トルコリラ円見通し ナゴルノ紛争停戦合意で下げ止まれるか(20/10/12)

週明けのトルコリラ円は13.36円から13.37円近辺での推移となり、新たな安値更新を回避しているものの週末終盤に反落した状況のままとなっている。

トルコリラ円見通し ナゴルノ紛争停戦合意で下げ止まれるか(20/10/12)

ナゴルノ紛争停戦合意で下げ止まれるか

〇週明けのトルコリラ円、13.36から13.37近辺での推移
〇アゼルバイジャンとアルメニア、現地時間10日正午戦闘停止で合意
〇11日に再び軍事攻撃発生、停戦合意が順守されるか見定める必要あり
〇対ドルでのトルコリラ、10/9に7.95まで下落して史上最安値更新
〇9日深夜高値13.48を上抜き返す場合はいったん13.60前後まで戻す可能性
〇8日安値13.29を割り込む場合、13.10、さらに13.00前後を段階的に試す流れ

【概況】

トルコリラ円は8日深夜に13.29円まで下落して9月28日にナゴルノ紛争ぼっ発報道で急落した時の安値13.28円に迫っていたが、その後は新たな安値更新を回避し、ロシア仲介による停戦への協議待ちでいったん戻しに入り、9日深夜には13.48円まで戻した。しかし停戦合意実現への懸念から戻り一巡後は失速して13.41円で先週を終えていた。また対ドルでのトルコリラは10月9日午後に7.95リラまで史上最安値を更新していたが、その後は7.83リラ台までドル安リラ高へ持ち直して先週を終えた。
モスクワでのロシア仲介によるアゼルバイジャンとアルメニアの外相会談では10日に停戦合意に至り、市場としてはやや安堵したいところだが、11日には再び軍事攻撃が発生しており停戦合意が順守されるのかどうか、状況を見定める必要があるところだ。週明けのトルコリラ円は13.36円から13.37円近辺での推移となり、新たな安値更新を回避しているものの週末終盤に反落した状況のままとなっている。

【アルバイジャンとアルメニア、ナゴルノカラバフ停戦で合意するも早くも戦闘再燃】

ロシアのラブロフ外相は10月10日に係争地ナゴルノカラバフを巡って軍事衝突してきた旧ソ連構成国のアゼルバイジャンとアルメニアが停戦で合意したと表明した。捕虜交換等のために現地時間10日正午(日本時間同日午後5時)から戦闘を停止する。10月9日からモスクワにおいてロシアの仲介によりで両国外相が紛争ぼっ発後初めて会談を持った。
共同声明によると、双方は「米仏ロが共同議長の欧州安保協力機構(OSCE)ミンスクグループ仲介の下で平和的解決を早期に達成するための実質的な協議に入る」ことでも一致した。アゼルバイジャンは支援を受けているトルコを仲介国に加えるよう求めたが認められず、トルコは協議そのものを支持しつつも紛争地をアゼルバイジャンが奪還しない限り紛争は終結しないとの姿勢を示している。今回の紛争ではすでに双方で400人以上が死亡している。OSCEは1994年に米仏ロが仲介して当時の停戦合意を実現したが、その後はほとんど機能してこなかった。

10月11日、アゼルバイジャン外務省は同国第2の都市ギャンジャをアルメニア軍が攻撃して7人が死亡、33人が負傷したとツイートした。これに対してトルコ外務省はアルメニアの停戦違反として非難声明を発表している。10日の停戦合意が果たして継続されるのか怪しくなっている。

【トルコリラを巡る下落環境は改善できるのか?】

対ドルでのトルコリラは10月9日に7.95リラまで下落して史上最安値を更新した。8月に入ってから急落商状が深刻化したが、その後の下落規模と角度は今年年初から5月7日まで続いた下落期に近い動きだ。5月時点で2018年8月のトルコ通貨危機による急落でつけた当時の史上最安値を更新し、その後も続落基調のままであり、週末は小反発したものの週間足では7週連続の陰線での下落であり、リラ売り情勢は一段と深刻化している印象だ。トルコリラ円では7月後半から12週連続の週足陰線による下落である。

7月以降のトルコリラ安は(1)トルコの外貨準備不足、(2)消費者物価上昇率が政策金利を上回る実質マイナス金利状態の長期化(先般のトルコ中銀による利上げでも解消されず)、(3)コロナ不況による観光収入激減での経常赤字拡大及びそれらに対する政権及び中銀の対策不十分さを指摘してのムーディーズによる格下げ、(4)トルコによる東地中海ガス田探査によるギリシャ・フランスとの対立とEUによる制裁懸念(ギリシャとの協議開始により制裁にはまだ至らず)、(5)ナゴルノ紛争へのトルコの介在(停戦合意したが戦闘継続で根本解決に至らず)、(6)NATO加盟国であるにもかかわらずロシア製ミサイルを配備(10月7日に実用試験開始との報道で欧米からの批判拡大が懸念される)等である。
これらに対して一部には対応、緊張緩和の糸口も見えるものの、情勢全般を好転させる動きには至らず、さらに悪化へ向かう可能性も濃い状況と思われる。

海外投資家からすれば高金利通貨としての魅力よりもリラ暴落リスクが勝り、国内投資家からは自国通貨安からユーロやドル及びゴールド等へ逃避する動きを加速させる。大幅下落が続いてきたことで、情勢を変化させる動きに入れば一挙にリバウンド基調へ進む可能性もあるが、今週はまずナゴルノ紛争の停戦合意が順守されるのかどうかを見定めつつ、リラ安が落ち着くかどうかを見極めながらも安値試しを続けてゆきやすい状況のまま推移するのではないかと思われる。10月22日には次回のトルコ中銀政策決定会合も迫る。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

(1)10月8日安値13.29円から9日深夜高値13.48円まで戻してからやや下げた状況にある。ナゴルノ紛争の停戦破りでの軍事衝突激化へ向かうのか、停戦順守へ衝突も収まるのか、見定める必要があるところだが、当面は8日深夜安値を下値支持線、9日深夜高値を上値抵抗線として、上下いずれへ抜けるのかにより流れを判断したいところだ。
(2)新たな安値更新を回避して9日深夜高値を上抜き返す場合はいったん13.60円前後まで戻す可能性があるが、ナゴルノ紛争での状況改善が伴わなければ13.50円以上は反落警戒圏とみる。
(3)8日深夜安値を割り込む場合、13.10円、さらに13.00円前後を段階的に試す流れとみる。13円台前半まで下げてきたことで市場心理も13円割れをいずれ試すのではないかとの懸念を強めてきていると推察されるので、8日深夜安値を割り込む場合は13円試しへのトリガーとなりやすいと思われる。
(4)中勢の強気転換には、週足チャートにおいて陽線引けとなって連続陰線に歯止めをかけることがまず必要だろう。

【当面の主な経済指標等の予定】

10月12日
 16:00 7月失業率 (6月 13.4%、予想 14.0%)
 16:00 8月経常収支 (7月 -18.17億ドル、予想 -42.0億ドル)
10月13日
 16:00 8月鉱工業生産 前年比 (7月 4.4%、予想 5.1%) 
 16:00 8月小売売上高 前月比 (7月 9.5%、予想 4.4%)
 16:00 8月小売売上高 前年比 (7月 11.9%、予想 9.5%)
10月15日
 20:30 週次外貨準備高 10/9時点 (10/2時点 414.1億ドル)
10月22日
 16:00 10月消費者信頼感指数 (9月 82.0)

注:ポイント要約は編集部

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