トルコリラ円見通し 史上最安値更新続く、28日夜には12.49円まで安値を切り下げる(10/29)

トルコリラ円の歴史的暴落が続いている。28日夜には12.49円まで大幅続落となった。

トルコリラ円見通し 史上最安値更新続く、28日夜には12.49円まで安値を切り下げる(10/29)

史上最安値更新続く、28日夜には12.49円まで安値を切り下げる

〇トルコリラ円、28日夜に12.49まで大幅続落、歴史的暴落続く
〇対ドルでも28日夜に8.31リラまで最安値更新
〇トルコ、フランスとの関係がさらに悪化、ナゴルノ紛争も長期化し地政学リスクは悪化の一途
〇12.66以下での推移中は一段安警戒、12.49割れから12.30台、12.20台を段階的に試す可能性
〇12.66超えからいったん戻りを試し、12.80前後への上昇を想定

【概況】

トルコリラ円の歴史的暴落が続いている。28日夜には12.49円まで大幅続落となった。
10月22日にトルコ中銀が市場の利上げ期待を裏切って現状維持としたことから直前の13.40円台から13.20円を割り込む急落で史上最安値を更新し、その後も連日にわたる最安値更新を続けてきた。27日夜にはトルコ財務省のリラ安容認的な発言もあって12.66円まで急落し、いったん戻したものの早々にジリ安基調に入り、28日は欧米株の大幅下落で為替市場全般がリスク回避的な動きをとり、ドルストレートでのドル全面高、クロス円での円全面高という様相のなかで夕刻には27日夜安値を割り込んだ。
28日夜安値から深夜には12.66円までいったん戻したが、特段のリラ買い材料は見られず、連日の大幅下落に対する売り方の利益確定のための買い戻し主導で戻した印象だが、29日朝には12.50円まで再び下げており、最安値更新への余裕も乏しい状況だ。

【対ドルでも大幅に最安値を更新】

対ドルでのトルコリラは10月28日夜に8.31リラまで最安値を更新した。深夜にかけてはいったん8.18リラまで戻したものの、その後は8.20リラが抵抗となり29日朝には8.28リラへと下落して最安値更新への余裕が乏しくなっている。10月22日から日足は28日まで5日連続の陰線で下落しており、今週は現時点での前週比が既に4%を超える下落率となっている。

10月28日、トルコ中銀はインフレレポート(四半期インフレ報告書)を発表し、年末時点のインフレ見通しを従来予想の8.9%から12.1%へ引き上げた。ウイサル総裁は「トルコ中銀はインフレが改善するまで金融政策の引き締めを維持する方針」とし「リラ下落は物価安定へのリスクだ」としたが、利上げを見送った後だけに市場に対してはインフレと戦う姿勢は評価されず、却ってリラ安を助長した。前日もトルコ財務相が資本規制へのネガティブ発言を行ってリラ安容認とも受け取れる楽観的な態度を示したことがリラ安を助長した。

10月28日に発表された10月の経済信頼感指数は92.8となり9月の88.5から改善して市場予想の85.1を上回った。前日発表のトルコ製造業景況感も108.1となり9月の105.3から改善して市場予想の102を上回り、設備稼働率も9月の74.6%から10月は75.4%へ改善した。国内製造業関連等は持ち直しの動きを続けているが、肝心なのは観光収入や輸出の改善であり、経常収支悪化と外貨準備高の減少傾向が続くうちは欧米投資家によるリラ売りが続きやすい状況と思われる。

【フランスとの関係さらに悪化、地政学的リスクはさらに拡大】

フランス人教師殺害事件に関してマクロン仏大統領が原因となった風刺画を擁護する発言を行ったことでトルコやイスラム諸国によるフランス批判、仏製品不買運動や抗議デモが発生しているが、27日にはフランスの風刺週刊紙シャルリエブドがトルコのエルドアン大統領の風刺画をインターネット上に公開した。これに対してトルコ政府は猛反発しており、トルコ検察が大統領侮辱罪での捜査を開始したと報じられている。フランスとトルコはナゴルノ紛争でフランスが停戦調停側・トルコがアゼルバイジャン支持で対立、東地中海ガス田開発ではフランスがギリシャ擁護でトルコと対立して制裁をちらつかせ、ロシア製ミサイル導入問題でもNATO内での不適切行動としてフランスはトルコを批判するなど、あらゆる問題で対立している。

ナゴルノ紛争も長期化しており、米国が仲介した三度目の停戦合意も早々に破られ、28日も戦闘が続いている。28日にはエルドアン大統領が「シリア北西部イドリブ県で26日にあった空爆はロシアの攻撃」と断定、「ロシアが恒久平和を望んでいない」と非難し、トルコが支援する反体制派はアサド政権側に大規模な報復を開始するとした。3月からのイドリブ県での停戦も崩壊し始めた。トルコを巡る地政学的リスクは悪化の一途だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月22日の中銀利上げ見送りによる急落後も安値更新が続いているが、22日夜安値から4日目となる28日夜安値で目先の底を付けたと仮定する。しかし早々に底割れから次の弱気サイクルに入る可能性が高い印象だ。このため28日夜安値割れ回避のうちは29日夜にかけては上昇余地ありとみるが、底割れからは次の安値形成期となる11月2日から4日にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では遅行スパンの悪化と先行スパンから転落した状況が続いている。本格的な反騰入りには先行スパンを上抜く必要があり、先行スパンからの転落が続くうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後の悪化から下げ再開へ進むと考える。

60分足の相対力指数は28日夜に10ポイントを割り込んでから30ポイント前後へ戻しているが、50ポイントを回復するような勢いに欠けるため、40ポイント以下での推移中は一段安警戒とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、28日夜安値12.49円を下値支持線、28日夜反発時の高値12.66円を上値抵抗線とする。
(2)12.66円以下での推移中は一段安警戒とし、12.49円割れからは12.30円台、12.20円台を段階的に試す可能性があるとみる。28日夜高値を下回っての推移が続くうちは30日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)12.66円超えからはいったん戻りを試しに入るとみて12.80円前後への上昇を想定するが、短期的な買い戻しで急反発しても材料が伴わなければ戻りは短命に終わるとみて、その後の12.50円割れからは下げ再開とみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

10月30日
 16:00 9月貿易収支 (8月 -62.8億ドル、予想 -43.0億ドル)
 16:00 7-9月期観光収入 (4-6月 41.0億ドル、予想 34.0億ドル)
 17:00 9月観光客数 前年比 (8月 -71.23%、予想 -48.8%)
11月2日
 16:00 10月イスタンブール製造業景況指数 (9月 52.8)
11月3日
 16:00 10月消費者物価上昇率 前年比 (9月 11.75%)
 16:00 10月消費者物価上昇率 前月比 (9月 0.97%)
 16:00 10月生産者物価上昇率 前年比 (9月 14.33%)
 16:00 10月消費者物価上昇率 前月比 (9月 2.65%)

注:ポイント要約は編集部

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