トルコリラ円見通し 中銀総裁解任による暴落から回復せず、終値ベースでの安値更新続く(21/3/29)

トルコリラ円は、24日と25日は下げ渋ったものの26日終値は13.46円まで一段安となっており、暴落商状一服というよりもじわじわと切り下がってきている印象だ。

トルコリラ円見通し 中銀総裁解任による暴落から回復せず、終値ベースでの安値更新続く(21/3/29)

中銀総裁解任による暴落から回復せず、終値ベースでの安値更新続く

〇トルコリラ円26日終値は13.46まで一段安、じわじわと切り下がる
〇対ドルでも22日7.79から23日7.93、25日7.94、26日は8.13と安値更新
〇イスタンブール100株価指数は25日に1.38%安、26日に0.88%安と下げる
〇40週サイクルの上昇期が終了して下落期に入った印象
〇次の底打ち期、昨年11月底から8か月目なら今年7月、11か月目なら今年10月
〇13.60から13.79までのゾーンは戻り売りにつかまりやすい
〇3/22安値13.33割れからは13.00前後を目指すとみる

【概況】

トルコリラ円はトルコ中銀総裁解任報道をきっかけとして3月19日終値15.07円から3月22日安値13.33円へ暴落した。前日比で10%を超える下落であり、昨年11月6日安値12.03円から今年2月16日高値15.26円までの上昇幅3.23円に対し、2月16日高値から3月22日安値までの下げ幅は1.93円となり11月以降の上昇分の凡そ6割を22日朝の取引開始時に一挙に解消した。
3月22日安値のあとは取引時間中の安値更新を回避しているものの、日足の終値ベースでは3月22日の13.94円から23日の13.65円へ続落し、24日と25日は下げ渋ったものの26日終値は13.46円まで一段安となっており、暴落商状一服というよりもじわじわと切り下がってきている印象だ。

対ドルでのトルコリラは3月20日早朝高値7.18リラから3月22日午前安値8.17リラへ暴落した後は新たな取引時間中の安値更新を回避しているが、日足の終値ベースでは3月22日の7.79リラから23日に7.93リラ、25日に7.94リラ、26日に8.13リラと安値を更新している。
イスタンブール100株価指数は3月22日に前日比9.79%安の暴落となり3月17日から23日まで5日続落したところから3月24日は前日比2.64%高と一時的に買い戻されたが、25日に1.38%安、26日に0.88%安と下げており、リラ暴落と共にトルコ金融政策への不信感が株安を招いている。

【市場の不信任はしばらく続く】

エルドアン大統領が3月19日付けでトルコ中銀のアーバル総裁を解任したと20日付官報に掲載された。トルコ中銀は3月18日の金融政策会合で主要政策金利を2.0%引き上げて19.0%として市場予想の18%を上回る利上げを決定したばかりだったが、この利上げがエルドアン大統領に解任の決断をさせたと市場は受け止めた。
後任の総裁には与党・公正発展党(AKP)の元議員であるカブジュオール氏が就任した。新総裁は21日に声明を発表し、トルコ中銀はインフレ率を恒久的に引き下げることを重視すると表明したが、同氏は今年2月時点でメディアへの寄稿で「高金利は間接的にインフレ高進をもたらす」と主張しており、利上げを罪悪視するエルドアン大統領と同様の金融政策思想を表明していると報じられている。

トルコリラ円は2018年1月5日に30.32円だったところからは同年8月に15.25円まで暴落して通貨危機的な状況に陥っために2018年8月にはそれまでの16.5%から17.75%へ、同年9月には24.0%へと大幅な利上げを行った。この利上げによりトルコリラ円は2018年11月には22.09円まで大幅上昇したのだが、エルドアン大統領は「政策金利と物価上昇率の一桁を目指す」との方針を表明したためにトルコリラ円は再び下落に転じ、2019年7月に肝入りで就任したウイサル総裁が利下げを継続したことで2020年5月には8.25%まで政策金利が引き下がり、トルコリラ円は2020年5月7日には14.64円まで下げて2018年8月暴落時の水準を割り込んだ。

エルドアン大統領の期待とは裏腹にトルコの物価上昇は続き、消費者物価上昇率が政策金利を上回る実質マイナス金利状態に陥り、通貨防衛のための市場介入により外貨準備高が大幅に低下したことでトルコリラは2020年11月に12.03円まで史上最安値を更新し続けた。
エルドアン大統領は苦渋の選択として2020年11月にアーバル総裁を起用し、同総裁は11月、12月と連続利上げし、3月18日に三度目の利上げを行ったのだが、これがエルドアン大統領にとっては耐え難い利上げとして総裁更迭の決断に至ったのだろうと思われる。
就任早々にトルコリラ暴落に見舞われたカブジオール総裁としては早々に利下げするわけにもいかない状況でのスタートとなったが、かといって利上げするわけにもいかず、また市場の信認をさらに失墜させるような取引規制などを行うのも難しい状況と思われる。アーバル総裁に対する信任が裏切られた海外投資家及びトルコ国内投資家も当面は不信感を前提としたスタンスを取り続けると思われる。

【40週サイクルによる上昇一巡、日足のダブル天井】

トルコリラ円は週足レベルにおいて概ね40週前後の周期で底打ちを繰り返してきたが、2020年11月6日安値でこのサイクルの直近の底を付けて反騰期に入った。2018年8月13日底以降におけるこのサイクルの底打ちは2019年5月9日安値、2020年1月8日安値、そこから44週目の2020年11月6日底と推移してきた。
2018年8月13日底からの反騰が2018年11月29日までの16週で上昇一巡となって下落に転じたため、2020年11月6日底からの上昇についても16週というのが壁として注目された。今年2月16日高値がちょうど16週目となり、3月8日安値へと大幅下落したために今回も16週の壁を超えられずに下落期に入った可能性が懸念されたが、3月8日から3月19日へと反騰して2月16日高値へ迫った時点では16週の壁を超える可能性が出ていたところだった。

しかし中銀総裁解任により3月8日安値を割り込む暴落となったため、2月16日と3月19日の両高をダブル天井として下落期入りとなったため、40週サイクルの上昇期が終了して下落期に入ったという印象が強まった。2020年11月6日安値を割り込まないうちはチャート上では上昇再開の可能性が残るが、利上げを悪として中銀総裁を解任した経緯を踏まえれば11月6日安値を割り込んで40週サイクルにおける次の底打ち期へ向けての下落基調が続く可能性が高まったと考えるべきところだろう。底打ち間隔が8か月から11か月の範囲で推移してきたため、昨年11月底から8か月目なら今年7月、11か月目なら今年10月を目指す可能性が考えられる。

【日足の4か月周期、ダブル天井からの底割れ、当面のポイント】

【日足の4か月周期、ダブル天井からの底割れ、当面のポイント】

日足チャートにおいては11月6日安値から4か月目の3月8日安値で直近のサイクルボトムを付けていったん反騰したが、2月16日高値と3月19日高値がダブルトップ型となり3月8日安値を割り込んだため、新たな弱気サイクル入りしていると思われる。このサイクルにおける次の安値形成期は6月後半から7月序盤にかけての間と想定されるので中勢レベルではしばらく戻り売り有利な展開が続きやすいとみる。
暴落直後のためまだ上下へのブレが大きくなる可能性もあるが、ダブルトップの中間点にある3月8日安値13.97円が上値抵抗となりやすく、下回るうちはダブルトップ間の値幅の倍返しとなる13円弱の水準へ向かいやすいとみる。

2020年5月底から同年6月へ反騰したところから下落再開に入った状況において、トルコ金融当局は為替取引規制にのりだしたことで日々の値動きが極端に小さく制限される状況が続いた経緯もある。その試みは結局失敗して取引規制の効果が崩れた段階からトルコリラ円の急落が再開している。今回も政策金利を動かせない状況下で規制に乗り出す可能性はあるだろうが、それを選択すれば市場の信認はさらに低下することになる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、13.00円を下値支持線、3月26日高値深夜13.79円を上値抵抗線とする。
(2)13.60円から13.79円までのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)13.60円以下での推移中は下向きとし、3月22日安値13.33円割れからは13.00円前後を目指すとみる。13.00円前後は買い戻しも入る可能性があるが、13.00円割れをスルーで続落して行く場合は12.50円前後へ下値目途を引き下げる。

【当面の主な予定】

3月31日
 16:00 2月 貿易収支 (1月 -30.3億ドル、予想 -34.00億ドル) 
16:00 3月 経済信頼感指数 (2月 95.8、予想 98.0)
4月1日
 16:00 3月 イスタンブール製造業PMI(2月 51.7、予想 52.3)
 16:00 週次 外貨準備高・グロス 3/26時点 (3/19時点 538.9億ドル)
 16:00 週次 外貨準備高・ネット 3/26時点 (3/19時点 136.8億ドル)
4月5日
 16:00 3月 消費者物価上昇率 前年比 (2月 15.61%)
 16:00 3月 消費者物価上昇率 前月比 (2月 0.91%)
 16:00 3月 生産者物価上昇率 前年比 (2月 27.09%)
 16:00 3月 生産者物価上昇率 前月比 (2月 1.22%)

4月15日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合

注:ポイント要約は編集部

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