トルコリラ円見通し インフレ高進止まず、4日連続で史上最安値更新(21/12/6)

トルコリラ円の12月3日は8.48リラから8.05円の取引レンジ、4日早朝の終値は8.23円で前日終値の8.22円からは0.17円の円高リラ安となった。

トルコリラ円見通し インフレ高進止まず、4日連続で史上最安値更新(21/12/6)

トルコリラ円見通し インフレ高進止まず、4日連続で史上最安値更新

〇トルコリラ円、12/3は8.48から8.05の取引レンジ、中銀市場介入で反騰するも失速、最安値更新
〇ドル/トルコリラ、12/3は13.89から13.29の取引レンジ、戻り高値切り下がり先安懸念
〇トルコ11月CPI前年比20%超え、同PPIは50%超え、インフレ収まらず政権支持率に影響も
〇中銀市場介入実施でリラ売り攻勢耐えられるか、大統領は12/4にも利下げ継続姿勢
〇12/16中銀金融政策会合での方向性、追加利下げか市場介入規模拡大か、安値試しつつ見極める展開
〇8.50以下での推移中は下向きとし、8.00割れからは7.50前後試しへ向かうとみる
〇8.50から8.75にかけては戻り売りにつかまりやすく、その後8.25を割り込むところから下げ再開とみる

【概況】

トルコリラ円の12月3日は8.48円から8.05円の取引レンジ、4日早朝の終値は8.23円で前日終値の8.22円からは0.17円の円高リラ安となった。
12月3日16時発表の11月のトルコ消費者物価上昇率は全体で21.31%へ上昇、コア指数でも10月の16.8%から17.6%へ上昇、生産者物価は54.62%へと高進した。インフレ進行を嫌気して売られていたが、トルコ中銀が市場介入を実施したと報じられたことで直前安値8.12円から8.48円へ一時的に反騰したものの早々に失速して8.05円まで史上最安値を更新、その後も8.20円を挟んで揉み合いのまま週を終えた。ベンダーによっては3日夜の反落時には夕刻の安値更新には至らず、3日の安値としては8.15円から8.08円等でまちまちだった。
11月30日からは4日連続での最安値更新となった。

【対ドルでも最安値を更新】

ドル/トルコリラの12月3日は13.89リラから13.29リラの取引レンジ、4日早朝終値は13.70リラで前日終値の13.68リラからは0.02リラのドル高リラ安となった。
12月3日は夕刻のトルコ消費者物価上昇率の発表、トルコ中銀の市場介入等で乱高下したが、12月1日につけた13.87リラを割り込んで取引時間中の史上最安値を更新、終値ベースでも史上最安値となった。
12月1日に史上最安値を更新してからは14円台には至らずに若干の底固さも見せているものの、徐々に戻り高値が切り下がっており、先安懸念を抱えたままとなっている。
12月3日夜は米雇用統計の発表があり、ユーロドルやドル円が11月末からの持ち合い範囲にとどまったものの、ポンドドルが失速、豪ドル米ドルやNZドル米ドルが2月25日以降の安値を更新するなど強弱が分かれたが、アジア通貨の下落が目立った。

【トルコのインフレ収まらず CPI前年比は20%を超える】

【トルコのインフレ収まらず CPI前年比は20%を超える】

12月3日16時に発表されたトルコの11月消費者物価上昇率は全体の前月比が3.51%となり10月の2.39%から加速して市場予想の3.0%を大幅に上回った。前年同月比は21.31%となり10月の19.89%を超えて市場予想の20.70%も上回った。中銀がインフレ指標として重視するコア指数上昇率も前月比で2.8%となり10月の1.8%から加速、前年同月比は17.6%で10月の16.8%を超えた。
世界規模でのサプライチェーン停滞による物資不足型のインフレが止まないことに加えて9月後半からのリラ暴落が続いていることによる通貨インフレも加わったことでインフレが収まらない状況にある。特に懸念されるのは生産者物価上昇率が前年比で50%を超えてきていることだ。生産者物価の上昇がピークアウトしないことには末端の小売、消費者物価も下がらないと思われる。

11月の消費者物価前年比の中では、ホテル・レストランが28.9%、食料品・飲料が27.11%。生活用品が25.14%、住宅が23.78%、運賃が22.74%と全体の平均値を上回っている。
物価上昇は庶民生活への打撃となり、エルドアン政権に対する国民の支持率にも影響を与えてくるものと思われる。2023年に大統領選挙を控えてエルドアン政権としてはインフレを抑えたいところだが、利下げを先行させることでのインフレ抑制という無理筋な政策は今のところ効果が見えない。原油価格が急落していることが先行きでの若干の改善につながる可能性もあるが、原油が下がったといってもまだ高水準にある。

【市場介入で耐えられるか、大統領は12月4日にも利下げ継続を繰り返す】

12月3日にトルコ中銀はドル売り・リラ買いの市場介入を実施した。12月1日に続いて二度目であり、中銀が介入を公言するのは2014年1月以来であり、2018年から2019年にかけて市場介入した時は国営銀行を使って1280億ドル規模と言われる間接的なドル売りリラ買いを行っている。
12月1日の市場介入規模は10億ドル前後と言われているが、外貨準備高のネットは10月末に326億ドルだったところから11月26日時点では246.7億ドルまで大幅に減っている。グロスでは11月17日時点の879.2億ドルから11月26日時点には870.2億ドルへ減少している。

12月1日の市場介入直後にエルドアン大統領は「新たな政策方針に後戻りはない」「選挙前には金利が大幅に低下する」と述べて利下げ継続姿勢を示したが、トルコ中銀のカブジェオール総裁は12月2日の投資家との電話会議において「12月に追加利下げを実施する余地は限られている。来年1月以降は積極的な金融緩和を休止する」旨の発言をしたと報道されている。
12月4日にエルドアン大統領は「物価と為替レートのすべての変動が安定するまでにそれほど長くはかからない」「レジェップ・タイップ・エルドアンは昨日低金利を言い、今日も低金利を言い、明日も低金利を言うだろう」「金利は金持ちをさらに豊かにし、貧しい人をさらに貧しくする病気であり、私は決して妥協しない」と演説している。
12月16日の次回金融政策決定会合も迫ってくる。連日の史上最安値更新により投資家のリラ放れ、あるいは先安感を踏まえてのリラ売り攻勢に市場介入を繰り返して耐えるのか今週も試されると思われる。

【直前の天井に対して凡そ半値への下落】

【直前の天井に対して凡そ半値への下落】

2018年8月への通貨危機的なリラ暴落においては、2017年9月15日高値32.42円から2018年8月13日安値15.25円まで53%の下落率であった。2018年11月29日高値22.08円から2020年11月6日安値12.03円までの下落率は凡そ46%であった。最近における二度の通貨危機的なリラ安は直前のピーク値に対して凡そ半値まで下げている。いずれも利上げに踏み切ったことで通貨安の危機的状況から持ち直している。このことを現状に当てはめると2021年2月16日高値15.26円の半値となる7.63円を前後する水準まで下げても不思議ないし、下落率53%なら7.17円と計測されて7円台を維持できるかどうかを試す可能性も考えられる。既に10円の大台を割り込んだことで底の見えない状況とすれば7円台で踏み止まれる積極的な根拠には欠け、リラの反騰入りにはトルコ中銀及びエルドアン大統領による利下げ打ち止め宣言等が必要と思われるが、今のところ期待は薄い。

12月16日の次回中銀金融政策で追加利下げがあるのかどうか、その後に総裁が言うような利下げ休止に入るのか、市場介入規模が拡大するのか、あるいは通貨取引規制等による強圧的な政策でリラの値動きを抑えにかかるのか、しばらくは安値を試しつつ見極めてゆく展開と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、8.00円を下値支持線、8.75円を上値抵抗線とみておく。
(2)8.50円以下での推移中は下向きとし、8.00円割れからは7.50円前後試しへ向かうとみる。7.50円以下は反騰注意とするが、下げ足が速まる場合は7円台序盤(7.30円から7.00円)を目指すとみる。
(3)8.50円から8.75円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみてその後に8.25円を割り込むところからは下げ再開とみる。

【当面の主な予定】

12月09日
 20;00 週次 外貨準備高(グロス) 12/3時点 (11/26時点 870.2億ドル)
12月10日
 16:00 10月 失業率 (9月 11.5%)
12月12日
 16:00 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 8.9%)
 16:00 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -1.5%)
 16:00 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 15.9%)
 16:00 10月 小売売上高 前月比 (9月 1.2%)
 16:00 10月 経常収支 (9月 16.52億ドル
12月15日
 17:00 11月 財政収支 (10月 -174.1億リラ)
12月16日
 20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合 政策金利 (現行 15.00%)


注:ポイント要約は編集部

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