トルコリラ円見通し 最安値更新続く、リラ売り要因解消せず地政学的リスクも増大(20/10/19)

先週も10月15日夜安値で13.21円まで最安値を更新した、16日深夜には13.35円までいったん戻す場面もあったが終盤は再び失速している。

トルコリラ円見通し 最安値更新続く、リラ売り要因解消せず地政学的リスクも増大(20/10/19)

最安値更新続く、リラ売り要因解消せず地政学的リスクも増大

〇トルコリラ円、10/15夜安値で13.21と最安値更新が続く
〇トルコ、16日に黒海沿岸でロシア製ミサイルS400の試射を行なったか
〇米国はS400と確認されれば強く非難すると述べるもトルコは肯定も否定もせず
〇13.21を割り込まないうちは13.35-13.40台序盤を目指す可能性
〇13.21割れからは13.10、13.00を段階的に試す下落期入りと考える

【概況】

トルコリラ円の史上最安値更新が続いているが、先週も10月15日夜安値で13.21円まで最安値を更新した、16日深夜には13.35円までいったん戻す場面もあったが終盤は再び失速している。
9月25日のトルコ中銀による予想外の利上げにより13.60円前後の水準から9月25日午後には14.01円まで反騰したのも束の間に、9月27日に勃発したナゴルノ・カラバフ紛争により地政学的リスクが一挙に拡大したとして28日朝に13.28円まで急落、その後はやや落ち着いていたものの紛争は長期化し、11日にはいったん停戦に合意したものの停戦破りの戦闘が続いたためにリラの先安感が強まった。さらに東地中海ガス田開発に関するギリシャ・EUとの対立問題でもトルコが探査再開を強硬したことで再び関係が悪化、加えてトルコがロシア製ミサイルシステムの実射試験を強硬したことでの欧米による批判が高まるなど、トルコは自らがリスクを拡大させてリラ売り要因解消姿勢を示さない状況にある印象となっている。

【トルコの態度がかえってリラ売りを助長する】

トルコリラの下落背景は外貨準備不足を突かれてのリラ売り、コロナ不況と観光収入の激減及び経常収支悪化、トルコ中銀による利上げにもかかわらず実質マイナス金利状態が続いていること、地政学的リスクとして東地中海ガス田探査によるギリシャ・EUとの対立、ナゴルノ紛争への介在による国際的批判、ロシア製ミサイルシステム実射実験による欧米からの批判増大、それらを悲観した欧米投資家及び国内投資家のリラ放れである。
EUは15-16日の首脳会議後の声明で、トルコの東地中海ガス田探査問題に対して「新たな一方的で挑発的な行動は遺憾だ」と非難した。ドイツのメルケル首相は会議後の会見で、「トルコの行動は非常に残念で不必要だ」と批判した。EUは12月の首脳会議でこの問題を再び協議するとしたが、10月1日の首脳会議においては「トルコがギリシャ、キプロスに対しさらに挑発的な行動を取れば制裁も辞さない方針」を確認している。トルコは9月末にギリシャとの直接対話で合意したものの対話姿勢をないがしろにする探査再開となっている。

トルコは16日に黒海沿岸でロシア製ミサイルシステムの試射を行った。トルコはNATO加盟国でありながらロシア製地対空ミサイルS400を導入したが、黒海沿岸の北部シノップでミサイル1発を発射した模様。米国はトルコによるS400調達はNATO防衛システムに対する脅威として批判しており、トルコのS400試射が確認されれば米国との緊張感も増すことになりかねない。米国務省のオルタガス報道官は、「S400と確認されれば、NATO加盟国、および米国の戦略パートナー国としての責任に背くものとして、最も強い言葉で非難する」と述べている。一報でトルコ国防省はミサイル試射について肯定も否定もしないと述べている。

アゼルバイジャンとアルメニアは10日にロシアの仲介によりいったん停戦に合意したが、即日から戦闘を再開してきた。10月17日に再びロシアの仲介により18日午前0時(日本時間同5時)から「人道的停戦」で合意したと発表した。しかしその後も戦闘が続いているとの報道が飛び交っている。ナゴルノ・カラバフ地区はアゼルバイジャン内にあってアルメニア人が大半を占めて共和国を名乗り実行支配している。トルコのエルドアン大統領は兄弟民族としてアゼルバイジャンを公然と支持・軍事支援をしておりナゴルノ・カラバフの奪還を目指す主張を繰り返している。
トルコ政府は10月1日付けで外貨購入税の税率を1.0%から0.2%に引き下げた。外貨預金の増加に歯止めをかけるための規制強化策が却って投資家心理を悪化させてリラ安を招いたと考えての方針転換と思われる。また年内の措置として新規または更新されたリラ建て預金口座の源泉徴収税を引き下げてリラ建て貯蓄を促す姿勢を示した。しかし海外及び国内のリラ放れが簡単に収まる状況にはなさそうだ。

10月22日にはトルコ中銀の金融政策決定会合がある。トルコ中銀は前回会合で4会合ぶりに2%の利上げを決定した直後のために追加利上げへ動かないだろうというのがいまのところの市場コンセンサスのようだ。リラ防衛への手詰まり感が強まればリラ売りに拍車がかかりかねないタイミングと思われる。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

トルコリラ円は概ね4か月周期の底打ちサイクルで推移し、4か月毎に主要な安値を付けてきたが、5月7日底から既に5か月を経過してもなお下落基調から抜け出せずにいる。あるいは9月24日の中銀利上げによる一時的な反騰でいったんごく短期的な底を付けたものの既に底割れとなり新たな下落期に入っている可能性もある。
中勢としては40週から1年周期の底打ちサイクルで推移しており、2018年8月の通貨危機的暴落でつけた安値以降では、39週目の2019年5月9日、53週目の今年5月7日で底を付けており、すでに今年5月7日安値を割り込んでいるために年明けから来年春にかけての間への下落期の序盤に過ぎないという見方もできる。
リラ安情勢を一挙に好転させる状況変化がないと長期的な下落基調から脱却できないのではないかとも懸念される。

(1)短期的には10月15日夜安値13.21円を割り込まないうちは16日深夜高値13.35円超えから13.40円台序盤を目指す可能性があるとみるが、16日夜高値以上は反落警戒圏とし、その後に13.30円を割り込むところからは下げ再開を疑う。
(2)15日夜安値割れからは13.10円、13.00円を段階的に試す下落期入りと考える。13.10円前後ではいったん買い戻しも入りやすいとみるが、15日夜安値を割り込んで以降も13.25円以下での推移が続くうちは安値更新へ向かいやすいとみる。
(3)10月22日にトルコ中銀が連続利上げに踏み切る場合は13.50円超への一時的急騰を想定するが、前回同様に反騰は短命に終わる可能性もあると思われる。

【当面の主な経済指標等の予定】

10月22日
 16:00 10月消費者信頼感指数 (9月 82.0)
 20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 10.25%)
 20:30 週次外貨準備高 (10月9日時点 411.2億ドル)
10月26日
 16:00 10月景況感 (9月 105.3)


注:ポイント要約は編集部

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