ドル円見通し 米CPI上昇率上ブレ、3日連続陽線(赤三兵)で反騰継続(21/7/14)

ドル円は7月13日夜の米6月消費者物価上昇率が予想を上回る結果となり米長期債利回りが大幅上昇したことで110.60円台へ続伸した。

ドル円見通し 米CPI上昇率上ブレ、3日連続陽線(赤三兵)で反騰継続(21/7/14)

米CPI上昇率上ブレ、3日連続陽線(赤三兵)で反騰継続

〇ドル円、13日夜の米6月消費者物価上昇率が予想を上回り米長期債利回り上昇に110.60円台へ続伸
〇米6月消費者物価上昇率は前年同月比5.4%で2008年8月以来の伸び率に
〇予想を超える上ブレで米連銀のテーパリング開始も早まる可能性が高まり米長期債利回りは大幅上昇
〇パウエル米連銀議長は14日に下院、15日に上院で半期に一度の報告を行う予定
〇110.20以上で推移中は上昇余地あり、110.81超えから111円台序盤試しを想定
〇110.20割れを弱気転換注意、110.18割れから下げに入るとみて110円前後、109.80台への下落を想定

【概況】

ドル円は7月13日夜の米6月消費者物価上昇率が予想を上回る結果となり米長期債利回りが大幅上昇したことで110.60円台へ続伸した。7月2日午前高値で111.65円を付けて4月23日以降の高値を更新したところから7月8日夜安値109.52円まで2.13円の下落幅となったのは、6月17日未明のFOMC後に米2年債利回りが急上昇した後も高止まりしていたところから低下に転じた為だが、先週末の7月9日から2年債利回りなど米長期債利回りが再び上昇に入ったことでドル円も買い戻しの動きとなり、日足は7月9日、12日と2日連続の陽線となっていたが、13日も3日連続陽線=赤三兵で戻り高値を切り上げた。7月14日早朝に110.64円を付けた後も110.50円以上を維持して確りしている。
7月14日夜にはパウエル米連銀議長による半期に一度の議会証言があるが、この議会証言を上昇基調で通過するようだと7月2日高値前後の水準回復を目指すV字反騰の継続となる可能性も出てきたところだ。

米労働省が発表した6月の米消費者物価上昇率は前年同月比5.4%となり2008年8月以来12年10か月ぶりの伸び率となった。5月の5.0%から4.9%へと伸びが鈍化するのではないかと市場は予想していたが予想以上の伸び率となった。前月比も0.9%で13年ぶりの上昇率となり市場予想の0.5%及び5月の0.6%を大幅に上回った。コア指数の前年同月比も4.5%となり市場予想の4.0%及び5月の3.8%を大幅に上回り、1991年11月以来29年7か月振りの伸び率となった。コア指数の前月比も0.9%上昇で予想の0.4%及び5月の0.7%を上回った。パンデミックによる急激な不況入りから景気回復へと揺れ返しているところだが、需給ギャップとサプライチェーンの制約が物価上昇を招いている。項目別では半導体不足による自動車生産への影響から中古車が前年比45.2%の大幅な上昇で1953年の統計開始以来で最大の伸びとなったことが目立った。

【米長期債利回り再上昇】

米消費者物価上昇率の予想を超える上ブレにより米連銀のテーパリング(量的緩和縮小)開始も早まる可能性が高まったとして米長期債利回りは総じて大幅上昇した。10年債利回りは前日比0.05%上昇の1.42%となったが、CPI発表前の1.35%台から急伸となった。30年債利回りは同0.05%上昇の2.05%となったが、この日の30年債240億ドルの入札が低調だったことも影響した。利上げ時期に敏感な2年債利回りは0.02%上昇の0.25%だったが序盤の0.22%から大幅上昇となった。
FOMCが6月17日未明に量的緩和縮小議論の開始と利上げ想定時期の前倒しを示したことで2年債利回りは0.15%台だったところから0.28%へ急伸し、10年債や30年債利回りが早々に低下へ転じた中でも7月2日までは高止まりしていた。米雇用統計後に2年債利回りが低下したことが7月2日からのドル円の下落要因となっていたのだが7月6日に0.19%まで下げたところで下げ止まり、V字反騰型となってそれまでの下げ幅の過半を解消してきている。

パウエル米連銀議長は7月14日に下院、15日に上院で半期に一度の報告を行う予定だが、予想を超える物価上昇率を踏まえてテーパリングへの姿勢を強めるのか、物価上昇は一時的で年末にかけては落ち着くとして忍耐強く急がない姿勢を強調するのかにより、米長期債利回りの上昇継続=ドル高か、米長期債利回り再び低下でドル安再開へと向かうのか試されるのではないかと思われる。
サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は13日にインタビューに答えて「恐らく2021年末か2022年初めが量的緩和の縮小開始には良い位置になるだろう」と述べた。同総裁はFOMCの投票権を持つが、物価上昇率の上ブレについては長続きしないとの見方を示す一方、景気回復によりパンデミック対策として講じた全ての手段は不要になるとしてFOMC内の中でのタカ派的な主張を述べた。

7月13日はユーロドルが7月7日深夜安値を割り込んで1.177ドル台へ一段安となり、5月25日高値以降の最安値を更新している。1月6日高値と5月25日高値がダブル天井型となっての下落であり、3月31日安値1.1702ドル割れへの余裕が乏しくなっている。
欧州中銀(ECB)は7月8日に長期戦略目標を修正して物価上昇率の目標を従来の2%弱から2%へ変更して一時的な上振れを容認する方針を示した。わずかな目標上方修正だったことでユーロドルはいったん買われていたが、米連銀とのスタンスの差が13日の米CPI発表後には再認識されて下げ足が速まった印象だ。ユーロドルの下落もドル円にとっては押し上げ要因となってくる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、7月8日深夜安値で直近のサイクルボトムを付けて反騰期に入ってきた。高値形成期は12日から14日夜にかけての間と想定されるのでまだ上昇余地ありとみるが、3連騰のために高値警戒感も出やすいと注意し、13日夜の反落時安値110.18円を割り込む場合は弱気サイクル入りとして14日の日中から15日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では8日深夜安値からの戻りを続けて遅行スパンが好転して先行スパンも上抜いてきたが、その後も両スパン揃っての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみて安値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は14日朝への一段高に際しても60ポイント台にとどまっているのでまだ上昇余地ありとみるが、連騰後の反動も警戒されるので50ポイント割れからはいったん下げに入るとみて30ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月13日夜安値110.18円を下値支持線、7月7日高値110.81円を上値抵抗線とする。
(2)110.20円以上での推移中は上昇余地ありとし、110.81円超えからは111円台序盤試しを想定する。110.20円以上での推移なら15日も高値試しを続けやすいとみる。また勢い付く場合は111.50円前後へ上値目途を引き上げる。
(3)110.20円割れを弱気転換注意とし、13日夜安値110.18円割れからはいったん下げに入るとみて110円前後、さらに109.80円台への下落を想定する。109.80円以下は反発注意とするが、下げ足が速まる場合は109.50円台へ下値目途を引き下げる。また110.20円以下での推移なら15日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

7/14(水)
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
13:00 (豪) ブロック豪中銀総裁補、講演
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -5.9%)
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 22.0%)
13:30 (日) 5月 設備稼働率 前月比 (4月 1.1%)
15:00 (英) 6月 消費者物価指数 前月比 (5月 0.6%、予想 0.2%)
15:00 (英) 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 2.1%、予想 2.2%)
15:00 (英) 6月 消費者物価コア指数 前年同月比 (5月 2.0%、予想 2.0%)

15:00 (英) 6月 小売物価指数 前月比 (5月 0.3%、予想 0.3%)
15:00 (英) 6月 小売物価指数 前年同月比 (5月 3.3%、予想 3.4%)
18:00 (欧) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 0.8%、予想 -0.3%)
18:00 (欧) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 39.3%、予想 22.2%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 19.00%、予想 19.00%)
21:30 (米) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 0.8%、予想 0.6%)
21:30 (米) 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 6.6%、予想 6.8%)

21:30 (米) 6月 生産者物価コア指数 前月比 (5月 0.7%、予想 0.5%)
21:30 (米) 6月 生産者物価コア指数 前年同月比 (5月 4.8%、予想 5.1%)
23:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
25:00 (米) パウエルFRB議長、半期議会証言(下院金融委員会)
26:00 (英) ラムスデン英中銀副総裁、講演
26:30 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論会参加
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

7/15(木)
休場 トルコ(国家統一の日)
米独首脳会談(ワシントン)
未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合(1日目)
10:30 (豪) 6月 新規雇用者数 (5月 11.52万人、予想 2.00万人)
10:30 (豪) 6月 失業率 (5月 5.1%、予想 5.0%)
11:00 (中) 4-6月期 GDP 前期比 (1-3月 0.6%、予想 1.2%)
11:00 (中) 4-6月期 GDP 前年同期比 (1-3月 18.3%、予想 8.0%)
11:00 (中) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 12.4%、予想 10.9%)
11:00 (中) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 8.8%、予想 8.0%)
13:30 (日) 5月 第三次産業活動指数 前月比 (4月 -0.7%、予想 -0.9%)

15:00 (英) 6月 失業保険申請件数 (5月 -9.26万件)
15:00 (英) 6月 失業率 (5月 6.2%)
15:00 (英) 5月 失業率・ILO方式 (4月 4.7%、予想 4.7%)
21:30 (米) 7月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (6月 17.4、予想 18.2)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 37.3万件、予想 35.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 333.9万人、予想 331.3万人)
21:30 (米) 6月 輸入物価指数 前月比 (5月 1.1%、予想 1.2%)

21:30 (米) 6月 輸出物価指数 前月比 (5月 2.2%、予想 1.2%)
21:30 (米) 7月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (6月 30.7、予想 27.5)
22:15 (米) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 0.8%、予想 0.6%)
22:15 (米) 6月 設備稼働率 (5月 75.2%、予想 75.7%)
22:30 (米) パウエルFRB議長、半期議会証言(上院銀行委員会)
24:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、ロッキーマウンテン経済サミット参加


※ポイント要約は編集部

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