トルコリラ円見通し  対ドルでトルコリラが一時急落、トルコリラ円も再びフラッシュクラッシュ(20/7/28)

トルコリラ円は7月27日深夜に15.10リラ前後へ急落した。

トルコリラ円見通し  対ドルでトルコリラが一時急落、トルコリラ円も再びフラッシュクラッシュ(20/7/28)

対ドルでトルコリラが一時急落、トルコリラ円も再びフラッシュクラッシュ

〇トルコリラ7/27深夜に急落、対ドルで6.96、対円でも15.10、ベンダーよっては15円割れを示現
〇トルコの海底ガス田調査めぐるEUとの軋轢の中で、仏首相が制裁を主張したことがきっかけか
〇トルコリラ、実質マイナス金利状態、外貨準備の漸減により、新興国通貨の中での脆弱性再認識
〇15.10以下は反発注意とするが、15.30以下での推移中は29日にかけても安値試し
〇15.40超えからは15.50を目指すとみるが、15.50手前では戻り売り、15.35割れから下げ再開とみる

【概況】

トルコリラ円は7月27日深夜に15.10リラ前後へ急落した。ベンダーによっては14.94リラの安値を付けたが、7月3日の瞬間的な下落時と同様に急落は一時的なものにとどまり早々に元の水準へ戻したが、日足の終値ベースでも15.34リラ、ベンダーによっては15.29リラで終了している。7月24日から日足は3日連続の陰線であり、7月3日のフラッシュクラッシュ時の安値を各ベンダーとも割り込んでいるために下落感が強まってきている。

7月27日夜にトルコリラは対ドルで6.96リラまで急落した。6月中旬以降は6.85リラを中心とした小動きが続き、トルコ当局による取引規制や監視の動きを警戒して取引量が減少していることで膠着状態に陥ってきた。そうした中でも7月3日には6.98リラまで一時的な急落が発生したが、その時はトルコ消費者物価指数の上昇率が予想を超えたことで政策金利とのマイナス乖離拡大により売られたことがきっかけだった。

7月27日夜の急落は、トルコが進める東地中海での原油・天然ガスの採掘調査に対してギリシャ等が反対する中、マクロン仏首相がEUによる制裁を主張したことがきっかけとなり、対ドルでも大幅上昇の続いてきたユーロがトルコリラに対して急伸したことで対ドルにおいても急落商状が発生したということの様だ。
トルコリラの対ユーロ、対ドルでの急落を反映してトルコリラ円も折からの円高加速も加わって急落商状を発生させたが、対ユーロ、対ドルでトルコリラが戻したことでトルコリラ円も瞬間的な安値からは戻したという状況だ。
トルコの海底ガス田調査に対してはドイツも反対しており、EUとトルコの関係悪化が懸念されている。米国はトルコとロシアの共同事業である天然ガスパイプライン(トルコストリーム)等への批判姿勢も示してきた経緯があり、ロシアが関与する東欧から西欧への天然ガス供給事業への制裁等もちらつかせている。トルコを巡っての欧米との軋轢がまた深刻化しかねないと懸念されるところだ。

【ドル全面安だが、トルコリラの下落感が強まり始める】

7月以降はユーロの上昇やポンド高の他、ドル円においても円高ドル安が進行しており、メジャー通貨の加重平均であるドル指数はコロナショックによるドル資金需給ひっ迫で3月20日へ急騰する前の安値である3月9日安値94.63を割り込んで一段安となっている。特に7月に入ってからは急角度の下落であり、先安感も強まっている。メジャー通貨だけでなく、コロナショックで売られてきた南アランドやブラジルレアル等においても持ち直しの動きが見られ、資源通貨及びアジア等新興国通貨に対するドル安感も強まってきた。しかしトルコリラは独歩安の様相となりつつある印象だ。

トルコリラは対ドルにおいて5月7日に7.27リラまで大幅下落してきたが、コロナショックによる新興国通貨売りが一巡する中で6月3日には6.68リラまで反発した。その後は再び下落してきたのだが、トルコ通貨当局による外国大手金融機関への一時的な取引制限導入や自国金融機関に対する取引条件の引き上げ等により6.85リラを中心とした持ち合いで落ち着いてきた。しかし、7月3日及び7月27日のフラッシュクラッシュにより瞬間的ではあるが急落商状を示し、7月21日終値6.82リラの後は終値ベースでの下落が続いており。7月27日終値は6.88リラまで下落している。

トルコは新型コロナウイルス感染爆発を抑え、5月中のロックダウンも週末に限定し、6月1日から経済活動再開を本格化し、7月1日からは徐々に海外からの観光客受け入れも始める等、経済復調の兆しを見せている。7月27日に発表された7月の製造業景況観は100.7となり6月の92.6から改善した。7月の設備稼働率も70.7%となり6月の66%から上昇している。
しかしコロナショックからの立ち直りにはまだ時間を要する中で5月まで利下げを継続してきたことで実質マイナス金利状態に陥り高金利通貨としての魅力がそがれていること、通貨防衛のための外貨準備も漸減してきていることで新興国通貨の中での脆弱性も再認識されているところだ。

【ドル円の下落感も強まる】

ドル円の下落もトルコリラ円には直接的な圧力となっているのだが、ドル円は7月27日夜に105.10円まで下落している。5月6日安値105.98円と6月23日安値106.06円によりダブル底を形成して底固さを見せていたが、7月入りしてからのドル全面安を背景として7月1日戻り高値108.16円からの下落が徐々に加速し、7月24日にはダブル底を割り込む一段安となった。週明けの27日もドル安は継続してドル円も一段安となっている。
トルコリラ円は5月7日安値を底として6月3日まで戻してきたが、その後は下落基調にあり、フラッシュクラッシュ的な下落を二度発生させつつ日足の終値ベースで下落感が強まっている。7月27日夜の急落からは戻したものの15円の大台を維持できるかどうかを試して行くような状況に入ってきたのではないかと思われる。

【60分足サイクル分析と当面のポイント】

【60分足サイクル分析と当面のポイント】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月24日に18日早朝安値を割り込んで一段安となったものの25日早朝にかけて15.50円を超えるところまで戻していたため、7月27日午前時点では7月25日未明安値を直近のサイクルボトムとした。またトップ形成期は28日夕から30日夕にかけての間と想定したが、持ち合い下放れとなったために戻りは短命の可能性があるとし、25日未明安値割れからは弱気サイクル入りとして30日未明から8月3日朝にかけての間への下落を想定するとした。
7月27日に25日未明安値を割り込んだため、底割れによる弱気サイクル入りとする。また27日深夜の急落を一時的なものとして下落基調を続けているとみて、15.40円を超えないうちは30日みめいから8月3日朝にかけての間へ下落基調が継続するのではないかと考える。ただし、15.40円超えからはいったんリバウンドに入るとみて25日早朝高値試しを想定する。

60分足の一目均衡表では遅行スパンの悪化、先行スパンからの転落状態が続いているため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。また一時的に遅行スパンが好転しても先行スパンが戻り抵抗帯となりやすいとみて、遅行スパンが再び悪化するところからは下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は27日深夜に20ポイント割れまで下げたがその後の反発でも50ポイントに届いていないためまだ一段安余地が残るとみる。50ポイント超えからは60ポイント台前半への上昇を想定するが、30ポイント割れからは下げ再開とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、15.20円を下値支持線、15.40円を上値抵抗線とみる。
(2)15.40円以下での推移中は一段安余地ありとし、15.20円割れからは15.10円前後への下落を想定する。15.10円以下は反発注意とするが、15.30円以下での推移中は29日にかけても安値試しを続けやすいとみる。
(3)15.40円超えからはいったん戻しに入るとみて7月25日早朝高値15.50円を目指すとみるが、15.50円手前では戻り売りにつかまりやすいとみて、その後の15.35円割れからは下げ再開と考える。

【当面の主な経済指標等の予定】

7月29日
16:00 6月貿易収支 (5月 -34.2億ドル、予想 -33.0億ドル)
16:30 トルコ中銀インフレレポート
20:00 トルコ中銀MPC議事要旨
7月30日
16:00 7月経済信頼感指数 (6月 73.5、予想 70.8)

注:ポイント要約は編集部 
7月31日
16:00 第2四半期観光収入 (前期 41.0億ドル、予想 11.0億ドル)
8月4日
16:00 7月消費者物価指数 前年比 (6月 12.62%)
16:00 7月消費者物価指数 前月比 (6月 1.13%)
16:00 7月生産者物価指数 前年比 (6月 6.17%)
16:00 7月生産者物価指数 前月比 (6月 0.69%)

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