トルコリラ円 トルコ中銀の政策金利現状維持で一時リラ売りが進むも想定内でやや戻す(20/8/21)

トルコ中銀は8月20日の金融政策決定会合で政策金利の週間レポレートを現行の8.25%に据え置いた。

トルコリラ円 トルコ中銀の政策金利現状維持で一時リラ売りが進むも想定内でやや戻す(20/8/21)

トルコリラ円 トルコ中銀の政策金利現状維持で一時リラ売りが進むも想定内でやや戻す

〇トルコ円、中銀政策金利不変で14.32まで下落するも、想定内の決定としてその後14.40台を回復
〇対ユーロ・対ドル、金利据え置き発表後の下落は一時的なものにとどまりその後リラがやや持ち直し上昇
〇トルコ中銀、内需・外需の先行き不透明感依然強く、3会合連続で政策金利を据え置き
〇利上げ見送りに対する反応は落ち着いたものの、今後再びリラ売り圧力が徐々に強まる懸念
〇14.40以上での推移中は14.61をもう一度試す可能性があるとみるが、14.53以上は反落警戒圏
〇14.40割れからは14.32試しとし、安値更新からは14.20前後への下落を想定

【概況】

トルコリラ円はドル円の円高と対ドル及び対ユーロでのトルコリラ下落を背景に8月19日午前に14.21円まで下落して8月10日午前安値14.07円に迫ったが、8月19日夜のドル円反騰により19日深夜には14.61円まで切り返した。ドル円は20日未明の米連銀FOMC議事録公開においてYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)への消極姿勢が示されたことでドル高が継続して20日午前まで続伸したが、対ドル及び対ユーロでのトルコリラの反発が深夜以降は続かなかったためにトルコリラ円の反騰も19日深夜高値で一服となった。
8月20日は夜のトルコ中銀金融政策決定会合の結果待ちとなり、事前予想通りに政策金利は据え置かれたが、通貨防衛へ向けた利上げ判断がなされなかったことで発表後はいったんリラ売りとなり、トルコリラ円は14.32円まで下落したが、想定内の決定として一時的な売りを消化してからは14.40円台を回復した。対ユーロ及び対ドルでは金利据え置き発表からいったんリラ売りが進んだものの下落は一時的なものにとどまりその後はリラがやや持ち直しの上昇となった。これもトルコリラ円には終盤の下支えとなった。

【トルコ中銀、3会合連続で政策金利を据え置き】

トルコ中銀は8月20日の金融政策決定会合で政策金利の週間レポレートを現行の8.25%に据え置いた。5月22日に8.25%へ利下げして以降は6月25日、7月23日の会合に続き3会合連続の据え置きとなった。
トルコ中銀は声明で「新型コロナウイルスの世界的流行に伴う経済への打撃が和らぎ、5月以降の景気回復が勢いを増している」としたが、今後の行方は感染拡大を封じ込めることができるか否かにかかっており、内需・外需の先行き不透明感が依然強いとして政策金利の据え置きを決めたとした。政策金利については7月後半からのトルコリラ急落を踏まえて利上げをする可能性も一時は取沙汰されていたが、直前の市場予想は据え置きだったため、予想通りとなった。

エルドアン政権は政策金利とインフレ率の一桁を実現すると標ぼうして利下げに否定的だった前中銀総裁を解任して現在の体制を敷いたが、現総裁となった昨年7月にそれまでの24.0%から19.75%へ利下げしたところから今年4月23日会合まで9会合連続で利下げを断行して政策金利の一桁台を実現した。しかしその一方で消費者物価上昇率は2019年9月の9.26%と10月の8.55%で一桁を実現したものの、その後は二桁台に上昇したままであり、直近の今年7月は11.76%となっている。
政策金利と消費者物価上昇率の差は今年1月からマイナスとなり、6月時点でマイナス4.36%、7月時点でマイナス3.51%となり、7か月連続で実質マイナス金利状態となっている。

トルコリラ円 トルコ中銀の政策金利現状維持で一時リラ売りが進むも想定内でやや戻す

本来は高金利通貨として投機的な買いを誘ってきたトルコリラではあるが、度重なる通貨危機的な下落の発生と、長期的な下落により高金利の妙味が薄れ、かつ実質的なマイナス金利状態が長期化することとなれば、トルコ国内においてもリラからドルやユーロ等のハードカレンシーへ換金される動きも助長され、一段とリラ安が進むこととなり、トルコ通貨当局としてはリラ防衛の市場介入を繰り返す中で外貨準備高を減らして徐々に通貨防衛力が減衰する悪循環に陥ることとなる。8月20日に発表された週次の外貨準備高は8月14日時点で453.8億ドルとなり前週の465.9億ドルから減少している。今年1月時点では700億ドルを超えていたところからは大幅な減少となっており、2013年には1000億ドル超だった水準からは半減以下となっている。
トルコ中銀による利上げ見送りに対する反応は落ち着いたが、今後は再び外貨準備不足、経常収支赤字、観光収入の減少、トルコ通貨当局によるリラ防衛へのやや乱暴な政策等を見ながらリラ売り圧力が徐々に強まるのではないかと懸念される。

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月12日午後高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして13日朝から17日朝にかけての間への下落を想定してきたが、8月18日早朝へ一段安したために18日午前時点では8月15日早朝安値を底割れしたことによる新たな弱気サイクル入りとして20日早朝から24日朝にかけての間への下落を想定した。
8月19日深夜に急反発となったため、20日午前時点では19日午前安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしたとし、トップ形成期を20日午後から24日午後にかけての間と想定したが、戻りは短命の可能性もあるので14.40円割れからは弱気サイクル入りとした。
20日夜に14.40円をいったん割り込んだため、19日深夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。次のボトム形成期は24日午前から26日午前にかけての間と想定されるので、19日深夜高値を上抜き返せないうちは21日夜、週明けへの一段安を警戒する。強気転換は19日深夜高値超えからとし、その場合は24日夜から26日深夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では8月20日夜への下落で遅行スパンが悪化した。先行スパンからいったん転落したがその後の反発で上抜き返している。19日深夜高値を超えないうちは一段安警戒として遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、先行スパンから再び転落するところから下げが加速しやすいと注意する。19日深夜高値超えからはもう一段高へ進むとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は8月19日深夜に80ポイントに迫ったが、その後の反落で50ポイント割れまで低下した。その後は50ポイント台を回復しているが、65ポイント超えから続伸するような展開へ進めないうちはもう一段安余地ありとし、45ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント割れを目指す下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す
(1)当初、14.40円を下値支持線、8月19日深夜高値14.61円を上値抵抗線とする。
(2)14.40円以上での推移中は19日深夜高値をもう一度試す可能性があるとみるが、14.53円以上は反落警戒圏としてその後の14.40円割れからは下げ再開とみる。
(3)14.40円割れからは20日夜安値14.32円試しとし、安値更新からは14.20円前後への下落を想定する。14.20円以下は反騰注意とするが、20日夜安値を割り込んだ水準での推移が続くうちは週明けへ安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

8月21日
16:00 8月消費者信頼感 (7月 60.9、予想 58.0)
8月24日
17:00 7月観光客数 前年比 (6月 -96.0%、予想 -68.0%)
8月25日
16:00 8月製造業景況感 (7月 100.7)  
16:00 8月設備稼働率 (7月 70.7%)
8月27日
20:00 トルコ中銀金融政策会合議事要旨公開
20:30 週次外貨準備 8月21日時点
8月28日
16:00 8月経済信頼感指数 (7月 82.2)
8月31日
16:00 4−6月GDP 前年比 (1−3月 4.5%、予想 -8.9%)
16:00 4−6月GDP 前期比 (1−3月 0.6%、予想 -5.2%)
16:00 7月貿易収支 (6月 -28.5億ドル)

注:ポイント要約は編集部

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