ドル円見通し 米CPI発表から下落、持ち合い下限を試すも下放れは回避(21/9/15)

ドル円は9月14日夜の米消費者物価上昇率発表前に110.15円へ上昇して13日夕安値と並んだが、CPI発表直後のドル全面安により15日未明には109.51円まで急落した。

ドル円見通し 米CPI発表から下落、持ち合い下限を試すも下放れは回避(21/9/15)

米CPI発表から下落、持ち合い下限を試すも下放れは回避

〇ドル円、CPI発表直後のドル全面安により15日未明に109.51まで急落
〇戻り高値とその後の安値も切り下げ、持ち合いが右肩下がりへ流れ変えつつある印象
〇米消費者物価上昇率は伸びが鈍化するも、テーパリング着手決定の可能性も残る
〇ドル全面高基調が続きつつクロス円及びドル円は下落基調で推移する可能性に注意
〇15日未明安値109.51割れからは109円台序盤(109.20から109.00)を試すとみる
〇109.90超えからは持ち合いの範囲内での戻りを試す流れとみて110.20台への上昇を想定

【概況】

ドル円は9月14日夜の米消費者物価上昇率発表前に110.15円へ上昇して13日夕高値と並んだが、CPI発表直後のドル全面安により15日未明には109.51円まで急落した。109.50円割れを回避してその後はやや持ち直しているが、不安定な相場付きに変化した状況。
8月19日高値110.22円から8月24日夜安値109.40円まで下げた後は8月27日夜高値110.26円、9月1日夕高値110.41円、9月8日午後高値110.44円と戻り高値を切り上げてきたものの、9月13日夕と14日夜の110.15円による小ダブルトップでは戻り高値切り下がりに終わり、9月15日未明安値では9月10日未明安値を若干割り込んできた。8月24日夜安値109.40円を割り込まないうちは109.40円台から110.40円台までの凡そ1円幅での持ち合いの範囲内ではあるが、戻り高値が切り下がりに入りその後の安値も切り下げたことにより、やや右肩上がりで推移してきた持ち合いが右肩下がりへと流れを変えつつある印象だ。

【米消費者物価上昇率は伸びが鈍化するもドル安反応は一時的】

米労働省が9月14日に発表した8月の消費者物価指数上昇率は全体の前月比が0.3%となり7月の0.5%から低下、市場予想の0.4%を下回った。前年同月比は5.3%となり凡そ13年ぶりの高水準だった7月の5.4%から若干低下、市場予想の5.3%と一致した。コア指数の上昇率は前月比で0.1%となり7月の0.3%から低下して市場予想の0.3%を下回った。前年同月比は4.0%で7月の4.3%及び市場予想の4.2%を下回った。
物価上昇の上ブレに鈍化傾向がみられたことで米連銀に対するテーパリングを急がせる要因にはならないとみて発表からはいったんドル全面安の反応となった。しかしユーロドルは発表直後の上昇が長続きせずに失速して13日夜からの戻り幅の半値を削り、ポンドドルも1.390ドル台へ一段高したところから急落して1.380ドルぎりぎりのところまで下げた。豪ドル米ドルは一時的な反発にとどまって15日未明には9月3日以降の安値を更新している。

米連銀は物価上昇の上ブレについては年後半には落ち着くだろうという見方を繰り返し強調してきたが、やや上ブレ度合いが強まっていることへの警戒感を示して雇用回復状況を見ながらテーパリング(量的金融緩和による資産購入規模の縮小)開始を検討しており年内には着手する意向だ。9月21-22日のFOMCにおいてはテーパリング着手への宣言は見送られるとの見方が優勢ではあるが、やや鈍化したといっても高水準にとどまっている物価上昇を踏まえてテーパリング着手を決定する可能性も捨てきれないところだ。

【米国株安によるリスク回避的円高にも注意】

米10年債利回りは前日比0.04%低下の1.29%、30年債利回りは0.05%低下の1.86%、2年債利回りは変わらずの0.21%だった。
NYダウは先週を5日間続落としたところから週明けの13日は6日ぶりに反発したが14日は前日比292.06ドル安と反落、前日の261.91ドル高を帳消しとして8月16日の史上最高値以降の安値を切り下げた。ナスダック総合指数は前日比67.82ポイント安となり9月8日からは5日間の続落となっている。
物価上昇率が鈍ったことも景気回復の勢いが鈍化していることを示すものとし、デルタ株感染拡大による影響とFOMCの今後の金融政策スタンスを見極めたいとして利益確保の売りが優先されている印象だ。
ドル円にとっては株安がさらに続くようだとリスク回避的な円高へ進みやすくなる。また9月3日の米雇用統計通過からのドル高基調も一服となれば、クロス円全般の円高感も強まりかねない。ドルストレートでのドル高を反映してドル円が上昇感を強めてゆく展開よりも、ドルストレートではドル全面高基調が続きつつクロス円及びドル円は下落基調で推移するような組み合わせとなる可能性に注意したいところだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、9月3日深夜安値から4日目となる9月10日未明安値で直近のサイクルボトムを付けて戻していたが、13日夕高値と15日夜高値が同値のダブルトップとなり弱気サイクル入りしている。10日未明安値から3日目となる15日未明安値ですでにボトムを付けて反騰入りする可能性もあるところのため、109.90円以下での推移中は15日の日中から17日未明にかけての間への一段安余地ありとし、109.90円超えからは強気サイクル入りとして17日夜から21日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では14日夜の急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とし、先行スパンを上抜き返すところからは反騰入りとして遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は15日未明への下落で20ポイント台へ低下した。その後も40ポイント以下での推移にとどまっているのでまだ一段安余地ありとするが、相場が安値を更新する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる場合は強気転換注意とし、50ポイント超えからはいったん戻しに入る流れとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月15日未明安値109.51円を下値支持線、109.90円を上値抵抗線とする。
(2)109.90円を超えないうちは下向きとし、15日未明安値割れからは109円台序盤(109.20円から109.00円)を試すとみる。109円以下は反騰注意とするが、109.60円以下での推移が続く場合は16日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109.90円超えからは持ち合いの範囲内での戻りを試す流れとみて110.20円台への上昇を想定する。110.15円以上は反落注意とするが、109.90円以上での推移なら16日の日中も高値試しへ進みやすいとみる。

【当面の主な予定】

9/15(水)
09:30 (豪) 9月 ウエストパック消費者信頼感指数 (8月 104.1)
11:00 (中) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 8.5%、予想 7.0%)
11:00 (中) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 6.4%、予想 5.8%)
13:30 (日) 7月 第三次産業活動指数 前月比 (6月 2.3%、予想 0.3%)
15:00 (英) 8月 消費者物価指数 前月比 (7月 0.0%、予想 0.5%)
15:00 (英) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 2.0%、予想 2.9%)
15:00 (英) 8月 消費者物価コア指数 前年同月比 (7月 1.8%、予想 2.9%)

18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -0.3%、予想 0.6%)
18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 9.7%、予想 6.3%)
21:30 (米) 9月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (8月 18.3、予想 18.0)
21:30 (米) 8月 輸入物価指数 前月比 (7月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 輸出物価指数 前月比 (7月 1.3%、予想 0.4%)
22:15 (米) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 0.9%、予想 0.5%)
22:15 (米) 8月 設備稼働率 (7月 76.1%、予想 76.4%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:00 (欧) レーンECB理事、講演

9/16(木)
休場 メキシコ(独立記念日)
07:45 (NZ) 4-6月期 GDP 前期比 (1-3月 1.6%、予想 1.2%)
07:45 (NZ) 4-6月期 GDP 前年同期比 (1-3月 2.4%、予想 16.1%)
08:50 (日) 8月 貿易収支・通関・季調前 (7月 4410億円、予想 -625億円)
08:50 (日) 8月 貿易収支・通関・季調済 (7月 527億円、予想 2456億円)
10:30 (豪) 8月 新規雇用者数・全体 (7月 0.22万人、予想 -8.00万人)
10:30 (豪) 8月 新規雇用者数・フルタイム (7月 -0.42万人)
10:30 (豪) 8月 新規雇用者数・パートタイム (7月 0.64万人)
10:30 (豪) 8月 失業率 (7月 4.6%、予想 4.9%)

18:00 (欧) 7月 貿易収支・季調済 (6月 124億ユーロ、予想 149億ユーロ)
18:00 (欧) 7月 貿易収支・季調前 (6月 181億ユーロ)
21:30 (米) 8月 小売売上高 前月比 (7月 -1.1%、予想 -0.8%)
21:30 (米) 8月 小売売上高・除自動車 前月比 (7月 -0.4%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 9月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (8月 19.4、予想 19.0)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 31.0万件、予想 32.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 278.3万人)
23:00 (米) 7月 企業在庫 前月比 (6月 0.8%、予想 0.5%)
29:00 (米) 7月 対米証券投資 (6月 315億ドル)
29:00 (米) 7月 対米証券投資・短期債除く (6月 1109億ドル)

※ポイント要約は編集部

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