トルコリラ円見通し トルコ消費者物価上昇によりトルコリラは対ドルで史上最安値を更新(20/9/4)

安値を切り下げ、9月4日朝には14.22円まで続落した。8月10日に付けた史上最安値14.07円に対する余裕が徐々に乏しくなってきている。

トルコリラ円見通し トルコ消費者物価上昇によりトルコリラは対ドルで史上最安値を更新(20/9/4)

トルコリラ円 トルコ消費者物価上昇によりトルコリラは対ドルで史上最安値を更新

〇トルコリラ円、ドル円の反落の影響受け、9/4朝に14.22まで続落
〇トルコ消費者物価上昇、政策金利と消費者物価上昇率の差がマイナスの実質マイナス金利状態続く
〇トルコリラ、対ドル・対ユーロで9/3夕刻のインフレ率発表から再び急落、下落基調継続
〇トルコの新型コロナ感染、再び感染者増加、第一波の第2ピークか
〇14.30を下回るか一時的に超えても維持できないうちは一段安、14.22割れからは14.07を目指すとみる
〇14.30超えからはいったん戻しに入るとみて14.37を目指す上昇を想定するが、14.35以上は反落注意

【概況】

トルコリラ円は9月3日早朝に14.25円まで下落して14.30円を下値支持線とした持ち合いから転落し、いったんは14.30円台後半まで戻していたが、9月3日夕刻に発表されたトルコ8月消費者物価指数が前年比11.77%上昇となり生産者物価も11.53%へ上昇したため、政策金利を上回る物価上昇率による実質マイナス金利状態が続いているとして対ドルでのトルコリラが史上最安値更新へ急落、対ユーロでも史上最安値へ迫る急落となったことで再び14.30円を割り込んだ。
9月3日深夜には対ドル及び対ユーロでのトルコリラ下落は一服したものの、ドル円が9月4日未明には一時106円を割り込むところまで反落したことで安値を切り下げ、9月4日朝には14.22円まで続落した。8月10日に付けた史上最安値14.07円に対する余裕が徐々に乏しくなってきている。

【トルコ消費者物価上昇率は高止まり、実質マイナス金利状態続く】

9月3日夕刻に発表されたトルコの8月消費者物価は前月比0.86%上昇となり7月の0.58%から上昇した。前年比は11.77%で7月の11.76%からわずかに上昇した。8月の生産者物価指数は前月比2.35%上昇で7月の1.02%上昇から伸びが加速した。前年比は11.53%となり7月の8.33%から大幅上昇となった。
トルコの消費者物価年率は2018年の通貨危機後の2018年10月に25.24%まで上昇した後に2019年10月の8.55%まで低下した。しかしその後は再び上昇基調にあり、2019年11月以降は10%を超える水準が続いている。

トルコリラ円 トルコ消費者物価上昇によりトルコリラは対ドルで史上最安値を更新

トルコ中銀の政策金利(週間レポレート)は2019年6月の24.0%から7月に19.75%へ引き下げたられたところから9会合連続で引き下げられて今年5月22日には8.25%まで低下した。その後は据え置かれているものの消費者物価が低下しないために政策金利と消費者物価上昇率の差はマイナスとなり、実質マイナス金利状態に陥っている。
トルコ中銀は8月20日会合でも利上げを回避しており、9月会合で利上げへ踏み切るかどうか注目されているが、エルドアン大統領による利下げ方針を忠実に反映するために中銀総裁の首が挿げ替えられて利下げが続けられてきた経緯もあり、簡単には利上げできない状況と思われる。トルコ中銀はオーバーナイトの貸し出し金利を通常よりも高い窓口レートを適用して引き締めを行っているが、対ドル及び対ユーロでの先安感が拭えない状況だ。

【トルコリラの対ドル、対ユーロでの下落基調は継続中】

9月3日夜にトルコリラは対ドルで7.45リラを付けて8月26日につけた7.42リラの最安値を更新した。8月26日の当日から8月28日までは最安値更新後の揺れ返しにより3日間の上昇だったが、8月28日に7.27リラまで戻した後は再び下落に転じ、8月31日に前日比0.19%安、9月1日に同0.25%安、2日も0.13%安と3日間の続落となっていたが、9月3日は0.73%安の大幅下落で取引時間中及び終値ベースでの史上最安値更新となった。
対ユーロでのトルコリラは9月3日夜に8.83リラへ下落して9月1日に付けた8.84リラに迫った。終値は8.80リラで9月1日の8.77リラを割り込み史上最安値を更新している。
9月1日夜からはユーロドルが反落したために対ユーロでのトルコリラ安も一服して9月2日は前日比0.25%高となっていたが、9月3日夕刻のインフレ率発表から再び急落している。9月3日夕刻からはユーロドルが上昇再開の気配となっているため、ユーロ高ドル安が進行する場合はトルコリラの対ユーロでの下落も加速しやすくなると思われる。

【感染拡大の第一波の第2ピーク形成中?】

トルコのコジャ保健相は9月2日に「結婚式や連休の帰省の影響で新型コロナウイルスの感染が拡大しており、第一波の第2ピークを迎えている」とし、政府は結婚披露宴等の制限を9月4日から全国で行うことを決定したと述べた。報道によるとトルコの地方での伝統的結婚式では、関連行事を含めて1週間続くこともあるため、新たな感染拡大の原因になってきているという。

トルコの新型コロナウイルス感染者累計は9月3日時点で27万4943人、前日からは1642人増となった。死者は49人増の6511人。現時点で世界18位の感染累計数だが、4月11日に1日の増加数が5138人に達してピークを付けてから減少傾向に入った。7月14日から8月3日までは増加数が千人を切る状況を維持して感染拡大をうまく抑制していたが、経済活動再開が再び感染者を増加させるのはどこの国でもみられる通り、トルコも8月4日からは千人を超える状況となり9月3日の増加数は千人を超えてからの最大となっている。また日々の死者数も20人前後規模だったところから倍増しているため、第一波の中の第2ピークの形成というよりは第二波に入りつつある状況ではないかと思われる。
感染拡大が経済活動を再び萎縮させれば年後半の景気回復も遅れ、トルコにとって最重要産業でもある観光収入の回復も遅れることとなり、先行き不安が募りやすいところとなっている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月28日深夜の下落で8月27日朝安値を割り込んだために28日午後高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして9月1日朝から3日朝にかけての間への下落を想定してきたが、9月3日朝に14.30円を割り込む一段安となってから14.30円台へ戻したため、9月3日午前時点では9月3日朝安値を直近のサイクルボトムとした。また新たな安値更新を回避するうちは9月4日にかけての間へ上昇余地ありとしたが、持ち合いから下放れる下落となったために戻りは短命の可能性もあるとし、再び14.30円を割り込むところからは下げ再開を警戒するとした。
9月4日早朝へ一段安となったため、9月3日午後の戻り高値を直近のサイクルトップとした新たな弱気サイクル入りとして9月8日朝から10日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では9月3日朝の一時的急落から戻したものの先行スパンが上値抵抗となって一段安しているため遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。強気転換は先行スパン突破からとし、その際は遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は9月4日朝の下落時に30ポイントを割り込み、その後に40ポイント台をいったん回復したが50ポイントに届かなかった。9月3日朝安値からの一段安に対して指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られないためもう一段安へ進みやすいとみる。強気転換には50ポイントを超える上昇が必要と思われる。

以上を踏まえて今週のポイントを示す。
(1)当初、9月4日朝安値14.22円を下値支持線、14.30円を上値抵抗線とする。
(2)14.30円を下回るか、一時的に超えても維持できないうちは一段安へ進みやすいとみて、4日朝安値割れからは8月10日の史上最安値14.07円を目指すとみる。14.10円以下は反発注意とするが、14.30円以下での推移なら週明けも安値試しへ進みやすいとみる。
(3)14.30円超えからはいったん戻しに入るとみて3日午後高値14.37円を目指す上昇を想定するが、14.35円以上は反落注意とし、その後の14.30円割れからは下げ再開とみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

9月10日
16:00 6月失業率 (5月12.9%、予想 15.8%)
20:30 週次外貨準備高
9月11日
16:00 7月経常収支 (6月 −29.3億ドル)
9月14日
16:00 7月鉱工業生産 前年比 (6月 0.1%)
16:00 7月小売売上高 前月比 (6月 16.5%)
16:00 7月小売売上高 前年比 (6月 -0.8%) 


注:ポイント要約は編集部

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