ドル円見通し 米小売統計冴えず米10年債利回り低下で一段安(20/11/18)

ドル円は11月17日夜の下落で16日夕安値104.36円を割り込む一段安となった。

ドル円見通し 米小売統計冴えず米10年債利回り低下で一段安(20/11/18)

米小売統計冴えず米10年債利回り低下で一段安

〇ドル円、17日夜に16日安値104.36を割り込む一段安に
〇米10月小売売上高、前月比0.3%増で伸び鈍化、市場予想の0.5%増も下回る
〇米10月鉱工業生産指数は前月比1.1%上昇したが、前年同月比5.3%低下と悪化の印象
〇FRBパウエル議長「短期的に顕著な景気下振れリスクがある」
〇NYダウの3日ぶり反落で債券買われ、10年債利回りは0.05%低下の0.86%
〇104円割れからは103.50前後、さらに11/6夜安値103.17を目指す流れ
〇104.65を超える場合は16日夜高値105.12を目指す上昇を想定

【概況】

ドル円は11月17日夜の下落で16日夕安値104.36円を割り込む一段安となった。
11月9日の米ファイザー社ワクチン報道からNYダウが史上最高値更新へ急伸する中、ドル円も11月6日夜安値103.17円から9日深夜高値105.64円へ急伸し、11日深夜には105.67円まで高値を切り上げていたが、その後は失速してきた。16日には米モデルナ社ワクチン報道から16日夜に105.12円までいったん戻したがこの戻りは長続きせずに早々に売られ、17日夕刻までは104.50円を挟んでの横ばい推移となり、16日夕安値割れへの余裕が乏しくなっていた。

ワクチン報道に関しては9日のファイザー社報道でやや過剰反応的な上昇となったことで既に織り込み済となり、それよりも足元の感染爆発による経済活動の再規制への動きを警戒する状況となっていることから短期的な反応にとどまり、また一時的な上昇となったことでかえって戻り売り基調へ進みやすい地合いとなった印象もある。
17日は10月の米小売売上高が予想に届かず、コロナ不況からの回復力が鈍化している印象が強まったこと、16日のモデルナ社報道で3万ドルに迫り(←訂正 ×を超えて)史上最高値を更新したNYダウが3日ぶりに反落したこと、感染爆発の先行き不安が強まったことで米長期債利回りが低下、ドル円も16日夕安値を割り込む一段安に入った。

【ワクチン報道よりも足元の感染爆発への不安を優先し始めた】

米モデルナ社は11月16日に開発中のワクチン治験で94.5%の有効性があったと発表し、年内に承認申請する見込みとした。11月9日に発表された米ファイザーと独ビオンテックの共同開発ワクチンに続く2例目の成功期待であり、輸送・保管方法ではファイザー製ワクチンよりも容易とされたことで早期の実用化・普及への期待も高まり、NYダウは3万ドルに迫り(←訂正 ×を超えて)史上最高値を更新した。
しかし欧米の感染爆発は歯止めがかからず、欧州各地でのロックダウンの拡大、米国でも行動規制を強化するところが拡大する中で、ワクチンの実用化とパンデミック収束にはまだ相当の時間がかかりそれまでにウイルスが強まる真冬に感染拡大が深刻化すればコロナ不況からの回復もかなり遅れることへの懸念も強まる状況にある。

米商務省が17日に発表した10月の小売売上高は前月比0.3%増で6か月連続のプラスとなったが、9月の1.6%増から伸びは鈍化して市場予想の0.5%増も下回った。米連銀が発表した10月の鉱工業生産指数は前月比1.1%上昇して2か月振りに上向いて市場予想の1.0%上昇もわずかに上回ったが、前年同月比は5.3%低下と悪化したままという印象を強めた。
米連銀のパウエル議長は17日のオンラインイベントで、「短期的に顕著な景気下振れリスクがある」「ワクチンの開発進展は良いニュースだが生産や分配の時期、有効性に関して大きな課題がある」「景気への影響評価は時期尚早だ」と慎重な姿勢を示し、「15州で行動制限が導入され始めている、人々が経済活動を抑制していると思われる兆候が一部で既に出ている」と警戒感を表明した。

【米長期債利回り低下】

米国の感染増加数は11月13日に18万人を超えて過去最大となったがその後も高水準が続いている。ワクチンの実用化・普及前に不況感が一段と強まる可能性も懸念されるが、17日の米長期債利回りはNYダウの3日ぶり反落や米小売統計がさえなかったことで債券が安全資産買いされたために低下した。10年債利回りは0.05%低下の0.86%となったが、モデルナ社報道のあった16日には0.92%まで上昇していたところから大きく低下し始めた印象だ。
米長期債利回り低下が為替市場ではドル売り要因となり、ユーロドルが11月11日以降の高値を更新して11月9日夜高値に迫り、ポンド/ドルも上昇基調を継続、ドル円が一段安したことでドル安感が強まっている。米政権交代への動きが進まない中で感染拡大がさらに進むことに対する米国リスクも意識されていると思われる。以前は米国株高で為替市場はリスク選好感を強めてユーロ等が上昇するという相関だったが、17日はダウが下落する中でのドル安継続となったところに変化の兆しも見られる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月11日深夜高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして16日午前から18日午前にかけての間への下落を想定してきたが、16日夕安値から105円を超える反発となったために17日朝時点では16日夕安値を直近のサイクルボトムとした。またすでに11日深夜高値から3日目となる16日夜高値でサイクルトップを付けた可能性が高い印象とし、16日夕安値割れからは新たな弱気サイクル入りとしたが、17日夜に16日夕安値を割り込んで弱気サイクル入りとなった。次の安値形成期は19日夕から23日夕にかけての間と想定される。強気転換は16日夜高値超えからとする。

60分足の一目均衡表では13日早朝への下落で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落した。16日夜の反発でも先行スパンの下限に上値が抑えられたが、17日夜の一段安により両スパンそろっての悪化が続いている。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。

60分足の相対力指数は17日夜に30ポイント割れまで低下した後は30ポイント台を回復しているが戻りは鈍いため、50ポイント以下での推移中はまだ安値試しを続けやすいとみる。強気転換には50ポイント超えからさらに続伸するような反騰が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、104円を下値支持線、104.65円を上値抵抗線とする。
(2)104.50円を下回るか一時的に超えても維持できないうちは一段安警戒とし、104円割れからは103.50円前後、さらに11月6日夜安値103.17円を目指す流れとみる。103.50円以下は反発注意とするが、104.50円以下での推移が続くなら19日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)104.50円から104.65円手前までは戻り売りにつかまりやすいとみるが、104.65円を超える場合は強気転換注意として16日夜高値105.12円を目指す上昇を想定する。105円手前は反落警戒とするが、104.65円以上での推移なら19日は高値試しへ向かう可能性があると考える。

【当面の主な予定】

11/18(水)
09:30 (豪) 7-9月期賃金コスト指数 前期比 (4-6月 0.2%)
16:00 (英) 10月 消費者物価指数 前月比 (9月 0.4%、予想 -0.1%)
16:00 (英) 10月 消費者物価指数 前年同月比 (9月 0.5%、予想 0.6%)
16:00 (英) 10月 消費者物価コア指数 前年同月比 (9月 1.3%、予想 1.3%)
16:00 (英) 10月 小売物価指数 前月比 (9月 0.3%、予想 -0.1% )
16:00 (英) 10月 小売物価指数 前年同月比 (9月 1.1%、予想 1.2%)
16:00 (英) 10月 生産者物価コア指数 前年同月比 (9月 0.3%、予想 0.4%)
19:00 (欧) 10月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 -0.3%、予想 -0.3%)
19:00 (欧) 10月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 0.2%、予想 0.2%)

19:30 (英) ホールデン英中銀委員、講演
22:30 (米) 10月 住宅着工件数・年率換算件数 (9月 141.5万件、予想 146.0万件)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数 前月比 (9月 1.9%、予想 3.2%)
22:30 (米) 10月 建設許可件数・年率換算件数 (9月 155.3万件、予想 156.0万件)
22:30 (米) 10月 建設許可件数 前月比 (9月 5.2%、予想 1.5%)
24:00 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁、講演
26:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、ウェブセミナー
27:20 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演

11/19(木)
EU首脳会議
未 定 (南) 南アフリカ準備銀行、政策金利 (現行 3.50%、予想 3.50%)
08:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、オンラインパネル討論会
09:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、ウェブセミナー参加
09:30 (豪) 10月 新規雇用者数 (9月 -2.95万人、予想 3.00万人)
09:30 (豪) 10月 失業率 (9月 6.9%、予想 7.1%)
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調済 (8月 199億ユーロ)
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調前 (8月 218億ユーロ)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 10.25%、予想 15.0%)

22:30 (米) 11月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (10月 32.3、予想 22.0)
22:30 (米) 週間新規失業保険申請件数 (前週 70.9万件、予想 70.5万件)
22:30 (米) 週間失業保険継続受給者数 (前週 678.6万人、予想 635.0万人)
24:00 (米) 10月 景気先行指数 前月比 (9月 0.7%、予想 0.7%)
24:00 (米) 10月 中古住宅販売件数 前月比 (9月 9.4%、予想 -1.5%)
24:00 (米) 10月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (9月 654万件、予想 644万件)
24:00 (欧) ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、女性フォーラムで講演
25:00 (欧) シュナーベルECB理事、講演
26:10 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、ボウマンFRB理事、講演

注:ポイント要約は編集部

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