トルコリラ円見通し トルコ中銀の利下げ見送り後も対ドルでは小動き、ドル円の流れに同調(20/6/29)

26日深夜には15.64円まで戻し、15.62円で先週を終えた。

トルコリラ円見通し トルコ中銀の利下げ見送り後も対ドルでは小動き、ドル円の流れに同調(20/6/29)

トルコ中銀の利下げ見送り後も対ドルでは小動き、ドル円の流れに同調

〇トルコリラはドル円の動きに沿う形
〇ドルトルコリラ相場はトルコ当局による取引規制の強化を反映し小動き
〇ドル円は108円超えを目指す流れに入るのか106.06割れから円高が加速するのか重要な分岐点
〇ドル円の流れによりトルコリラ円も大きく動く可能性がある
〇エルドアン大統領「今年の3Q、4Qには大きな成長率を達成することを予想している」と述べ復興に自信
〇15.56割れ回避か、早々に切り返すうちは上昇余地あり15.67超えからは15.70円台後半試しを想定
〇15.56安値割れから続落に入る場合は下落再開か

【概況】

トルコリラ円は6月23日夜にドル円が106.06円まで急落したところで15.47円まで下落して6月12日安値を割り込んだが、その後はドル円の揺れ返しの上昇により反発に転じ、25日夜には15.67円まで戻した。26日夜にドル円の下落に合わせて15.56円まで小反落したが26日深夜には15.64円まで戻し、15.62円で先週を終えた。
対ドルでのトルコリラがこの2週間をほぼ横ばい推移にとどまって動意の薄い中、トルコリラ円はドル円の動きに順じた展開が続いている。6月25日にトルコ中銀が9会合連続で実施してきた利下げを見送ったものの市場の動きは限定的なものにとどまった。
トルコリラの対ドルでの小動きはトルコ当局によるリラ防衛のための取引規制の強化を反映したものと思われるので、しばらくはドル円の動きに合わせての展開が続きそうだ。

【ドル円は持ち合い下放れを切り返して仕切り直し】

ドル円は5月6日安値105.98円からの上昇で6月5日には109.84円の高値を付けたが、その後の反落で6月12日に106.55円まで下落し、6月16日に107.63円まで戻した後は新たな高値更新へ進めずに1円幅に満たない小レンジの持ち合いを続けてきた。6月23日夜にドル全面安となる中で106.06円まで下げて6月12日安値を割り込み、直前8日間の持ち合いから下放れたが、23日深夜からは揺れ返しの反発に転じて6月25日夜には107.44円まで戻した。26日夜に106.78円まで下げて107円を割り込んだが26日深夜には107.35円まで戻している。

8日間に及ぶ持ち合いを下放れしたところではさらに安値追及の流れへ進みやすい状況となっていたが、その後の持ち直しにより安値追及への流れはいったん仕切り直しとなった。6月23日夜への下落は株高等によるリスク選好でユーロ等が上昇してドル全面安となりドル円においても通常ならリスク選好で円安となるところを円高ドル安となった。その後の反騰は株安発生でのリスク回避によりドル買い戻しの動きが強まってドル円においても通常ならリスク回避の円高になるところを円安ドル高反応となった。

やや通常の反応とは異なる動きも見られたためにドル円の方向性も不安定なものとなっている。5月6日安値105.98円割れをぎりぎりで回避しての持ち直しのため、5月6日と6月23日の両安値をダブルボトムとして切り返しの上昇へ進む可能性もあるところだ。しかし6月23日夜安値及び5月6日安値に対する下値の余裕は乏しいため、小さな衝撃でも底割れから一段安へ進みかねない位置にある。7月3日が米独立記念日の振り替えで祝日休場となるため7月2日の木曜日に米雇用統計の発表があり、重要経済指標の発表も相次ぐことから、6月12日以降の高値である6月16日高値107.63円を超えて108円超えを目指す流れに入るのか、6月26日夜安値106.78円割れから下げ再開感を強めて6月23日深夜安値106.06円割れから円高が加速するのか、重要な分岐点に来ている。ドル円の流れによりトルコリラ円も大きく動く可能性があると注意する。

【対ドルでのトルコリラは持ち合いのまま】

対ドルでのトルコリラは5月7日に7.27リラの史上最安値まで下落してからの揺れ返し上昇で6月3日には6.68リラまで戻したが、その後はドル高リラ安へ転じて6月18日に6.86リラまで下落してきた。6月18日以降は新たな安値更新を回避してほぼ横ばいの動きが続いており、6月25日夜のトルコ中銀による利下げ見送りでも6.82リラまで一時的に反発したものの市場の反応は一時的なものにとどまり、6.85リラの持ち合い中心値で週を終えた。

トルコ中央銀行は6月25日、政策金利の1週間物レポレートを現行の8.25%で据え置いた。現在のウイサル総裁が2019年7月に就任してからはエルドアン大統領による「政策金利と物価上昇率の一桁を目指す」との意向を踏まえて2019年6月時点で24.0%だった政策金利を同年7月に19.75%へ引き下げて以降も9会合連続で利下げしてきた。6月会合でも若干の利下げが予想されていたが、既に一桁の水準を実現したこと、トルコの消費者物価上昇率が5月時点で年率11.39%となり実質的なゼロ金利状態にあること、利下げによるリラ売り圧力を回避するために見送ったと思われる。

トルコ政府は国内の金融機関に対して外国金融機関とのリラ取引の上限額を縮小させて5月時点では0.5%までとしている。トルコの金融監督当局は5月7日に国内金融機関に対しBNPパリバ、米シティグループ、スイスのUBSグループの3行とのリラ取引を禁止して実質的に3行を締め出した。これらの規制がここ2週のトルコリラの対ドルでの値動きをわずかなレンジに抑えて動意の乏しい状況が発生していると思われる。

【トルコの感染増加数 千人超えるが安定】

新型コロナウイルスの感染拡大は続いており、6月29日朝集計時点の世界の感染者数は1023万人を超えて死者も50.4万人に達した。米国はNY州の感染が抑えられているものの米国全体では1日の増加数が4万人前後の規模で拡大しており29日朝時点では感染者累計263.5万人となっている。6月26日には4万7341人増となり過去最高記録を更新した。第一波のピークは4月24日で6月7日までは減少傾向にあったが、その後は急激に増加している。経済活動再開を急いたフロリダ、テキサス、アリゾナ、カリフォルニアは爆発的増加といえるレベルに達している。
世界二位のブラジルも1日の増加数が4万人前後で増加しており29日朝時点では131.5万人に達したほか、ロシア(62.7万人)、インド(52.9万人)となった。南米の感染拡大も深刻であり世界全体でのパンデミックは今も加速中だ。

トルコは6月28日終了時点で19万7239人で前日から1356人増、死者5097人で前日から15人増えた。5月30日から6月11日までは日々の感染増加数が千人を切っていたが、6月1日からの経済活動再開により6月12日以降は千人を超える状況が続いている。ただ6月15日に1562人増となって以降はそれ以下の水準で抑えられている。
6月1日からトルコは経済活動再開に入り、7月からは海外からの観光客受け入れも始まる。第二波への懸念は継続していると思われるがエルドアン大統領は6月27日の演説で「3月に始まり、4月に大きく広がり、5月以降緩和している新型コロナウイルス感染症にもかかわらず今年の最初の5か月間で組織産業地帯でだけでも520軒の新しい工場が開設された」「今年の第3、第4四半期には大きな成長率を達成することを予想している」と述べて復興への自信を示した。

【4か月サイクルにおける下落期、当面のポイント】

【4か月サイクルにおける下落期、当面のポイント】

トルコリラ円は概ね4か月前後の底打ちサイクルで推移してきた。2018年8月の通貨危機以降、主要な安値は2019年1月3日、同年5月9日、同年8月26日、2020年1月6日であり、5月7日安値で直近のサイクルボトムをつけて反騰したが、前回のサイクルトップであった1月17日高値から4か月半を経過した6月2日高値で直近のサイクルトップを付けて下落期に入っている印象だ。
5月6日安値14.61円から6月2日高値16.29円までの上昇幅に対する半値押しが15.45円であり、現状はまだ半値押しよりも若干上の位置にあるが、6月23日安値15.47円を割り込んで一段安し始めるところからは半値押しレベルを下回って下落感が強まる可能性があると思われる。仮に4か月サイクルによる下落期が継続する場合、次の底形成期は9月序盤にかけてと想定されるが、2018年8月のトルコ通貨危機、2019年も8月26日に安値を付けており、8月にかけては安値試しへ進みやすいのではないかと思われる。

当面は対ドルでのトルコリラの動きが鈍いため、ドル円と同調する動きと思われる。
(1)当初、6月26日夜安値15.56円を下値支持線、6月25日夜高値15.67円を上値抵抗線とする。
(2)6月26日夜安値割れ回避か、わずかに割り込んでも早々に切り返すうちは29日の日中から30日にかけての間への上昇余地ありとし、25日夜高値超えからは15.70円台後半(15.75〜15.80)試しを想定する。15.75円以上は反落注意圏とするが、15.60円以上での推移が続く場合は高値試しを続ける可能性があるとみる。
(3)6月26日夜安値割れから続落に入る場合は23日深夜からの戻り一巡による下落再開を疑い23日深夜安値15.47円試しとする。15.50円以下は買い戻しも入りやすいとみるが、円高が加速する場合は15.40円前後へ下値目途を引き下げる。

【当面の主な経済指標等の予定】

6月29日
 16:00 6月経済信頼感 (5月 61.7、予想 71.0)
6月30日
 16:00 5月貿易収支 (4月 −45.6億ドル、予想 -18.0億ドル)
7月01日
 16:00 6月イスタンブール製造業PMI (5月 40.9、予想 48.9)
7月02日
 20:00 トルコ中銀金融政策会合議事要旨公開
7月03日
 16:00 6月消費者物価上昇率 前年比 (5月 11.39%、予想 12.25%)
 16:00 6月消費者物価上昇率 前月比 (5月 1.36%、予想 0.80%)
 16:00 6月生産者物価上昇率 前年比 (5月 5.53%、予想 6.39%)
 16:00 6月消費者物価上昇率 前月比 (5月 1.54%、予想 0.90%)
7月10日
 16:00 4月失業率 (3月 13.2%、予想 15.6%) 

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る