ユーロ週報「欧州と英国の悪材料が上値を抑える」(2月第2週)

ユーロ円は水曜欧州市場を高値とした一週間で行って来いの値動きでした。

ユーロ週報「欧州と英国の悪材料が上値を抑える」(2月第2週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロは、週初から一貫して下げ続ける展開となりましたが、週前半はドル円と同じくドル高によるユーロ安が中心となり、ユーロ円でもリスクオフ巻き返しの動きが見られたことから下げ自体は緩やかなものとなりました。そこに週後半は英国のEU離脱後の協議難航懸念によるポンド売りがリードするユーロ売りとなりました。結局週を通して150pip弱のユーロ安となり、ユーロ円は水曜欧州市場を高値とした一週間で行って来いの値動きでした。

先週の経済指標ですが、7日金曜に発表されたドイツの12月鉱工業生産は、前月比−0.2%の予想に対して−3.5%と前月11月の+1.2%(上方修正)から大幅に低下し、2009年1月以来の悪い数字となりました。外需の影響が大きいドイツの製造業の低迷は、今後予想される中国発の景気減速懸念や英国のEU離脱後のことも含め、欧州全体の景気減速懸念へとつながるリスクを感じさせる内容でした。

今週は経済指標的には狭間の週という感じで、あまり目立った材料は見当たりませんが、英国とドイツの1〜3月期GDPが発表されますので、弱い数字が出た場合には先週のユーロ安の流れをより強める可能性があります。

また、週末にアイルランドで総選挙がありましたが、得票率では野党第2党の左派シンフェイン党が24.5%でリード、野党第1党の中道右派共和党が22.2%、与党の同じく中道右派統一アイルランド党が20.9%となっています。シンフェイン党は候補者が少ないことから議席数では第2党となるものの、この結果を受け政権参加を要求しています。

しかし、共和党も統一アイルランド党も、左派で元IRAの政治団体であるシンフェイン党と連立は組まないと言っていることから、政権交代はありそうなものの連立協議が難航しそうなことは確実ですし、アイルランドの政治的混乱はEUにとっても英国にとっても新たな頭痛の種となってくる可能性があり、ポンドとユーロの上値を抑える要因となってくるのではないかと見ています。

ちなみに、今回得票率で首位となっているシンフェイン党はアイルランドと北アイルランドの南北統一を掲げていることから、連立要件に統一の国民投票実施を求めていることもあり、おそらくはこれまではライバルであった統一アイルランド党と共和党の大連立という流れに最終的には進む可能性が高そうです。

今週も材料的にはユーロ安方向へ動きやすいものが多いのですが、テクニカルにはどうか日足チャートを見てみましょう。

今週の週間見通しと予想レンジ

12月末の高値から引いたレジスタンスラインは良いのですが、それと平行に引いていたラインは既に下抜けしていますので、暫定的に先週安値に合わせて引き直してみました。先週後半の下げで、1月安値も11月安値も下回ってきたことで、ターゲットとしては10月安値の1.0879を視野に入れる動きになってきていると言えそうです。

ただ、先週の下げ幅が最近にしては大きいことを考えると、その下げに対する調整として38.2%戻しとなる1.1001、ほぼ大台の1.10が戻しのターゲットともなりレジスタンスともなる水準と言えるでしょう。下値は引き続き広めに見て上述の10月安値水準を考えておいた方がよさそうですから、今週は1.0880レベルをサポートに1.1000レベルをレジスタンスとするレンジを見ておきます。

今週のコラム

今週のコラム

今週はポンドドルの日足チャートをご覧ください。

ポンドドルは、1月こそ狭いレンジで横ばいでしたが、2月に入り下げが目立ち始め、1月安値と昨年9月安値からのサポートライン(ピンク)をほぼ同時に下抜け、テクニカルにも一段の下げを考える段階にあると言えます。

近いところでは11月安値の1.2769レベル(青の水平線)を視野に入れる流れと考えられますが、この水準も下回る動きになってくると大きめの下げを見る可能性が高まります。ポンドもユーロも好材料が見当たらない中で、お互いに足を引っ張りあって下げるような展開を今週も見ることとなりそうです。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

2月10日(月)
 (特になし)

2月11日(火)
18:30 英国10〜12月期GDP速報値
18:30 英国12月鉱工業生産
24:00 パウエルFRB議長議会証言(下院)

2月12日(水)
19:00 ユーロ圏12月鉱工業生産
24:00 パウエルFRB議長議会証言(上院)

2月13日(木)
16:00 ドイツ1月CPI
17:30 スペイン中銀総裁会見

2月14日(金)
16:00 ドイツ10〜12月期GDP速報値
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP改定値
19:00 ユーロ圏12月貿易収支

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時-NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

2月3日(月)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場以降はポンドとともに水準を切り下げることとなりました。これは週末にジョンソン英首相がEUとの協議で強硬な姿勢を示していたことから、移行期間中に協議がまとまる可能性が一段と難しそうだとの懸念によるものでした。NY市場では1.1035レベルの安値を付けた後はやや買い戻しも出ての引けとなりました。


2月4日(火)
ユーロドルは、対ドルではドル円同様にドル買いユーロ売りとなったものの、前日の中国市場再開後の楽観的な見方がユーロ円でも円安に動いたことから、ユーロドルとしては緩やかな下落にとどまりました。ユーロ円はNY市場で高値120.98とリスクオフの巻き返しによる買いが目立っていました。


2月5日(水)
ユーロドルは東京市場では若干の動きはあったものの鈍い展開。欧州市場に入りドル円とともにドル買いの動きが目立ったことでユーロドルはじり安の流れ、NY市場では1.0994レベルまで水準を下げて安値圏での引けとなりました。トランプ大統領弾劾裁判は無罪となりましたが、反応は見られませんでした。

2月6日(木)
ユーロドルはNY市場までは小動きとなっていましたが、EUと英国との交渉難航を懸念したポンド売りがユーロ売りとなり、ユーロドルは一時1.0964レベルの安値をつけました。交渉懸念は貿易面だけでなく金融面においても英国拠点の金融機関の打撃となるとの話も出てきて、今後の他分野での交渉において欧州通貨の上値を抑える要因となるとの思惑が広がりました。


2月7日(金)
ユーロドルは東京市場では動きが見られなかったものの、欧州市場に入り弱いドイツの経済指標をきっかけにユーロ売りが先行しました。NY市場ではドル売りの動きで一時的にユーロ買いも見られましたが、ペンス副大統領が英国のファーウェイ容認に苦言を呈したことからポンド売りがユーロ売りとなり、安値引けの週末となりました。

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