トルコリラ円見通し 大暴落一服、UAE支援報道で戻す、反政府デモも発生で混乱続く(21/11/25)

トルコリラ円の11月24日は9.95円から8.66円の取引レンジ、25日早朝終値は9.54リラで前日終値の8.97円からは0.57円の円安リラ高となった。

トルコリラ円見通し 大暴落一服、UAE支援報道で戻す、反政府デモも発生で混乱続く(21/11/25)

大暴落一服、UAE支援報道で戻す、反政府デモも発生で混乱続く

〇トルコリラ円、24日にUAEによる投資支援が表明され24日は9.95円まで大幅反発
〇ドル/トルコリラも買い戻し優勢となり24日夜に11.51リラへ反騰、暴落一服
〇アラブ首長国連邦(UAE)はトルコでの投資支援として10億ドル規模のファンド設立計画を表明
〇23日首都アンカラや最大都市イスタンブール等複数の都市で数十人から数百人規模のデモ発生
〇11月トルコ製造業信頼感指数は108.4で前月109.6から低下、7月の114.8から4か月連続低下に
〇9.40以上での推移中は上昇余地あり、9.95超えからは10.15前後への上昇を想定
〇9.40割れからは下向き、9.00割れからは23日安値8.47を試す流れとみる

【概況】

トルコリラ円の11月24日は9.95円から8.66円の取引レンジ、25日早朝終値は9.54円で前日終値の8.97円からは0.57円の円安リラ高となった。
11月18日にトルコ中銀が3会合連続の利下げを強行、高インフレ下での連続利下げと12月会合での追加利下げの可能性も示唆されたことから下落に拍車がかかり、11月22日には1リラ=10円を割り込み、エルドアン大統領による利下げ擁護と経済戦争に勝つとの強硬姿勢演説や連立与党を組む極右政党党首による批判発言等をきっかけに23日には8.47円まで大幅下落、22日終値10.08円からは15%を超える暴落となった。
底の見えないパニック売りの連鎖だったが、23日夜にエルドアン大統領とカブジュオール中銀総裁が会談したとの報道から何等かの対策が打ち出されるのではないかとの警戒感から買い戻しに入り、24日にUAEによる投資支援が表明されたことも材料として24日は大幅反発となった。

【対ドルでも大幅反発、暴落一服】

ドル/トルコリラの11月24日は13.11リラから11.51リラの取引レンジ、25日早朝の終値は12.08リラで前日終値の12.82リラからは0.74リラのドル安リラ高となった。
11月18日のトルコ中銀による利下げをきっかけに暴落商状となり、11月23日は前日比1.44リラのドル高リラ安と過去最大級の急落で、23日安値では13.49リラを付けて22日終値の11.38リラからの下落率は一時18%を超えた。
10月25日に付けた当時の史上最安値9.85リラを割り込んでから10日連続の下落で史上最安値の更新が続いてきたが、23日安値13.49リラで暴落一服となり24日夕刻までは12.80リラを挟んだ持ち合いで下げ渋っていたところから買い戻し優勢となり24日夜には11.51リラへ反騰、深夜に12.42リラまで再び売られたもののその後はまた買い戻されて確りしている。
暴落一服だが、波乱続きにありリラ安が落ち着いたのかどうか、週末にかけて見定める必要があるところだ。

【リラ暴落による混乱続く】

11月18日にトルコ中銀は政策金利を16%から15%へと引き下げた。9月に19%から18%へ、10月に16%へと利下げしたのに続いて3会合連続の利下げだったが、10月時点のトルコ消費者物価上昇率が前年比で20%近い高水準だったところでの無理筋な利下げとしてリラ暴落を招いた。
11月22日にはエルドアン大統領が中銀の利下げ擁護姿勢を強調、経済戦争に勝つと演説したことも火に油を注ぎ、11月23日にはエルドアン大統領の盟友といわれる連立政権の極右政党党首のバフチェリ氏もトルコ中銀の中立性への疑問と批判を述べ、エルドアン政権への揺らぎも懸念される事態となった。

アラブ首長国連邦(UAE)は11月24日に首脳級が数年ぶりにトルコを訪問、トルコでの投資支援として10億ドル規模のファンドを設立する計画だと表明した。UAEの国営首長国通信(WAM)の報道ではこの新ファンドはエネルギーや食料品、ヘルスケアといった戦略的セクターへ投資するが、このほかにも両国は政府系ファンドや証券取引所及び中央銀行の分野での協力協定を結んだとされる。この報道もひとまずリラ暴落に歯止めをかけるきっかけの一つとなったようだ。
トルコの国営メディアによるとトルコ当局は為替操作を巡ってソーシャルメディアのアカウントを調査していると報じた。リラ売りが扇動によるものとして言論規制にも動いている印象となった。

トルコではアップルのオンラインサイトがアイフォーンの販売を一時中断した。リラ暴落によりリラ建て価格の設定に混乱が生じて一時は10%ほど割安の価格設定となっていたという見方もされており、転売目的での購入に制限をかけた模様。
11月23日には首都アンカラで反政府デモが発生した。規模は小さいものの首都アンカラや最大都市イスタンブール等の複数の都市で数十人から数百人規模のデモが発生したという。強権政治の中では珍しいが庶民の不満も高まっているようで2023年のエルドアン大統領再選への暗雲となってきている。

【トルコの製造業信頼感低下】

【トルコの製造業信頼感低下】

11月のトルコ製造業信頼感指数は108.4となり前月の109.6から低下した。コロナショックが直撃した2020年4月には66.8まで低下し、その後は順調に回復基調で推移して今年7月には114.8まで持ち直してきていたが、その後は4か月連続の低下となった。世界的なインフレ進行、サプライチェーンの停滞を反映していると思われる。
11月の設備稼働率は78.1%となり10月の78.0%からわずかに上昇したが、9月に78.1%を付けてからはやや頭打ちとなっている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月18日のトルコ中銀金融政策決定会合を前にしての買い戻しと利下げからの一段安により、11月19日午前時点では18日午前安値を直近のサイクルボトム、18日夜高値を同サイクルトップとした弱気サイクル入りとして23日夜から25日夜にかけての間への下落を想定した。
11月23日夜へ大幅下落したところから下げ渋り24日夜へ大幅反騰しているため、現状は11月23日夜安値を直近のボトムとして強気サイクル入りしたと思われる。高値形成期は18日夜高値を基準とすれば23日夜から25日夜にかけての間と想定されるのでまだ上昇余地も残るものの反落警戒期に来ているところと思われる。9円以上を維持するうちは上昇余地ありとするが、9円割れからは新たな弱気サイクル入りとして26日夜から30日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では11月24日夜の反騰で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いてきているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は11月23日夜の暴落時に10ポイントを割り込んでから持ち直し、24日夜には70ポイントに迫るところまで戻した。その後も50ポイント以上を維持しているのでまだ上昇余地ありとみるが、24日夜高値を超えるところで指数のピークが切り下がる場合は弱気逆行発生として下げ再開を疑い、45ポイント割れからは下げ再開とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9.00円を下値支持線、9.95円を上値抵抗線とする。
(2)9.40円以上での推移中は上昇余地ありとし、9.95円超えからは10.15円前後への上昇を想定するが、9.90円以上は反落警戒圏とみる。
(3)9.40円割れからは下向きとし、9.00円割れからは23日安値8.47円を試す流れとみる。8.50円以下は反騰注意だが、最安値更新からは8.00円を目指す下落を想定する。

【当面の主な予定】

11月25日
 20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合議事要旨
 20:30 週次外貨準備高 11/19時点 (11/12時点 867.0億ドル)
11月29日
 16:00 10月 貿易収支 (9月 -25.5億ドル)
 16:00 11月 経済信頼感指数 (10月 101.4)
11月30日
 16:00 7-9月期 GDP前期比 (4-6月 0.9%)
 16:00 7-9月期 GDP前年同期比 (4-6月 21.7%)

12月03日
 16:00 11月 消費者物価上昇率 前年同月比 (10月 19.89%)
12月16日
 20:00 トルコ中銀 金融政策決定会合 政策金利 (現行 15.00%)
 
注:ポイント要約は編集部

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