トルコリラ円見通し 史上最安値からの反騰、4か月サイクルの反発期(20/5/12)

5月8日夜には14.68円まで再び失速したが、その後の反騰で15円の壁を超えてからは続伸に入り、12日朝も15.20円台へ上昇している。

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トルコリラ円見通し 史上最安値からの反騰、4か月サイクルの反発期(20/5/12)

トルコリラ円見通し 史上最安値からの反騰、4か月サイクルの反発期

〇トルコリラは暴落商状一服
〇トルコリラ円は15円台を維持
〇トルコ国内の感染者増加数はピークを打った可能性
〇6月には国外からの観光客受け入れ再開も
〇トルコリラ円は4か月サイクルの反騰期入りの可能性も
〇当初の支持線15.10、抵抗線15.25

【概況】

トルコリラ円は5月7日午後に14.61円へ続落して史上最安値を更新したが、翌日からは3日連続の日足陽線で反発している。
5月7日への安値更新はトルコリラが対ドルで7.27リラを付けて2018年8月のトルコ通貨危機時の安値7.23リラを割り込んだことがきっかけだったが、トルコリラの対ドルでの下落もその後は一服している。
トルコリラ円はすでに2018年8月の15.52円を4月15日に割り込んで一足早く史上最安値を更新していたが、対円及び対ドルでのトルコリラ安の加速は、(1)新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動停滞の世界的な広がりによる新興国通貨全般への売り圧力、(2)トルコ自身の感染拡大と経済活動停滞、(3)トルコ中銀による8会合連続での利下げ断行で政策金利が消費者物価上昇率を下回る実質的なマイナス金利状態が発生したこと、(4)外貨準備高の減少による通貨防衛力への懸念が背景といえる。

しかし、ひとまず安値を出し切ったことで暴落商状は一服している。新興国通貨売りの勢いは継続し、トルコ経済への先行き不安等は継続しており、5月21日のトルコ中銀金融政策決定会合で9会合連続の利下げが行われる場合は再びリラ売り圧力が増す可能性が懸念されるものの、トルコ国内の感染爆発が峠を越えて復興への兆しが見えてきていることも当面の支えとなりつつあるようだ。
トルコリラ円は5月7日午後安値14.61円の後、15円手前まで何度か戻しつつ5月8日夜には14.68円まで再び失速したが、その後の反騰で15円の壁を超えてからは続伸に入り、12日朝も15.20円台へ上昇している。

【トルコ国内の感染者は峠を越えたか】

5月11日時点での世界の感染者数は425万人を超え、死者は28.7万人を超えた。欧米での感染爆発は峠を越えた印象もあるが新興国での感染増加ペースは緩んでいない。
トルコの感染者数は5月11日時点で前日比1114人増の13万9771人、死者は55人増の3841人となった。11日の検査数は3万2722人に行われている。退院は3089人で回復者の累計は9万5780人となった。感染者増加数は4月11日の5138人増をピークに減少傾向が顕著となってきている。
エルドアン大統領は11日の演説で、「新型コロナウイルスとの戦いにおけるトルコの対策が成功している」「我が国の新たな感染者数、死者数、集中治療を受けている患者数、人工呼吸器をつけている患者数が次第に減っている」と述べた。また「暫くはウイルスの脅威から我々を守る対策に従って生活していかなければならない」とも語ったが、感染爆発の峠を越えて正常化を目指すプロセスに入ってきている印象を与えた。

トルコ最大の都市であるイスタンブールには日本の商社・双日等の協力で総合病院「バシャクシェヒル都市病院」が建設されていたが、5月21日に正式開業する。大統領は正式開業に合わせて安倍晋三首相とテレビ会談を行い、両首脳が「立ち会う」形にすると述べた。病院敷地は約1平方キロでベッド数は2600床という。
エルドアン大統領は5月10日の演説でもイスタンブール県のアタチュルク空港とサンジャクテペ地区の病院への医療観光目的による外国人の入国許可方針を示して医療観光を重視する姿勢を示したが、11日に文化観光省のエルソイ大臣はトルコ国内の観光は5月末に開始され、トルコ国外からの観光客の受け入れは6月の後に始まるとし、第一段階で70か国からの入国を承認する方針とした。また文化観光省と外務省が協力して観光キャンペーンを行うとした。

【4か月サイクルの反騰期入り?】

トルコリラ円は概ね4か月周期で重要な底を付けてきた。2018年8月の通貨危機以降では、2019年1月3日底、5月9日底、8月26日底、今年1月6日底とほぼ4か月周期で推移してきたが、1月6日底からちょうど4か月目にあたる5月7日に史上最安値を更新してから3日連騰している。対ドルでの史上最安値更新後も下落一服となっている。このため4か月前後の底打ちサイクルにおいて底打ちし、一定程度戻す可能性が出てきたと思われる。
ただし、前回のサイクルボトムからの反騰は1月6日安値から1月17日高値まで半月と持たずに失速しているため、今回の戻りも短命の可能性があると注意し、仮に1、2週間の反発が発生した後に史上最安値を更新する場合は、次の4か月サイクルの底形成期となる10月初旬にかけての下落継続へ進む可能性が高まるということも警戒しておきたい。新興国通貨の長期的な下落基調はまだ継続中と思われ、その中にトルコリラもあると考える。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月7日午後に史上最安値を更新したところから反騰しているが、5月8日夜にいったん下げてから一段高しているため、7日午後と8日夜の両安値をダブルボトムとして強気サイクル入りしたと思われる。トップ形成期は13日から15日にかけての間と想定されるが、15円以上での推移中は上昇継続性ありとし、15円割れから続落に入る場合は弱気サイクル入りによる下落期入りを疑い、その際は13日夜から15日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では5月11日早朝への上昇で遅行スパンが好転し先行スパンも上抜き、その後も両スパンそろっての好転を維持している。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、新たな高値更新へ進めないと遅行スパンは悪化してくるため、遅行スパン悪化からは下げ再開と仮定して安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11日夜への上昇で70ポイントを超えたがその後の高値更新に際しては指数のピークが切り下がっており、小規模な弱気逆行気配が見られる。60ポイント台を維持するうちは上昇余地ありとするが、60ポイント割れを弱気転換注意とし、50ポイント割れからは下げ再開とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、15.10円を下値支持線、15.25円を上値抵抗線とする。
(2)15.10円以上での推移中は上昇余地ありとし、15.25円超えからは15.30円台への上昇を想定する。15.30円以上は反落注意とするが、15.10円以上での推移なら13日も高値試しを続けやすいとみる。
(3)15.10円割れから続落の場合は弱気転換注意とし、15.00円割れからは弱気サイクル入りとみて14.80円台への下落を想定する。14.90円以下は買い戻しも入りやすいとみるが、15円以下での推移が続く場合は13日も安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

5月13日
 16:00 3月経常収支 (2月 −12.3億ドル、予想 -32.0億ドル)
5月14日
 16:00 3月鉱工業生産 前年比 (2月 7.5%、予想 -4.7%)
 16:00 3月小売売上高 前年比 (2月 10.6%、予想 -4.4%)
 16:00 3月小売売上高 前月比 (2月 1.4%、予想 -6.8%)
5月20日
 16:00 5月消費者信頼感指数 (4月 54.9)
 19:30 4月自動車生産 前年比 (3月 -21.8%)
5月21日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合(TCMB) (現行 8.75%、予想 7.75%)
5月22日
 16:00 5月景況感 (4月 66.8)
 16:00 5月設備稼働率 (4月 61.6)

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