%の利下げを予想している。25年後半も利下げは続き、年末までに中銀預金金利は1.75%ほどまで引き下げられる見通しだ。2.0%を下回る水準を市場は織り込んでいることから、やや行き過ぎも意識されるが、独仏の政治・経済問題を抱えていることから、両国が与える欧州全体への影響を考慮すると、弱気な金利水準見通しが妥当かもしれない。
ユーロは対円で160円水準を推移しているが、日銀による12月利上げ観測後退の影響が大きいことが円安ユーロ高の背景にある。対ドルでは1.04ドルと11月の1.037ドルを下回る可能性が強まっている。仮に日銀が12月利上げを見送ったとしても、年明けの早いタイミングでは利上げを実施する公算が大きいことから、中長期的な見通しではユーロは対ドル、対円ともに弱い動きとなろう。
【2024年スケジュール】
※米国は現地時間を記載しているので、金利発表及び記者会見は日本時間翌日未明
日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持
3月18日−19日・・・マイナス金利の解除、YCC終了、ETF等の買い入れ終了
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持、展望レポート見通し引き上げ、記者会見後は円全面安に
6月13日−14日・・・国債買入額を引き下げる方針を決定、詳細は7月に公表
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)・・・国債買入額の減額と利上げ実施を発表、植田総裁のタカ派姿勢で円全面高に
9月19日−20日・・・現状の金融政策を維持、植田総裁の利上げ慎重姿勢で円安推移
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持、植田総裁はややタカ派な発言
12月18日−19日
米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日・・・4会合連続で金利据え置き
3月19日−20日・・・5会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長は、年内利下げの可能性を再表明
4月30日−5月1日・・・6会合連続で金利据え置き、パウエルFRB議長はややハト派な発言
6月11日−12日・・・7会合連続で金利据え置き、24年利下げ回数は3回から1回に修正
7月30日−31日・・・8会合連続で金利据え置き、9月利下げ実施を示唆
9月17日−18日・・・4年半ぶりの利下げを実施、パウエルFRB議長は利下げを急がない姿勢強調
11月 6日− 7日・・・0.25%の利下げを実施、12月も0.25%利下げ実施を示唆
12月17日−18日
欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・現状の金融政策を維持、利下げの議論は時期尚早
3月 7日・・・現状の金融政策を維持、6月利下げ開始を示唆する発言
4月11日・・・現状の金融政策を維持、大きなサプライズが無い限り6月利下げ開始か
6月 6日・・・政策金利を0.25%引き下げ、追加利下げは明言せず
7月18日・・・金利据え置きを発表、利下げ実施は「データ次第」
9月12日・・・政策金利を0.25%引き下げ、今後の利下げスケジュールは「データ次第」
10月17日・・・政策金利0.25%引き下げ、今後の利下げスケジュールは「データ次第」
12月12日・・・政策金利0.25%引き下げ、文言変更で一段の利下げを示唆
オーダー/ポジション状況
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