利下げ継続姿勢にオミクロン・ショックも重なり終値ベースで最安値更新
〇トルコリラ円、11/29は9.22から8.77の取引レンジ、終値ベースでの最安値更新
〇ドル/トルコリラ、11/29は12.90から12.32の取引レンジ、オミクロンショックも加わり続落
〇昨日発表の経済信頼感は2か月連続で悪化、貿易収支は赤字幅が3か月連続で縮小
〇トルコ中銀、12月会合でも連続利下げ強行か、12/3発表の11月トルコ物価指数に注目
〇9.20以下での推移中は下向きとし、8.70割れからは8.40前後への下落を想定する
〇9.20を超える場合は9.50手前を試すとみるが、9.30以上は反落警戒圏とみる
【概況】
トルコリラ円の11月29日は9.22円から8.77円の取引レンジ、30日早朝の終値は8.84円で先週末26日終値の9.11円からは0.27円の円高リラ安となった。11月26日に前日比で0.54円の円高リラ安となったところから週をまたいで2日連続の日足陰線で下落した。
トルコ中銀による11月18日の3会合連続利下げを挟んで高インフレ下での利下げ強行を嫌気してトルコリラは対円、対ドルでの史上最安値更新を連日続けてきた。11月9日から11月23日まで11日間の続落で、11月20日に10月25日に付けたそれまでの史上最安値11.50円を割り込んでからは10日連続での史上最安値更新だった。
11月23日に8.47円まで最安値を更新したところから24日高値9.95円までいったん買い戻されたものの23日の日足大陰線の範囲にとどまり、11月26日には金融市場全般が感染力の強い新たな変異種オミクロン株発生のショックからリスク回避へと動き、新興国通貨への売り圧力も高まったことでトルコリラも下落し、週明けも流れは変わらず、終値ベースでは11月23日終値の8.97円を割り込んで最安値を更新した。
【対ドルでもリラ安再開の動き】
ドル/トルコリラの11月29日は12.90リラから12.32リラの取引レンジ、30日早朝の終値は12.80リラで先週末終値の12.42リラからは0.38リラのドル高リラ安となった。11月23日に史上最安値を13.49リラまで切り下げたところから24日に11.51リラへいったん反発したものの再びリラ売り攻勢となって26日には前日比で0.52リラのドル高リラ安となったが、週明けも利下げ継続姿勢にオミクロンショックも加わったことで続落となった。
取引時間中の史上最安値は11月23日の13.49リラだが、終値ベースでは23日の12.82リラが最安値であり、30日早朝の終値でこれに迫っており終値ベースでの最安値更新も射程に入ってきている印象だ。
【貿易赤字は改善するも経済信頼感は2か月連続で悪化】
11月29日に発表されたトルコの11月経済信頼感指数は99.3となり10月の101.4から低下した。5月の92.6から改善に入って9月には102.4まで上昇してきたが、高インフレとリラ暴落を背景に2か月連続での低下となった。高インフレにオミクロンショックも重なるため年末にかけてのセンチメントはさらに悪化しやすい状況と思われる。
10月のトルコ貿易収支は14.4億ドルの赤字となり、赤字幅としては9月の25.9億ドルから減少した。今年7月に43.2億ドルの赤字となったところからは3か月連続で縮小している。
10月の輸出は前月比では2.2%増で9月の0.0%から増加、前年同月比では24.3%増で9月の30%増からはやや低下した。一方で輸入は前月比1.3%増で9月の3.7%減から増加、前年同月比では15.9%増で9月の11.8%増から伸びた。リラ安により輸出には有利な情勢にあるが、輸入にはマイナスであり、構造的に貿易赤字状態にあるトルコにとってはリラ安による輸出拡大よりも輸入物価上昇による内需への圧迫感が懸念される状況と思われる。
【今週末のトルコ物価指数に注目】
次回のトルコ中銀金融政策決定会合は12月16日に予定されているが、11月18日の3会合連続での利下げ後にエルドアン大統領は高金利との闘い、経済戦争に勝利するとして利下げ継続姿勢を強調した。また11月26日にはネバティ財務副大臣が「2013年から低金利政策を実施しようとするたびに我々は強い反対に直面した。今回は全力で実行に取り組む」と述べており、利下げによる通貨暴落は投機的な攻撃であり今回はそれに負けないという姿勢を示したことで、12月会合でも連続利下げを強行する意欲があるということを市場に印象付けた。
連続利下げが可能になるのかどうか、重要な目安としては今週末の12月3日に発表のある11月のトルコ消費者物価上昇率がどの程度になるのかということに注目が集まる。10月の消費者物価上昇率は全体の前年比が19.89%だったが11月は20.7%までさらに上昇すると予想されている。コア指数の前年比については予想が出ていないが10月の16.8%から低下ならトルコ中銀は利下げしやすく、再び17%を超えてくると利下げを躊躇する可能性もある。
トルコにとってはオミクロン・ショックにより原油相場が急落したことは高インフレへの一服の清涼剤となるところだが、世界規模で渡航制限が強化されて経済活動の規制も強まるようだとインフレの根本原因であるサプライチェーンの混乱は続いて物資不足的なインフレが継続しかねない状況にある。またオミクロン・ショックが新興国通貨売りを一段と強める場合には利下げ強行により既に暴落商状に陥っているトルコリラには追い討ちの売り攻勢が仕掛けられる可能性もあると懸念される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月18日のトルコ中銀による利下げ決定からの下落が11月23日夜安値でいったん下げ止まりに入って24日夜高値まで戻したものの、その後は再び下落基調が続いている。11月26日午前時点では11月24夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして安値形成期を26日夜から30日夜にかけての間と想定したが、まだ明確な反騰がみられないため30日夜にかけてはもう一段安へ進む可能性があるところとみる。強気転換は9.20円超えからとし、その場合は30日の日中から12月1日夜にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では11月24日夜高値からの下落で遅行スパンが悪化、26日深夜には先行スパンから転落した。その後も両スパン揃っての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。強気転換は先行スパン突破からとしその際は遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は11月26日夜以降の安値切り下がりに対して指数のボトムが30ポイント割れを切り返して横這い推移のため強気逆行型が見られる。このため50ポイント以下での推移中はまだ一段安余地ありとするが、50ポイント超えからはいったん戻しに入るとみて60ポイント台を目指す流れとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.70円を下値支持線、9.20円を上値抵抗線とする。
(2)9.20円以下での推移中は下向きとし、8.70円割れからは8.40円前後への下落を想定する。8.40円以下は反発注意とするが、下げ足が速まる場合は8.20円前後へ下値目途を引き下げる。また9.00円以下での推移なら12月1日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)9.00円から9.20円にかけては戻り売りにつかまりやすいとみる。9.20円を超える場合は9.50円手前を試すとみるが9.30円以上は反落警戒圏とみる。
【当面の主な予定】
11月30日
16:00 7-9月期 GDP前期比 (4-6月 0.9%)
16:00 7-9月期 GDP前年同期比 (4-6月 21.7%、予想 7.5%)
12月01日
16:00 11月 イスタンブール製造業PMI (10月 51.2)
12月02日
20:00 週次 外貨準備高・グロス 11/26時点 (11/19時点 879.2億ドル)
12月03日
16:00 11月 消費者物価指数 前月比 (10月 2.39%、予想 3.0%)
16:00 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 19.89%、予想 20.70%)
16:00 11月 消費者物価コア指数 前月比 (10月 1.8%)
16:00 11月 消費者物価コア指数 前年同月比 (10月 16.8%)
16:00 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 5.24%)
16:00 11月 生産者物価指数 前年同月比 (10月 46.31%)
12月16日
20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合 政策金利 (現行 15.00%)
注:ポイント要約は編集部
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