ユーロドル 復興基金可決後のユーロ高は継続(週報7月第4週)

材料的にもテクニカルにもユーロの一段高が今週も続きやすいと見ています。

ユーロドル 復興基金可決後のユーロ高は継続(週報7月第4週)

復興基金可決後のユーロ高は継続

〇ユーロドル、1.1658まで上伸して高値引けの週末クローズ、週明けは1.17台で取引
〇EU復興基金合意後合意後いったん材料出尽くしの利食い売りが出るも、その後改めてユーロ買い強まる
〇財政含む復興パッケージでEUとしての結束を示せたことが材料出尽くし後再評価された模様
〇米欧の感染拡大、経済回復の差異次第に鮮明に、テクニカルにもユーロの一段高が今週も続きやすいか
〇今週は1.1600レベルをサポート、1.1800レベルをレジスタンスと想定

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロは、前週末のEUサミットでは復興基金が決まらず、その後水曜まで3日間の延長と述べ5日間の会期で、バラマキ部分の補助金を3900億ユーロへと縮小することでようやく反対国の同意も得られ全会一致で可決の運びとなりました。今回のEUサミットではサミット前は合意期待によるユーロ買いが広がり、合意後はいったんは材料出尽くしといった利食いも出ましたが、その後は改めてユーロ買いとなり、ユーロは1.16台半ばで高値引けとなりました。

今回のような重要事項はEU参加27か国の全会一致が必要でEUサミット開始後も財政規律に厳しい4か国(他にオーストリア、デンマーク、スウェーデン)の同意が得られないままに進みましたが、5日目にようやく全会一致での決定となりました。そのために、補助金部分の減額以外にも予算支払いの減免措置や監視体制等も盛り込まれましたが、復興基金が決まったことでEUの経済が上向く材料として重要であることはたしかです。

そして今回の決定でもっとも重要なことは財源をEUとして起債することで調達するという部分ですが、復興基金7500億ユーロ以外にも中期予算(2021〜2027年)として1兆億ユーロを超えるMFF(多年次財政枠組み)も決定したことで、EUとしての結束をEU外に示す絶好の機会になったと考えられます。これまでのEUは財政分野では揉めることが多かったのですが。コロナ禍を経て復興基金が決まったことで、以前に比べまとまりが出たことは間違いありません。

こうしたことが材料出尽くし後の再評価につながりユーロ高の動きをテクニカルな面とともに強化したという見方でよいでしょう。また今週は欧州ではドイツの4〜6月期GDP速報値が木曜に、フランスと米国の同GDP速報値が金曜に発表されます。どの国も4〜6月期がもっとも悪い数字を出すことは確実ですが。今期は欧州に比べて米国の驚くほどの減速が発表される予想となっています。これは欧州では新規感染者数に落ち着きが見られるのに対して、米国では第二波の懸念から経済活動再開後もなかなか本格的な再開に移れないといったことが影響しています。

最初の波が収まり活動再開となった時期に全米規模で警察官による黒人暴行致死や射殺といった事件が続き、そのことが感染者数増につながったということだと思いますが、いっぽうで株式市場は2月に史上最高値を更新した時と同様に楽観的な見通しに支配されていました。ところがここに来て、新型コロナ感染第二波や米中間の対立を懸念した売りも目立ってきましたし、先週のヘッドラインでは米国の大手企業経営陣の自社株売りが増えていることが高値との相関を示すといった記事も見られるなどドル売りにつながる材料が増えてきている印象です。材料的にもテクニカルにもユーロの一段高が今週も続きやすいと見ています。

テクニカルな観点です。日足チャートをご覧ください。

復興基金可決後のユーロ高は継続

先週は3月後半から5月末までのトライアングルを上抜けたことから、上昇N波動のフィボナッチ・エクスパンションによるターゲットとして78.6%(61.8%の平方根)エクスパンション1.1602を示しましたが、今朝の上昇で100%エクスパンションの1.1720も達成してしまいました。ややペースが速い感じもしますが、材料的にはいまだユーロ高が続きやすい環境ですし。テクニカルには更に次のターゲット127.2%(161.8%の平方根)エクスパンション1.1870を中期的なターゲットに考える段階にあると思います。

今週は先週金曜の安値圏に近い1.1600レベルをサポートに、ターゲットには届かないものの次の大台を伺う展開を考え1.1800レベルをレジスタンスとする週を見ておくことにします。

今週のコラム

今週もユーロ円の日足チャートです。

先週の復興基金が可決されてからユーロが対ドル、対円ともに買いが続いているので。今一度現在の立ち位置を確認しておきます。

復興基金可決後のユーロ高は継続 2枚目の画像

既に先週22日高値124.29からはやや水準を下げていますが、ユーロドルとは違って年初来高値124.43は更新していません。まだ年初来高値更新の可能性はあり、6月安値を起点とした上昇N波動を仮定すると、ひとつの可能性として年初来高値と重なる161.8%エクスパンション124.57という水準があげられます。

ユーロドルとドル円との動きにスピードの違いが出てくる場合には、同水準をターゲットとしやすいものの、ここに来てドル円でもドル売りの動きが強まっていることから、ユーロ円は先週高値でいったん短期的な高値を見て、現状はもみあいに入ってきたと見てよさそうです。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

7月27日(月)
17:00 ドイツ7月ifo企業景況感

7月28日(火)
(特になし)

7月29日(水)
15:45 フランス7月消費者信頼感
27:00 FOMC結果発表
27:30 パウエルFRB議長会見

7月30日(木)
15:45 フランス6月PPI
16:55 ドイツ6月失業率
17:00 ドイツ4〜6月期GDP速報値
18:00 ユーロ圏7月消費者信頼感
18:00 ユーロ圏6月失業率
21:00 ドイツ7月CPI速報値
21:30 米国4〜6月期GDP速報値

7月31日(金)
14:30 フランス4〜6月期GDP速報値
15:00 ドイツ6月小売売上高
15:45 フランス6月CPI速報値
16:55 ドイツ7月失業率
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP速報値
18:00 ユーロ圏7月CPI速報値

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

7月20日(月)
ユーロドルは東京仲値でのドル円の動きにつられる場面も見られましたが、すぐに元の水準へと下押し。その後はEUサミットにおける復興基金合意期待から1.14台半ばまで水準を切り上げ高値圏でのもみあいを続けました。英国でワクチンが開発されたニュースでポンドが買われたことも下支え要因となりましたが、NY市場に入りサミット再開前には一日の安値を更新後に買い戻されるなど、復興基金可否の思惑で荒っぽい動きとなっていました。

7月21日(火)
ユーロドルは復興基金合意期待が根強く東京市場では買いが先行したものの合意結果を見て昼過ぎには材料出尽くしのポジション調整から押しも入りました。NY市場まではもみあいを続け、これで終わりかと思っていたところ、合意を評価する買いが改めて出て、東京時間の高値を上抜け。その後年初来高値も上抜けとテクニカルなユーロ買いが強まり1.1540レベルへと高値を切り上げ高値圏での引けとなりました。

7月22日(水)
ユーロドルは、前日の上昇に続いて一段高となりましたが、特にユーロ円の買いがリードする形でNY市場では1.1600レベルの高値をつけその後若干押して引けました。

7月23日(木)
ユーロドルは欧州市場までは高値圏でのもみあいとなっていましたが、NYが始まる前に対ドル対円で一時的に売りが目立ちました。主要株価指数が下げる動きの中で欧州株の下げがきっかけとされましたが、週前半の上げに対するポジション調整が強まったものと見られ、その後は直ぐに新高値をつけに行き、NY昼前には1.1627レベルの高値をつけやや押して引けました。

7月24日(金)
ユーロドルはNY市場までは高値圏でのもみあいを続けていましたが、NY市場ではドル円を中心としたドル売りの動きから引け間際には1.1658レベルまで上伸して高値引けの週末クローズとなりました。

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