新型コロナ第二波が円高を加速させるか(週報11月第1週)

先週のドル円は安値104.03、高値105.05と104円は買い105円は売りというもみあいの印象を強めた一週間でした。

新型コロナ第二波が円高を加速させるか(週報11月第1週)

新型コロナ第二波が円高を加速させるか

〇先週のドル円、104円は買い105円は売りと値幅1円程度のもみあいの一週間
〇欧米の新型コロナ第二波、リスクオフによる円高バイアスが懸念されやすい地合い
〇明日の米国大統領選挙、郵便投票の開票遅れなどで即日には勝者が決まらない可能性も
〇今週5日のFOMC、追加緩和策発表なら株式市場は好感、円相場は一時的に円安に動く可能性
〇水曜東京市場から木曜NY引けまでが大きなヤマ場という一週間に
〇今週は103.50レベルをサポートに105.00レベルをレジスタンスとする流れ

今週の週間見通し

先週のドル円は安値104.03、高値105.05と104円は買い105円は売りというもみあいの印象を強めた一週間でした。上値の重たい株式市場が上値を抑える一方でユーロドルの下げがドル買いにつながりと、値幅も1円程度と大きくはありませんでした。

先週から今週にかけてのもっとも大きなニュースは、欧州を中心とした新型コロナ感染者の第二波の動きでフランスをはじめ欧州主要国において再ロックダウンが決まったことです。米国も大統領選が終わったら部分的なロックダウンを検討する可能性もありますし、7〜9月期の世界的な回復が10〜12月期には再び減速に転じることはほぼ確実ですから、今後も株式市場の動きを見ながらドル円はリスクオフによる円高バイアスが常に懸念されやすい地合いが続きそうです。

今週は明日が今週最大の注目イベントである米国大統領選挙で、早ければ東京市場が休場明けとなる4日の東京市場で大勢が判明します。しかし、終盤でトランプ大統領が激戦州での集会を精力的にこなし、支持率も回復してきていることから、もし接戦ということになると郵便投票の開票の遅れもあって、即日には勝者が決まらない可能性もあります。しかし、週末時点での両候補の支持率を見ると依然としてバイデン候補が大きくリードしているため、番狂わせが無ければバイデン候補勝利がコンセンサスとなります。

新型コロナ第二波が円高を加速させるか

このグラフは以前コラムでも使ったものですが、上段は青がバイデン候補の支持率、赤がトランプ大統領の支持率で、下段はバイデン候補がリードしているポイントです。

第1回TV討論会後にトランプ大統領が新型コロナに感染した際には6月のリード差を超える10.3ポイントまでリードが広がりましたが、昨日時点ではその差が7.2ポイントまで縮まりトランプ大統領新型コロナ感染前の水準と同じです。しかし、大逆転の可能性があるのは5ポイントまでとも言われますし、4年前と違って世論調査の精度も高まっていることから、仮に隠れトランプ支持がいたとしても難しい状況です。

可能性としては大票田の州において、僅差となった時にトランプ大統領・共和党が結果を認めず最高裁の判断を待つという事態もありますが、これはよほどの僅差で無い限りは難しいため、現時点で4年前のような大どんでん返しの再現は難しそうです。また大統領選と同時に行われる議会選挙では上院も民主党が過半数を取る可能性が高そうで、そうなるとホワイトハウスも上下院もねじれの無い状態となり、政策運営がしやすくなりますし、米中対立も緩和されるという期待が株式市場では好感されるということで、民主党の勝利は必ずしも金融市場にとって悪材料とはなりません。

というよりも誰が勝っても何が起きても米国株式市場は右肩上がりでないと困るのがウォール街の金融関係者ですから、4年前と同じようにどちらが勝っても好材料とするシナリオは既に出来上がっているでしょう。

トランプ大統領が勝利した場合には当然現状維持の安心感を前面に出してくるでしょうし、目先は減税、増税よりも新型コロナ対策が最優先ですから、実際にどちらが勝っても来年に関しては大きな変化は無いと見てよいのではないかと考えています。

そうなると、イベントが過ぎ新型コロナ感染者急増による10〜12月期の景気再後退懸念が悪材料として重くのしかかってきますが、今週は5日にFOMCがあります(大統領選のため、結果発表は1日遅れの木曜)。ECBでは12月の追加緩和を示唆しましたが、FRBは早めに今回のFOMCで何らかの手を打ってくる可能性があり、こちらも要注目です。仮に何らかの追加緩和策が発表されれば株式市場は好感するでしょうから、その場合は一時的に円相場も円安に動く可能性がありそうです。逆に何も無かった場合には、失望売りのパターンでしょうか。

金曜の米国雇用統計は2つの大きなイベントが過ぎた後で、影響は限定的だと思われますが、週初の段階で大統領選はバイデン新大統領誕生がコンセンサス、またFOMCでは何らかの追加緩和策の期待が広がっているため、大統領選での勝者確定持越しとFOMCの現状維持で12月にも特段言及しないといったあたりがリスクシナリオで株安による円高という可能性が出てきます。いずれにしても水曜東京市場から木曜NY引けまでが大きなヤマ場という一週間です。

テクニカルにも見ておきます。日足チャートをご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

レジスタンスライン(ピンクの太線)からは離れてきましたが上値が重たい流れには変化がありません。また直近の逆N波動を8月下旬の高値を起点に9月安値までの下げ、その後の10月高値の戻しを3点にフィボナッチエクスパンションを考えると、104円を下抜けた時のターゲットは78.6%(61.8%の平方根)エクスパンションが103.79(青のターゲット)、また年初来安値とその後の高値の78.6%(61.8%の平方根)押しは103.44(赤のターゲット)となっていて、テクニカルには103円台半ばがターゲットとなりやすいチャートと言えます。

今週は新型コロナ第二波懸念とテクニカルな観点からこれまでの104〜105円レンジを下抜けする可能性を考え、103.50レベルをサポートに105.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

11月2日(月)
**:** 米国冬時間開始
06:45 NZ9月住宅建設許可件数
09:30 豪州9月住宅建設許可件数
10:45 中国10月MarkIt製造業PMI
16:00 トルコ10月製造業PMI
17:50 フランス10月製造業PMI
17:55 ドイツ10月製造業PMI
18:00 ユーロ圏10月製造業PMI
18:30 英国10月製造業PMI
23:45 米国10月製造業PMI
24:00 米国10月ISM製造業景況指数
24:00 米国9月建設支出

11月3日(火)
**:** 東京市場休場
12:30 豪中銀政策金利発表
16:00 トルコ10月CPI
**:** 米国大統領選投票日
24:00 米国9月製造業新規受注
**:** ユーロ圏財務相会合

11月4日(水)
06:45 NZ7〜9月期失業率
08:50 日銀会合議事要旨公表
09:30 豪州9月小売売上高
10:45 中国10月MarkItサービス業PMI
**:** 米国大統領選開票速報
17:50 フランス10月サービス業PMI
17:55 ドイツ10月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏10月サービス業PMI

18:30 英国10月サービス業PMI
19:00 ユーロ圏9月PPI
22:15 米国10月ADP全国雇用者数
22:30 米国9月貿易収支
23:45 米国10月サービス業PMI
24:00 米国10月ISM非製造業景況指数
24:30 週間原油在庫統計
**:** 英中銀MPC(〜5日)
**:** FOMC(〜5日)
**:** EU財務相会合

11月5日(木)
09:00 NZ11月企業信頼感
09:30 豪州9月貿易収支
16:00 ドイツ9月製造業新規受注
18:30 英国10月建設業PMI
19:00 ユーロ圏8月小売売上高
21:00 英中銀MPC結果発表
21:30 英中銀総裁会見
21:30 米国10月チャレンジャー人員削減数
22:30 米国新規失業保険申請数
22:30 米国7〜9月期単位労働コスト速報値
28:00 FOMC結果発表
28:30 パウエルFRB議長会見

11月6日(金)
09:30 豪中銀四半期金融政策報告公表
16:00 ドイツ9月鉱工業生産
16:45 フランス9月貿易収支
22:30 米国10月雇用統計
24:00 米国9月卸売売上高・在庫

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

10月26日(月)
ドル円はユーロドルの下げに引っ張られてドル買いが先行、その後も緩やかなドル買いの動きが続きNY市場前場には105.06レベルの高値をつけました。しかし、105円台では戻り売りを考える向きが多かったこと、NYダウが大幅安となったことから104.82レベルへとやや押して引けました。

10月27日(火)
ドル円は前週木曜以降のドル買い戻しに対して円高の流れを再開する一日となりました。前日のNYダウの大幅安にもかかわらず、日経平均は底堅い推移となっていたものの、ドル円は前日の105円台乗せを目先の戻しと考える参加者が多い様子でした。海外市場に移り株価指数先物全般に売りが入るとドル円、クロス円での円買いが強まり、NY市場では104.39レベルまで水準を切り下げて安値圏での引けとなりました。

10月28日(水)
ドル円は東京前場に前日安値、先週安値を下抜けるとストップオーダーも巻き込みながらテクニカルな売りが目立ちました。欧州市場ではユーロが対ドル、対円で売られる動きとともに104.11レベルと9月安値に迫る動きとなりましたが、その後はユーロドルのドルの動きに追随してドル買い戻しの動きも出てNY市場では104円台前半の狭いレンジでのもみあいとなりました。

10月29日(木)
ドル円は東京前場こそ底堅い日経平均株価とともに円安の動きが先行しましたが、前日高値を超えられず株価の上値が重くなる動きとともに反転。欧州市場に入るとユーロが対ドル対円ともに下げると、ドル円も下げ足を速め104.03レベルの安値をつけました。その後9月安値104.00を抜けられずに買い戻しが強まる中で予想よりも強かったGDP速報値に反応してドル一段高の動きとなりました。NY市場ではユーロ一段安の動きがドルの動きとなり、ドル円は日計りのストップを巻き込みながら104.73レベルの高値をつけて引けました。

10月30日(金)
ドル円は日経平均株価に沿った動きの一日となりました。東京前場から急速に水準を切り下げる株価を見ながらドル円も後場には104.12レベルの安値をつけましたが、104円にはドル買いオーダーが残っていたこと、東京引け後の株価指数先物が上昇に転じたことからドル円も買い戻し。その後も一貫してドル買い戻しの動きとなりNY市場では104.73レベルと前日高値を1銭更新しましたが、ドル売りオーダーもあって上がりきらない状態での週末クローズとなりました。

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