ドル円見通し 110円台序盤へ続伸後は上値重くFOMC待ちに入る(21/6/16)

5日午前に110.15円を付けてから夕刻に109.96円まで小反落したものの買い戻されて110.16円まで戻り高値を切り上げたが、その後は上げ渋っている。

ドル円見通し 110円台序盤へ続伸後は上値重くFOMC待ちに入る(21/6/16)

110円台序盤へ続伸後は上値重くFOMC待ちに入る

〇ドル円、15日未明に110円台到達、後109.96まで小反落、買い戻され110.16まで戻り高値を切り上げる
〇FOMC始まるが、昨晩5月米PPI強く原油相場の上昇も続き、CPIを今後も押し上げる可能性が継続
〇17日未明の声明文発表や議長会見などでは、早期テーパリング方向でサプライズが起きる可能性も
〇109.80以上で推移中は上昇余地あり、110.16超えから110.33試しへ向かうとみる
〇109.80割れから下げに入るとみて109.50前後への下落を想定、109.50以下は反発注意

【概況】

ドル円は6月10日夜高値109.79円から11日未明安値109.29円まで下げたところを起点として一段高へ進み、6月15日未明に110円台へ到達、15日午前に110.15円を付けてから夕刻に109.96円まで小反落したものの買い戻されて110.16円まで戻り高値を切り上げたが、その後は上げ渋っている。
6月15日から16日の日程で米連銀のFOMCも始まった。17日未明には声明文、FOMCメンバーによる成長率や物価上昇率及び金利見通しが示され、議長会見もある。市場は現状維持とみているが、最近の物価上昇率の上ブレや景気回復を踏まえてテーパリング(量的緩和縮小開始)の議論が早まる事が示唆される可能性もあると注目している。今回のFOMCではサプライズの可能性もあるため、発表後の動きはかなり大きくなり、ドル円としては6月4日高値110.33円を超えて騰勢を強める可能性も、6月7日深夜からの上昇がいったん仕切り直しに入って調整安が深くなる可能性もあり得るところと注意したい。

【ポジション調整的な動き、6月15日の米経済指標はまちまちだが強めの内容】

6月15日の米10年債利回りは前日比0.01%低下の1.49%。6月10日の米CPI上昇率が予想を超える上ブレとなったものの前月比では伸びが鈍化したために米連銀のテーパリング議論は早まらないと市場は受け止めて一時的に上昇した後は大幅に低下に転じ、6月11日には1.42%へ低下して5月7日の4月米雇用統計発表時に一時的な急落で付けた1.46%を割り込んだ。3月30日のピークだった1.77%以降の最低水準となったが、その後はポジション調整的に14日に1.50%へ上昇、15日は1.51%へ水準を切り上げてからやや下げた。
株式市場もポジション調整の動きとなり、NYダウは14日の前日比85.85ドル安から15日も前日比94.42ドル安と続落、ナスダック総合指数は14日に史上最高値を更新したものの15日は利益確定売りに圧されて同101.28ポイント安と下落した。

米ニューヨーク連銀が発表した6月の製造業景況指数は17.4で5月の24.3から低下、市場予想の23.0も下回ったものの、6か月先の見通しは47.7となり5月の36.6から上昇した。
米労働省の5月生産者物価指数(PPI)伸び率は全体の前月比が0.8%で4月及び市場予想の0.6%を上回った。前年同月比は6.6%となり4月の6.2%及び市場予想の6.3%を上回り過去最大の伸び率となった。コア指数の前月比は0.7%上昇で4月と変わらずだったものの市場予想の0.5%を上回り、前年同月比は4.8%で市場予想と一致したが4月の4.1%を上回った。物価上昇の上ブレは続いており、生産者物価上昇が消費者物価も押し上げる可能性も継続している。原油相場の上昇も続いていることも今後の上ブレ材料となる。

米商務省が発表した5月の小売売上高は前月比1.3%減少で4月の0.9%増から悪化、市場予想の0.8%減を下回った。変動の激しい自動車・同部品・ディーラーを除くと0.7%減で予想の0.2%増を下回り、自動車・同部品とガソリンを除くと0.8%減だった。いずれも前月が好調だったことの反動とみられ、基調は回復へ向かっていると思われる。ニューヨークでは大半の規制が解除に入っており、今後はプラスを回復してくると思われる。
米連銀による5月鉱工業生産指数は前月比0.8%上昇で市場予想の0.6%を上回り、4月の0.1%上昇を上回った。5月の設備稼働率も75.2%で予想の75.1%及び4月の74.6%を上回った。
NAHBによる6月住宅市場指数は81となり5月の83及び市場予想の83を下回った。

FOMCは前回会合の議事録においてテーパリング議論の開始を巡る議論に入るべきとの参加者発言があったことが示されている。パウエル米連銀議長等は物価上昇は景気回復の途上における需給ギャップによる一時的なものとして年後半は落ち着くとし、雇用回復が続いているもののパンデミック前水準には程遠いとして忍耐強く金融緩和を続ける姿勢を強調してきた。その姿勢は変わらないと思われるが、8月のジャクソンホール会合における議長の基調講演においてはしばしば政策姿勢の変更が示唆されてきたこともあり、今年もそうした姿勢変更示唆の場になるのではないかと予想している。また、そのための布石としてテーパリング議論へ前回よりも踏み込んだ表現がとられる可能性もあるところと注目している。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、6月7日夜安値から3日を経過した11日早朝安値で直近のボトムを付けて上昇期に入った。高値形成期は10日夜高値を基準として15日夜から17日夜にかけての間と想定される。弱気サイクル入りする場合のボトム形成期は16日早朝から18日早朝にかけての間と想定されるので、今後の流れはFOMC反応次第となる。

FOMCにかけて上昇基調を維持して一段高に入る場合は17日夜への急伸も想定されるが、17日夜以降は反落警戒と考え、高値から0.50円以上の下げとなる場合は弱気サイクル入りが疑われる。
FOMC前にいったん調整安を入れてから発表後に一段高へ進む場合は、新たな強気サイクル入りとして18日の日中から22日にかけての間への上昇が予想され、上げ幅も大きくなると思われる。
FOMC前を小動きにとどめるかやや軟調な推移となりFOMCから急落反応の場合は弱気サイクル入りとみて17日の日中から18日早朝にかけての下落が想定されるが、18日までにいったん落ち着けば下げ渋りないしはリバウンドも入れてくる可能性があると思われる。いくつかのパターンを想定して反応からの流れを見定めたい。

60分足の一目均衡表では15日夜から上げ渋りに入っているため遅行スパンが悪化しつつあるが先行スパンを上回った状況は維持されている。先行スパンへ潜り込み始める場合はいったん下げに入る可能性があるとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンから転落するような急落が発生する可能性もあると注意する。
遅行スパンが一時的に悪化しても高値更新で再び好転するところからは上昇再開とみて高値試し優先とするが、FOMCを前後した乱調な展開に注意し、FOMCから急伸の場合は遅行スパン好転中の高値試しとし、急落の場合は遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。また先行スパンから転落してさらに続落のケースでは6月7日夜安値試しへ向かう可能性もあるとみる。

60分足の相対力指数は15日未明から15日夜への高値切り上げに際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられるが、50ポイント以上を維持しているので60ポイント超えからは上昇再開とし、50ポイント割れからはいったん下げに入りやすいとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.80円を下値支持線、6月4日午前高値110.33円を上値抵抗線とする。
(2)109.80円以上での推移中は上昇余地ありとし、15日夜高値110.16円超えからは6月4日午前高値試しへ向かうとみる。FOMC前は110.20円以上を反落注意とするが、FOMCから急伸の場合は110.50円台、さらに111円へ迫る可能性もあるとみる。また110円以上での推移なら17日の日中も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109.80円割れからはいったん下げに入るとみて109.50円前後への下落を想定する。109.50円以下は反発注意とするが、FOMCから急落反応となる場合は109.20円前後へ下値目途を引き下げ、さらに17日の日中の安値試しを続けて109円割れを試す可能性もあるとみる。

【当面の主な予定】

6/16(水)
休場、南ア、米露首脳会談(ジュネーブ)
15:00 (英) 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 0.6%、予想 0.3%)
15:00 (英) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 1.5%、予想 1.8%)
15:00 (英) 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 1.3%、予想 1.5%)
15:00 (英) 5月 小売物価指数 前月比 (4月 1.4%。予想 0.3%)
15:00 (英) 5月 小売物価指数 前年同月比 (4月 2.9%、予想 3.3%)
16:00 (中) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 17.7%、予想 13.6%)
16:00 (中) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 9.8%、予想 9.0%)

21:30 (米) 5月 住宅着工件数・年率換算件数 (4月 156.9万件、予想 163.0万件)
21:30 (米) 5月 住宅着工件数 前月比 (4月 -9.5%、予想 3.9%)
21:30 (米) 5月 建設許可件数・年率換算件数 (4月 176.0万件、予想 173.0万件)
21:30 (米) 5月 建設許可件数 前月比 (4月 0.3%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 5月 輸入物価指数 前月比 (4月 0.7%、予想 0.8%)
21:30 (米) 5月 輸出物価指数 前月比 (4月 0.8%、予想 0.8%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、金融政策発表
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見

6/17(木)
日銀・金融政策決定会合 1日目
07:45 (NZ) 1-3月期 GDP 前期比 (10-12月 -1.0%、予想 0.5%)
07:45 (NZ) 1-3月期 GDP 前年同期比 (10-12月 -0.9%、予想 0.8%)
10:30 (豪) 5月 新規雇用者数 (4月 -3.06万人、予想 3.00万人)
10:30 (豪) 5月 失業率 (4月 5.5%、予想 5.5%)
16:30 (ス) スイス国立銀行 政策金利 (現行 -0.75%、予想 -0.75%)
18:00 (欧) 4月 建設支出 前月比 (3月 2.7%)
18:00 (欧) 4月 建設支出 前年同月比 (3月 18.3%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 2.0%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 0.9%)

20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 19.00%、予想 19.00%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 37.6万件、予想 36.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 「前週 349.9万人、予想 342.1万人)
21:30 (米) 6月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (5月 31.5、予想 31.0)
23:00 (米) 5月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (4月 1.6%、予想 1.3%)
26:00 (米) 財務省3年債入札
26:00 (米) 財務省インフレ指数連動5年債入札


注:ポイント要約は編集部

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