トルコリラ円見通し 新興国通貨安一服、4か月サイクルでのリバウンド中(20/5/25)

5月20日朝安値15.75円の後、21日朝安値15.74円、23日早朝15.74円等の安値を付けたところは買い戻されているものの、新たな高値更新へ進めずにいる。

トルコリラ円見通し 新興国通貨安一服、4か月サイクルでのリバウンド中(20/5/25)

トルコリラ円見通し 新興国通貨安一服、4か月サイクルでのリバウンド中(20/5/25)

〇トルコリラは対円対ドルともに暴落後の反騰一服で横ばい推移
〇先週トルコ中銀は9回連続となる利下げを実施したが、トルコ売りとはならず
〇トルコの経済指標も改善の兆し、今週は5/29の1QGDPに注目
〇トルコ国内の感染者増加は1,000人以下に減少
〇コロナショックの新興国通貨への影響、楽観的なアフターコロナ期待の継続の有無、見極めが難しい
〇トルコリラ円は一段高状態を維持しており、もう一段高へ進む可能性が残っている印象
〇15.74割れでも15.60あたりで止まり15.80を回復する場合はもう一段高の可能性
〇15.92上抜けの場合リバウンド継続の可能性

【概況】

トルコリラ円は5月7日午後に14.61円へ続落して史上最安値を更新したが、暴落商状一巡で7日当日から5月19日まで9日連続の日足陽線で反騰し、5月19日夜にはドル円が108円台に到達する中で15.92円まで一段高したが、その後は新たな高値更新へ進めずに20日から22日までの間は15.80円を挟んでほぼ横ばいの推移となっている。5月20日朝安値15.75円の後、21日朝安値15.74円、23日早朝15.74円等の安値を付けたところは買い戻されているものの、新たな高値更新へ進めずにいる。

対ドルでのトルコリラは5月7日に7.27リラの史上最安値まで大幅下落となり2018年8月のトルコ通貨危機時の安値7.23リラを超える下落となったが、その後は暴落一巡で反騰入りとなり、5月20日から22日までは3連騰となった。5月19日に6.75リラまで戻した後は新たな高値更新へ進めずに下げ一服で横ばいという様相だ。日足では5月19日の高安レンジが6.88リラから6.75リラであり、20日以降はその範囲内でややジリ安の展開だ。暴落一巡からの反騰で高値を出し切って再び下落感が強まるには5月19日のレンジを超えるドル高リラ安へ動くことが必要で、今のところは暴落後の反騰一服で様子見という状況と思われる。

【新興国通貨安一服だが、アルゼンチンのデフォルトやブラジルの感染爆発への懸念も】

新型コロナウイルスの感染拡大が新興国経済を直撃しており、3月から5月序盤にかけては新興国通貨売りが加速した。その中でも財務体質の弱い南米は感染爆発の中心地がブラジルへ移り資源相場が下落する中で打撃を被っている。特に財務体質の脆弱なアルゼンチンでは5月22日に5億ドル規模のドル建て債券のデフォルト(債務不履行)に陥った。同国は何度もデフォルトを繰り返してきた国ではあるが、2014年以来9度目となる。ただし、アルゼンチンの外貨準備は現時点で430億ドル相当あり、今回のデフォルトは支払い能力があるものの債務再編交渉の決裂によるテクニカルなデフォルトとされる。いずれにしてもデフォルトであり5月22日には対ドルで66.19ペソまで下落して史上最安値を更新した。

感染爆発の影響が深刻なブラジルの通貨レアルは5月8日に対ドルで5.992レアルを付けて史上最安値を更新したがその後は暴落一服でリバウンドに入っており、22日も対ドルで上昇、最安値からは8%近く戻している。またメキシコペソも4月6日に対ドルで25.75ペソの史上最安値を付けた後は落ち着いている。
アルゼンチンペソを除いて新興国通貨安はコロナショックの初期的なパニック反応により外資が投資マネーを一挙に引き上げたことで発生した。投資マネーの流出規模はリーマンショック時を上回るようなペースだったともいわれているが、G7等のドル資金供給や主要国の大規模な利下げと量的金融緩和等により一服している。
トルコリラの大幅下落もその後の反騰も新興国通貨の全般的な暴落とその一服という流れに同調しており、現状はリバウンド一服ではあるが落ち着いている。

【利下げを消化して復興期待感強められるか】

トルコ中銀は5月21日の金融政策委員会(MPC)で政策金利の1週間物レポ金利を8.25%とし、従来の8.75%から0.5%引き下げた。9会合連続での利下げであり、消費者物価上昇率が10%前後の中にあって実質的なマイナス金利状態に入っている。新興国通貨安の趨勢のなかでの利下げ継続断行ということで、リラ売りが加速しかねない状況でもあったが、市場の反応は冷静で、想定通りとして大きな売り圧力は見られなかった。
先週のトルコ経済指標もやや落ち着いた数字が多かった。5月の消費者信頼感指数は4月の54.9から59.5へ改善して悪化予想に反した、自動車生産や観光客等は前年比で9割以上のマイナスとなったが、経済活動の急激な停止と移動制限・海外渡航がほぼストップする状況だったために想定されたことだった。

5月22日に発表された5月の景況感は4月の66.8から76.9へ悪化予想に反して上昇した。5月の設備稼働率も4月の61.6%から62.6%へ若干改善し、これも悪化予想に反した。市場予想にはコロナショックによる悲観的なバイアスがかかったものが多く、実際はやや予想よりも良いか予想外に4月からは改善していることとなったため、トルコリラにとっては下支え要因になったようだ。
今週は5月29日に第1四半期のトルコGDP発表があるが、前年比に対する市場予想は前期の6.0%から4.9%への低下、前期比では1.9%からマイナス1.2%へ悪化が予想されている。3月前半まではトルコの感染者は発生しておらず、3月末から急激に拡大したことや4月からの経済活動制限とロックダウン等を踏まえれば、この期間の数字はその後の実体を反映していないものとして市場の反応も限定的なものになりやすいと思われるが、4−6月期は相当に悪化するのではないかと懸念される。

【トルコ国内の感染者増加は5月20日から1日千人以下に減少】

5月24日時点での世界の感染者数は549万人を超えて死者は34.6万人を超えた。米国は168万人を超え、死者も9万9300人に増えた。ブラジルは36万人を超えて第二位に浮上、前日比で2万2716人の増加となった。ロシアはブラジルに抜かれたが34.4万人を超えて世界第三位、中南米の感染拡大が顕著となっている。
トルコの感染者数は5月24日時点で前日比1141人増の15万6827人、死者は32人増の4340人となった。感染者増加数は4月11日の5138人増をピークに減少傾向に入り、5月7日以降は2000人を切り、5月20日には千人を切った状況まで改善していたが、23日と24日は千人を超えた。死者も4月19日の127人をピークに大幅に減少が続いており、相当程度に落ち着いてきた印象だ。
5月23日からラマザン・バイラム(5月24〜26日、断食明け祭)までの間はトルコ全土で外出禁止となっているが、5月29日からは現在禁止されている集団礼拝等が制限付きで再開される等、経済社会活動再開への動きは徐々に始まりつつある。

【4か月サイクルのリバウンド】

【4か月サイクルのリバウンド】

トルコリラ円は概ね4か月前後の周期により底打ちサイクルで推移してきた。2018年8月の通貨危機以降では、2019年1月3日底、同年5月9日底、同年8月26日底、今年1月6日底とほぼ4か月周期で底打ちし、1月6日底からちょうど4か月目となる5月7日に史上最安値を付けて反騰している。このため、現在は4か月サイクルレベルでの反騰期という見方ができるが、問題はリバウンドが短期的なものに留まるのかどうかということに尽きる。

今年1月6日からの反騰は1月17日まで数えで10日、去年8月26日底からの反騰は27日、去年5月9日からの上昇は7月31日まで3か月近くの長期だったが、昨年1月3日底からの反騰は1月28日まで18日間で1か月持たなかった。今回は昨年同期の底打ちが7月末まで継続したように長期化してもよいのだろうが、コロナショックの新興国通貨への影響や金融市場全般が楽観的なアフターコロナ期待の上昇をもう少し継続するのかどうか、見極めが難しい。今年1月からの反騰並みに短ければ5月19日までの9日間の反騰ですでに戻り一巡している可能性も考えられる。5月19日高値を超えても5月末を超えて6月まで上昇基調を継続できるのかどうかはまだ見極められないところだが、6月に入っても上昇基調を継続するなら、昨年同期並みに7月へ向けてリバウンドが継続する期待も出てくるかもしれない。

【当面のポイント】

5月19日高値15.92円の後はほぼ横ばいの推移となっている。鋭角的な反落を発生させずに一段高状態を維持しているので、もう一段高へ進む可能性が残っている印象だ。
(1)当初、5月19日高値15.92円を上値抵抗線、その後の安値である5月23日朝安値15.74円を下値支持線とみておく。
(2)23日朝安値を割り込む場合は15.60円前後への下落を想定するが、その前後までの下げから15.80円を回復するなら一段高状態でのややジリ安気味の調整期とし、調整一巡から一段高へ進む可能性は残ると思う。

(3)5月19日高値を上抜く場合、4か月サイクルのリバウンドがもう少し継続してゆく可能性ありとみて上値目途を16.00円から16.10円台前半にかけてのゾーンと想定する。16円以上は反落注意圏に入ると思うが、16円台に定着するようならリバウンドはさらに伸びる可能性も出てくると思われる。
(4)15.60円を割り込み、その後の15.70円以下での推移で安値更新が続き始める場合は5月7日からのリバウンド一巡による下落再開が疑われる。その場合は15.50円、15.40円、、、と段階的に下値目途が切り下がってゆく可能性があると注意する。

【当面の主な経済指標等の予定】

5月28日
 16:00 5月経済信頼感指数 (4月 51.3)
5月29日
 16:00 1−3月期GDP 前年比 (前期 6.0%、予想 5.0%)
 16:00 1−3月期GDP 前期期 (前期 1.9%)
 16:00 4月貿易収支 (3月 -53.9億ドル、予想 −39.8億ドル)
6月01日
 16:00 5月イスタンブール製造業PMI (4月 33.4、予想 40.6)
 20:00 トルコ中銀 MPC(金融政策会合)議事録主旨公開
6月03日
 16:00 5月消費者物価 前年比 (4月 10.94%)
 16:00 5月消費者物価 前月比 (4月 0.85%)
 16:00 5月生産者物価 前年比 (4月 6.71%)
 16:00 5月生産者物価 前月比 (4月 1.28%)

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る