ドル円 振れはあるものの上値が重い週か(週報1月第5週)

1月の日銀会合で拡充された共通担保オペが23日に期間5年で実施されたことにより円の長期金利が低下、それとともに為替市場は円安に動くスタートを切りました。

ドル円 振れはあるものの上値が重い週か(週報1月第5週)

振れはあるものの上値が重い週か

〇先週のドル円、23日に共通担保オペが期間5年で実施され長期金利低下で為替市場は円安に
〇週半ば以降は今週のFOMCに向けドルの上値が重くなる展開、週間レンジは2円10銭
〇FOMCはサプライズなしとみられるが発言次第では金利低下、ドル安といった動きも想定
〇金利市場ではドル安・円高に動きやすい環境、為替市場でも131円台は上値が重い
〇1/18高値131.56レベルを明確に抜けない限りはまだ下降トレンドは継続
〇今週は128.00レベルをサポートに、131.00レベルをレジスタンスとする流れとみる

今週の週間見通し

先週のドル円は、1月の日銀会合で拡充された共通担保オペが23日に期間5年で実施されたことにより円の長期金利が低下、それとともに為替市場は円安に動くスタートを切りました。しかし、この共通担保オペで日銀から低利で借り入れた資金を運用に回すことで裁定取引が出来るという金融機関への利益供与とも取れます。このような政策が今後長期に渡って継続されるとはとても思えません。

各金融市場の市場参加者も同様の考えが主流で、黒田日銀総裁の任期中における過渡的なものであり、次期総裁の下で現在の延命政策は終了を迎えるという見方が圧倒的です。金利市場でも国債利回りではなくインターバンク市場で変動金利と固定金利の交換に使われるスワップ市場では10年もの金利が日銀会合前には1%を超えていましたが、会合後20日には0.744%まで低下しました。しかし、その後再び上昇に転じ共通担保オペの実施にも関わらず27日には0.933%まで上昇しています。スワップ金利市場は国際的な金利取引市場で日銀による介入(イールドカーブコントロール)も無く、本来の10年金利のあるべき水準を示していると考えられます。

金融市場では短期(通常、3か月か6か月の変動金利)と長期(主に5年〜30年とニーズに応じて)の金利の交換(スワップ)は普通に取引されている市場です。なかなかスワップ市場の金利は目にすることは無いと思いますが、日経新聞のマーケットデータでも以前は掲載されていましたが、他に重要なデータがあると判断されたのか掲載されなくなったようです。

そして週半ば以降は今週31日〜1日のFOMCに向けて0.25%への利上げ幅縮小と次回3月で利上げは打ち止めというコンセンサスもあり、ドルの上値も重くなるという展開となりましたが、週間レンジは2円10銭と最近のドル円にしては狭く昨年10月1週以来の静かな一週間であったと言えます。

今週のFOMCは上述の通りでサプライズは無いものと見られますが、今年のFOMCメンバーは昨年に比べるとややハト派寄りの構成となっていることから、出てくる発言によっては金利低下、ドル安といった動きも想定しておくべきかもしれません。しかし、翌日にはECB理事会、週末には米国雇用統計と連日イベント続きとなりますので、方向感が出るよりは一時的な振れに留まると見られます。

テクニカルには、いつもの日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

長期的には2021年安値と2022年高値の半値押し127.29(赤の水平線)で下げ止まったことから短期的な安値は見たと考えられますが、金利市場ではドル安・円高に動きやすい環境が続いていますし、為替市場でも131円台は上値が重くなってきました。現在は2022年高値からのレジスタンスラインをトライする動きになってはいるものの、1月18日高値131.56レベルを明確に抜けない限りはまだ下降トレンドは継続していると見た方がよさそうです。

今週はイベントが多いので振れはあると思いますが、先週の131円台前半の売りと129円台前半の買いから、やや下方向にシフトしやすい流れにあるように思えます。今週は128.00レベルをサポートに、131.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2023年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

1月30日(月)
18:00 ドイツ10〜12月期GDP速報値 ☆
19:00 ユーロ圏1月消費者信頼感
22:15 フランス中銀総裁講演 ☆

1月31日(火)
08:30 本邦12月失業率・有効求人倍率
09:30 豪州12月小売売上高
10:30 中国1月製造業PMI
15:30 フランス10〜12月期GDP速報値 ☆
16:00 ドイツ12月小売売上高、輸入物価
16:00 トルコ12月貿易収支
16:45 フランス1月CPI速報値 ☆
16:45 フランス12月PPI
17:55 ドイツ1月失業率
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP速報値 ☆

19:00 本邦1月介入実績
21:00 南ア12月貿易収支
22:00 ドイツ1月CPI速報値 ☆
22:30 米国10〜12月期雇用コスト
23:00 米国11月住宅価格、ケースシラー住宅価格
23:45 米国1月シカゴ購買部協会景況指数 ☆
24:00 米国1月消費者信頼感 ☆
30:45 NZ10〜12月期失業率
**:** FOMC(〜1日)

2月1日(水)
10:45 中国1月MarkIt製造業PMI ☆
16:00 トルコ1月製造業PMI
17:50 フランス1月製造業PMI
17:55 ドイツ1月製造業PMI
18:00 ユーロ圏1月製造業PMI
18:30 英国1月製造業PMI
19:00 ユーロ圏1月CPI速報値 ☆
19:00 ユーロ圏12月失業率

22:15 米国1月ADP全国雇用者数 ☆
23:45 米国1月製造業PMI
24:00 米国1月ISM製造業景況指数 ☆
24:00 米国12月建設支出
24:30 週間原油在庫統計
28:00 FOMC結果発表 ☆
28:30 パウエルFRB議長会見 ☆
30:45 NZ12月建築許可件数

2月2日(木)
09:30 豪州12月建築許可件数
16:00 ドイツ12月貿易収支
21:00 英中銀MPC結果発表 ☆、議事要旨公表
21:30 米国12月チャレンジャー人員削減予定数
22:15 ECB理事会結果発表 ☆
22:30 米国10〜12月期単位労働コスト速報値 ☆
22:30 米国新規失業保険申請数
22:45 ラガルドECB総裁講演 ☆
24:00 米国12月製造業新規受注

2月3日(金)
10:45 中国1月MarkItサービス業PMI ☆
16:00 トルコ1月CPI
16:45 フランス12月鉱工業生産
17:50 フランス1月サービス業PMI
17:55 ドイツ1月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏1月サービス業PMI
18:30 英国1月サービス業PMI
19:00 ユーロ圏12月PPI ☆
22:30 米国12月雇用統計 ☆
23:45 米国1月サービス業PMI
24:00 米国1月ISM非製造業指数 ☆
**:** EU・ウクライナサミット

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

1月23日(月)
週明け前場のドル円は前週末の流れを受けてやや上値が重たいスタートとなりましたが、後場に入り米金利上昇と日銀の共通担保オペ実施による円金利低下を受けてドル円は上昇、欧州市場序盤には130.31レベルの高値をつけました。130円の大台超えでは戻り売りも強くいったん129円台半ばまで下押し。その後は円売りから全般的なドル買いの動きとなりNY市場では130.89レベルまで高値を伸ばし、若干押して引けました。

1月24日(火)
ドル円は前日に130円台後半で上値の重さを確認したこと、米金利が下げる動きを見たことからドル売りが先行、欧州市場序盤には大台を割り込み129.73レベルの安値をつけました。しかし、大台割れでは短期筋の買い戻しと見られるドル買いも入りその後はNY市場の朝方までやや買い戻しが入りました。強い米国PMI発表後に米金利が乱高下し、ドル円も131円台に乗せた後に130円の大台割れとストップを巻き込んだ動きとなり、引けにかけては130円台前半をじり高で終わりました。

1月25日(水)
東京前場は実需の買いに支えられてドルがじり高となりましたが130円台後半では戻り売りを考える向きも多く反転。その後はユーロ円が下げた動きもありジリジリと水準を下げていましたが、NY市場ではユーロドルの買いに引っ張られてドル安が続き一時129.27レベルの安値をつけました。

1月26日(木)
東京市場では前日安値圏でのもみあい、一時129.02レベルの安値をつけたものの欧州市場以降は米金利上昇とともにドル買いの動きに転じました。NY市場では強い経済指標を受けて米金利が一段高となりドル円も130.62レベルまで反発しましたが、130円台半ばよりも上では戻り売りも出て、引けにかけては130円台前半へと押して引けました。

1月27日(金)
東京朝方に発表された東京区部CPIが予想よりも高い4.4%(コア4.3%)となったことを受けて円買いが先行し129.49レベルの安値をつけましたが129円台前半ではまだ買いも残っていたようで欧州市場序盤には早朝水準へと戻して海外市場入り。その後は129円台後半で130円より上はドル売り、129.50以下ではドル買いのオーダーが入っているという感じのもみあいのまま週末クローズを迎えました。

ディスクレーマー

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