ドル円見通し 米長期債利回り反騰とドル高再燃で144円割れを買い戻される(22/10/6)

ドル円は10月3日の昼過ぎと夜に145円台序盤を付けたところから米長期債利回りの急低下に圧されて10月5日午前に143.50円まで下げた。

ドル円見通し 米長期債利回り反騰とドル高再燃で144円割れを買い戻される(22/10/6)

米長期債利回り反騰とドル高再燃で144円割れを買い戻される

〇ドル円、米長期債利回りの急低下に圧され5日午前に143.50まで下げる
〇米経済指標良好、FRBの大幅利上げ姿勢変わらず、米長期債利回り反騰で5日深夜144.84まで戻す
〇その後は145円に届かずやや下げ気味の推移だが144円割れに対する買い意欲の強さ示す
〇ポンド、ユーロは反落、上昇再開かもう一段安か、ドル円の趨勢を判断してゆく上で注目
〇144.85超えからは145円台序盤を試すとみる、145円台序盤は戻り売りにつかまりやすい
〇144円割れからは143.50試し、割り込む場合は143円前後を試す流れとみる

【概況】

ドル円は10月3日の昼過ぎと夜に145円台序盤を付けたところから米長期債利回りの急低下に圧されて10月5日午前に143.50円まで下げたが、144円割れに対する値頃感から買い戻されて144円台を回復、5日夜は米経済指標が市場予想を上回ったことや米FRBの大幅利上げ姿勢がさほど緩まないとの見方が強まったことで米長期債利回りが総じて反騰したために深夜には144.84円まで戻した。145円には届かずにその後はやや下げ気味の推移だが144円割れに対する買い意欲の強さを示した。10月5日は9月28日から急騰してきたユーロやポンドに修正安が入っており、米長期債利回り低下とドル安が一巡した印象もある。

【ポンド、ユーロが反落】

ユーロドルは9月28日安値0.9534ドルからの反騰により10月5日未明には0.9999ドルを付けて1ユーロ1ドルのパリティに迫ったが5日夜には0.9833ドルまで反落した。深夜以降の持ち直しで0.990ドル台回復を試しているので0.9950ドルを超えてくれば5日夜の下落を押し目としての上昇再開感も出てくるところだが、5日深夜安値を割り込む場合は上昇一巡による下落再開感が強まりかねない動きとなっている。
英ポンドも9月26日安値1.038ドルへ暴落して史上最安値を更新したところから10月5日午後高値1.1493ドルまで大幅上昇してきたものの10月5日深夜には1.1226ドルまで反落した。1.120ドル割れを回避して1.130ドル台へ戻しているものの大幅上昇に一服感が出ている。

ポンドの反騰入りは9月28日に英中銀がポンド安と株安債券安のトリプル安阻止のためにQE(量的金融緩和による国債購入)再開を決定したことがきっかけだったが、10月4日と5日の両日に行われた英国債入札は中銀の基準値に満たなかったとして入札ゼロに終わってしまった。また格付け大手フィッチ・レーティングスは英国の格付けを「AA-」に据え置いたものの、長期外貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)の見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。英10年債利回りは9月28日に4.58%まで急伸したところから4日安値3.74%まで急低下したが、5日は4.07%まで上昇(債券価格は下落)しており、英国への先行き不安感が再燃しつつある印象だ。
9月28日からのユーロとポンドの反騰がドル安感を強めていただけに、両通貨が5日夜の下落を消化して上昇再開へ向かうのか、もう一段安へ進むのか、ドル円の趨勢を判断してゆく上でも注目したいところだ。

【米経済指標は予想よりも良好】

米民間雇用サービスのADP(オートマチック・データ・プロセッシング)が10月5日に発表した9月全米雇用報告では、9月の非農業部門民間就業者数が前月比20万8000人増となり、8月の18万5000人増(速報の13万2000人増から上方修正)及び市場予想の20万人増を上回った。
米商務省による8月の米貿易赤字は前月比4.3%減の674億ドルとなり5か月連続での赤字縮小となった。ただ貿易額は昨年5月以来の低水準、輸入は前月比1.1%減、輸出は0.3%減だった。
米サプライ管理協会(ISM)による9月のサービス業景況指数は56.7となり8月から0.2ポイント低下したが、市場予想の56.0を上回った。内訳では雇用が相変わらず強く8月の50.2から53.0へ上昇したが、価格は8月の71.5から68.7へ低下した。

【NYダウは連騰一服、米長期債利回りは反騰】

10月5日のNYダウは前日比42.45ドル安と反落した。9月30日安値で28715.85ドルを付けて1月5日の史上最高値36952.65ドル以降の安値を更新したところから持ち直し、10月3日に前日比765.38ドル高、4日に同825.43ドル高と大幅続伸して3万ドルを回復したが、5日は一時100ドル高を超える続伸気配だったものの米長期債利回りの再上昇を嫌気して失速した。3万ドル割れは買い戻されているが、リバウンドが継続できるのかどうか、週末の米雇用統計次第となってきた。

一方で米長期債利回りは総じて反騰した。指標の10年債利回りは前日比0.12%上昇の3.76%で終了した。9月28日に4.02%を付けたところから急落に転じて10月3日には前日比0.19%低下、4日には一時3.56%まで低下していたが急落調整一巡から反騰入りの気配となっている。
30年債利回りは前日比0.06%上昇の3.76%、2年債利回りは同0.05%上昇の4.15%となったが、9月26日の4.36%から10月4日に一時4.00%まで低下したところから切り返してきた。
米長期債利回りの10月4日までの急低下は景気後退を懸念して米FRBの大幅利上げ姿勢が緩むのではないかとの思惑だったが、FRBのタカ派姿勢はさほど変わらないとの見方がぶり返している。
アトランタ連銀のボスティック総裁が10月5日の講演において政策金利を「今年末までに4.0〜4.5%程度へ引き上げてからその水準で据え置く」見通しを述べたことは、前回FOMCにおいて2023年への利上げ継続で4.5%以上へ政策金利を引き上げてゆくとの想定よりもハト派な内容だったが、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は10月5日に「より多くの利上げが必要」と強調してタカ派姿勢の継続感を強めている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は10月5日午前に143.50円まで下げたところで目先の底を付けて戻している。10月5日深夜に144.84円まで上昇したところからはやや下げているものの、144円割れを買われて持ち直したことにより、10月6日の日中から10月10日夜にかけての間は高値切り上げを試しやすい時間帯と思われる。ただし10月5日午前安値を割り込む場合は144円台中心の持ち合いからの転落を再認識させられるために10月7日から10月12日にかけての間へ安値試しを続けやすくなると思われる。

60分足の一目均衡表では10月5日午前安値からの反発で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いたがその後の伸び悩みで先行スパンへ潜り込んでいる。144円台を維持するうちは一段高余地ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、144円を割り込む場合は両スパンそろっての悪化となるためさらに一段安へ進みやすくなるとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は10月5日午前に30ポイントを割り込んだところから深夜への上昇で60ポイントに到達した。その後は50ポイントを割り込むところまで下げているため、55ポイント超えからは上昇再開とするが40ポイント割れからは一段安警戒として30ポイント前後への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、144.00円を下値支持線、144.85円を上値抵抗線とする。
(2)144円以上での推移中は上昇余地ありとし、144.85円超えからは145円台序盤(145.00円から145.30円)を試すとみる。145円台序盤は戻り売りにつかまりやすいとみるが、144円台を維持しての推移なら7日の日中も高値試しへ向かう可能性があるとみる。
(3)144円割れからは143.50円試しとし、143.50円割れ回避で144円台を回復するところからは上昇再開とするが、143.50円を割り込む場合は143円前後を試す流れとみる。また143.50円を割り込んだ後も144円以下での推移なら7日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

10/6(木)
休場、中国
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 -1.1%、予想 -0.7%)
15:00 (独) 8月 製造業新規受注 前年同月比 (7月 -13.6%、予想 -5.5%)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前月比 (7月 0.3%、予想 -0.4%)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 -0.9%、予想 -1.7%)
20:30 (欧) 欧州中銀(ECB)理事会議事要旨
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.3万件、予想 20.3万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 134.7万人、予想 134.5万人)
26:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、質疑応答
26:00 (米) クックFRB理事、講演

10/7(金)
休場、中国
06:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
07:30 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
08:30 (日) 8月 全世帯消費支出 前年同月比 (7月 3.4%、予想 6.7%)
14:00 (日) 8月 景気先行指数CI速報値 (7月 98.9)
15:00 (独) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 -0.3%、予想 -0.5%)
15:00 (独) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 -1.1%、予想 2.2%)
15:00 (独) 8月 輸入物価指数 前月比 (7月 1.4%、予想 2.2%)
15:00 (独) 8月 輸入物価指数 前年同月比 (7月 28.9%、予想 30.0%)

15:00 (独) 8月 小売売上高 前月比 (7月 1.9%、予想 -1.0%)
15:00 (独) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 -5.5%、予想 -4.1%)
21:30 (米) 9月 非農業部門就業者数 前月比 (8月 31.5万人、予想 25.0万人)
21:30 (米) 9月 失業率 (8月 3.7%、予想 3.7%)
21:30 (米) 9月 平均時給 前月比 (8月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 9月 平均時給 前年同月比 (8月 5.2%、予想 5.1%)
23:00 (米) 8月 卸売売上高 前月比 (7月 -1.4%、予想 0.5%)
23:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、質疑応答

注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る