ドル円見通し 7月1日高値以降の安値更新、レンジ拡張型の持ち合い下限(20/7/9)

ドル円は株高への同調で円安反応とはならずにドル安感を優先して下落に転じ、7月9日未明には107.16円まで下げた。

ドル円見通し 7月1日高値以降の安値更新、レンジ拡張型の持ち合い下限(20/7/9)

ドル円見通し 7月1日高値以降の安値更新、レンジ拡張型の持ち合い下限

〇ドル円、株価回復によるドル安で一時107.16まで下落
〇株高への円の同調性バイアスよりドル安への反応が勝る局面が目立っている印象
〇107.50を中心に高値切り上がり・安値切り下がりのレンジ拡張型逆三角持ち合いの様相
〇107.50を下回るうちは一段安余地あり、107.16割れからは107.00試し
〇107.50超えから続伸の場合は上昇再開、レンジ拡張型持ち合いの高値ラインの来る108円を目指すとみる

【概況】

7月8日夜は欧米株高を背景に為替市場ではリスク選好感優勢となってユーロ、ポンド、豪ドル等が上昇してドルストレートではドル安となった。しかしドル円は株高への同調で円安反応とはならずにドル安感を優先して下落に転じ、7月9日未明には107.16円まで下げた。

アフターコロナの復興と金融緩和による押し上げ期待を先取りして株式市場はナスダックを先頭に楽観的な強気が続いており、株高局面では為替市場もドル安反応しやすくなっているが、その一方では世界的な感染爆発が続き、米国での感染拡大も収まらずに経済活動再開の動きもストップし始めており、先行き不安を背景に安全資産とされるゴールドは2011年9月の史上最高値以来の高値水準へ上昇しており、復興への楽観と感染拡大の先行き不安が交錯する状況にあり、ドル円は株高への同調性バイアスよりもドル安への反応が勝る局面が目立っている印象だ。7月8日夜の下落もユーロの反騰等と歩調を合わせて円高ドル安となった。

【レンジ拡張型の逆三角持ち合い、5月6日からの上昇時との比較】

6月23日深夜安値で106.06円を付けた後は7月1日高値108.16円まで戻した。上昇幅は2.10円であり、6月5日高値109.84円から6月23日安値までの下げ幅3.78円に対しては半値戻しを若干上回るところまで戻した。4月6日の戻り高値から5月6日安値までの下げ幅が3.39円であり、その時は5月6日安値からの反騰で6月5日高値まで3.89円の上昇幅を実現した。

今回も5月6日安値を割り込まずにダブル底型を形成しての反発であるため、5月6日から6月5日にかけての上昇時並みの反騰に入っても不思議ないとも言える。5月6日からの上昇では5月19日高値108.07円まで2.09円の上昇後に5月29日までは1.02円の下落を入れながら小持ち合いを形成してから一段高したが、5月29日にかけては5月22日や5月27日の安値をいったん割り込んで下放れに入りかけたところから反騰している。

また、6月23日深夜安値から7月1日高値まで2.10円の上昇後に上げ一服となっている。7月2日以降、戻り高値は2日夜の107.72円、6日午前の107.77円、7日夜の107.79円とやや切り上がってきたが、107.70円台が上値抵抗帯となってきた。一方で安値は7月2日の107.30円から7月7日の107.22円へ切り下がっていたため、「高値切り上がり・安値切り下がりのレンジ拡張型逆三角持ち合い」の様相となっている。7月8日未明に107.16円まで安値を切り下げたが、ここも7月2日と7日の安値を結ぶ安値切り下がりラインに丁度到達したところでやや下げ渋りとなっている。

現状のレンジ拡張型持ち合いの中心値は107.50円であり、7月9日未明安値ないしはもう一度安値を若干切り下げて107円に迫るところから切り返しに入って107.50円を超えれば、レンジ拡張型の持ち合いによる騰落の繰り返し継続として今度は高値切り上がりラインの来る108円手前を試しにかかる可能性がある。
ただし、107円を割り込んで続落に入る場合は、レンジ拡張型持ち合いからの下放れとなり、6月23日深夜安値106.06円への往って来い、あるいは底割れへ向かう可能性も出てくると思われる。5月末から一段高したところの再現となるのか、再現ならずに円高加速局面に入るのか、重要な岐路にあると思う。

【リスク選好と先行き不安の混在】

米ジョンズ・ホプキンス大学によると、米国の新型コロナウイルス感染者数は7月8日時点で累計300万人を超えた。米政府の新型コロナ対策本部長を務めるペンス副大統領は7月8日の記者会見で「感染検査を受けた米国人3900万人超のうち300万人以上が陽性だった」と発表したが、実に陽性率が10%近い状況となっている。最大の感染地だったNY州では感染拡大が抑制されているものの南部や西部等で経済活動再開を急いだり規制の緩かったところでの感染拡大が続いており、一時鈍化していた増加ペースは6月に入って上昇している。7月7日には米国の1日の感染増加数が6万人を超えたという。またテキサスやフロリダ等では経済活動再開を一時中止し、外出時のマスク着用を義務付けたりし始め、NYも店舗営業再開が先送りされている。

7月9日朝時点の最新の集計では世界の感染者数は1213万人、米国は314.8万人に達した。ブラジルは171万人、インドも76.9万人に急増しているが、南米各国や中東及び南ア等の感染拡大が深刻化している。
感染拡大への懸念が深刻化する一方で、株式市場では復興と金融緩和による金融資産インフレ期待で買われており、7月8日のNYダウは前日比177.10ドル高と上昇し、ハイテク株中心のナスダック総合指数は同148.61ポイント高となり2日ぶりに終値ベースの史上最高値を更新した。

現状をコロナショック不況の底として年後半から来年への景気回復期待を先取りする動きだが、株高局面では為替市場でのリスク選好感も強まってユーロやポンド、豪ドル等が買われてドルストレートではドル安感が強まり、ドル円においてもドル安円高反応となるため、株高同調での円安という基本的な反応パターンが崩れている。7月8日の米10年債利回りは前日比0.03%上昇の0.67%となったが、米連銀による実質ゼロ金利の長期化及び大規模金融緩和による過剰流動性供給が米長期債利回りの上昇を抑えている。6月序盤からの米長期債利回り低下がドル円においては6月5日高値からの下落要因となっており、その後の戻りも鈍い状況にとどめている。

前段でドル円の6月23日からの反発状況が5月6日からの上昇期に類似していると指摘したが、米長期債利回りとの相関性では、5月6日から6月5日へのドル高円安が米長期債利回り上昇に支えられたものであったのと比較すれば、現状は米長期債利回り低下傾向の範囲にあるために様相が異なる。ドル円がレンジ拡張型の持ち合いを上放れして行くには米長期債利回りが勢いをもって上昇する必要がありそうだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・形成サイクルでは、7月6日午前高値からの下落で7月2日夜安値を割り込み、その後の反騰で7月6日午前高値を上抜いたため、8日朝時点では7月7日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとしたが、レンジ拡張型の持ち合い相場で推移しているために戻りは短命の可能性もあるとし、7日午前安値割れからは新たな弱気サイクル入りとした。
7月9日未明への下落で7日午前安値を割り込んだため、底割れによる弱気サイクル入りと仮定する。ボトム形成期は10日午前から14日午前にかけての間と想定するが、サイクルをやや短縮しての騰落が続いているので、レンジ拡張型の持ち合い中心値である107.50円超えからは強気サイクル入りと仮定して10日夜から14日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では7月8日深夜の一段安により遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は、7月9日未明に30ポイント割れとなったが、その後はやや戻している。50ポイントを超えないうちはまだ一段安余地ありとみるが、50ポイント超えからは上昇再開とみて60ポイント台中後半への上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月9日未明安値107.16円を下値支持線、107.50円を上値抵抗線とする。
(2)107.50円を下回るうちは一段安余地ありとし、107.16円割れからは107.00円試しとする。107円前後で買い戻しに入る可能性もあるが、107円割れから続落に入る場合は106円台中盤(106.65〜106.35)へ下値目途を引き下げる。また107円以下での推移なら10日午前も安値試しへ進みやすいとみる。
(3)107.50円超えから続伸の場合は上昇再開とみてレンジ拡張型持ち合いの高値ラインの来る108円を目指すとみる。108円手前では戻り売りも出やすいとみるが、107.50円以上での推移なら10日午前も高値試しへ進む可能性ありとみる。

【当面の主な予定】

7/9(木)
日銀支店長会議
10:30 (中) 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 2.4%、予想 2.5%)
10:30 (中) 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 -3.7%、予想 -3.2%)
15:00 (独) 5月 貿易収支 (4月 35億ユーロ、予想 70億ユーロ)
15:00 (独) 5月 経常収支 (4月 77億ユーロ、予想 100億ユーロ)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 142.7万件、予想 137.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1929.0万人、予想 1875.0万人)
23:00 (米) 5月 卸売在庫 前月比 (4月 0.3%、予想 -1.2%)
23:00 (米) 5月 卸売売上高 前月比 (4月 -16.9%、予想 4.5%)
25:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、ウエブ・セミナー

7/10(金)
シンガポール総選挙
08:50 (日) 6月 国内企業物価指数 前月比 (5月 -0.4%、予想 0.3%)
08:50 (日) 6月 国内企業物価指数 前年同月比 (5月 -2.7%、予想 -2.0%)
21:30 (米) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 -0.8%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 6月 生産者物価コア指数 前月比 (5月 -0.1%、予想 0.1%)
21:30 (米) 6月 生産者物価コア指数 前年同月比 (5月 0.3%、予想 0.5%)

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