トルコリラ円見通し 10月末以降の持ち合い転落で下落基調続く(19/12/27)

12月20日未明からの下げ渋りによる18.40円を挟んだ小持ち合いから下放れし始めた印象だ。

トルコリラ円見通し 10月末以降の持ち合い転落で下落基調続く(19/12/27)

【概況】

トルコリラ円は10月末からの「18.80円前後を下値支持線・19円台へ乗せても維持できない持ち合い」から転落し、12月13日から12月19日まで5日連続の日足陰線で一段安となり12月20日未明には18.33円まで安値を切り下げた。
12月20日夜高値18.48円まで小反発した後はややジリ安での推移だったもののクリスマス休場明けまでは新たな安値更新を回避して三角持合いの様相となり、休場明けの12月26日はドル/トルコリラでのドル高リラ安が一服する中でドル円が109.68円まで上昇する流れに乗じて上昇し、27日早朝には18.46円まで戻して20日夜高値に迫ったものの高値更新には至らなかった。
12月27日朝、ドル円が109.50円割れへ失速したために18.32円まで下落して12月20日安値を割り込んだ。このため12月20日未明からの下げ渋りによる18.40円を挟んだ小持ち合いから下放れし始めた印象だ。

既に年末も迫り、新たなきっかけとなる材料には乏しいが、米国株式市場が米中通商協議の第1段階合意によりリスクオン優勢の市場心理から連日のように史上最高値を更新しているのに対して、ドル円は110円手前での失速を繰り返して上値が重い印象だ。12月13日以降のドル円は109円台での小持ち合いだが、110円へ乗せきれないとみてポジション調整的な売りが優勢になると109円割れから一段安へ進みかねず、そうなるとトルコリラ円への売り圧力も強まる可能性がある。またドル/トルコリラは12月13日から24日へ大幅上昇(ドル高リラ安)となった後は上昇一服で落ち着いているものの、10月15日高値を超えたことでの一服と思われるので、再び高値更新へ進む場合は投機筋によるリラ売りが過熱する可能性もあると警戒される。

12月26日に発表された12月の製造業景況感は103.6となり11月の102.0から上昇した。11月の設備稼働率は77.0%で11月の77.2%からは若干低下した。いずれも市場の反応は限定的だった。

年明けの1月6日にはトルコ中銀の金融政策決定会合がある。12月会合まで4会合連続で市場の予想を上回るペースの利下げを繰り返してきたが、エルドアン大統領は政策金利を一桁とする姿勢を表明しているため、現行の12.0%から10%以下へと利下げされる可能性もあると思われる。米連銀が利下げを打ち止めする中でトルコ中銀の大胆な利下げがクローズアップされるとリラ安へ進みやすくなると注意したい。

中東・シリア情勢はひとまず落ち着いているものの、シリアのアサド軍と支援するロシアによる紛争地域への空爆等から難民がトルコ国境へ押し寄せる動きもあり、停戦合意を順守しているトルコが再び軍事行動を取り始めて緊張感が強まる可能性も抱えている。またリビア内線を巡ってもロシアが支援する半政府勢力に対抗してトルコが暫定政府側を支援する動きもある。トルコはロシア製兵器購入で欧米と対立し、シリアやリビア問題ではロシアとの対立もある。地政学的バランスが均衡している内は市場を動かすような事態にはならないと思うが、いつ均衡が崩れても不思議ない状況にあることも念頭に置いておきたい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月20日未明安値を前回のサイクルボトム、20日夜高値を同サイクルトップとした弱気サイクル入りとして25日から27日朝にかけての間への下落を想定してきたが、26日午前の上昇で18.40円を超えたために26日午前時点では24日午後高値18.41円超えを条件として三角持合い終点の25日午後安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。また高値形成期は27日夜にかけての間と想定されるので既に反落注意期に入っているとし、20日未明安値割れからは新たな弱気サイクル入りとした。
12月27日朝の下落で20日未明安値を割り込んだため、底割れにより新たな弱気サイクルに入ったとみる。安値形成期は12月30日午後から1月3日にかけての間と想定し、12月20日から及び0.20円弱の値幅での持ち合いだったために持ち合い幅をもう一つ分減算した18.10円前後へ下落しやすい状況と思われる。また概ね4か月周期の底打ちサイクルにおける底形成期でもあるため、12月13日から12月20日への大幅下落時に近いような下落となる可能性にも注意する。

60分足の一目均衡表では12月27日朝の一段安で先行スパンから転落したがその後の反発で先行スパンを上抜き返している。しかし27日朝高値を上抜けない内は一段安警戒とし、先行スパンから再び転落するところからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は12月20日未明からの三角持合いで安値ラインがほぼフラットだったのに対して指数のボトムが切り上がる強気逆行となってから上昇したが、27日未明に75ポイントを超え手から急落している。20日未明安値を割り込んでの一段安のため、50ポイント以下での推移中は安値試しを続けやすいとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月27日朝安値18.32円を下値支持線、12月27日朝急落前高値18.46円を上値抵抗線とみておく。
(2)18.45円以下での推移中は下向きとし、18.37円割れからは下げ再開とし、27日朝安値18.32円割れからは18.20円前後、さらに年末年始では18.10円割れを試す可能性ありとみる。
(3)18.45円超えからは27日朝高値18.46円試しとし、高値更新の場合は18.55円前後への上昇を想定するが、急反騰の材料が揃わないうちは27日朝高値を超えずに一段安へ進みやすいとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

12月30日
 16:00 12月経済信頼感 (11月 91.3)
12月31日
 16:00 11月貿易収支(10月 -18.1億ドル)
1月02日
 16:00 12月のイスタンブール製造業PMI(11月 49.5)
1月03日
 16:00 12月消費者物価 前年比 (11月 10.56%)
 16:00 12月消費者物価 前月比 (11月 0.38%)
 16:00 12月生産者物価 前年比 (11月 4.26%)
 16:00 12月生産者物価 前月比 (11月 -0.08%)

1月07日 
 23:30 12月財務省現金残高 (11月 79億トルコリラ)
1月10日 
 16:00 11月経常収支 (10月 15.49億ドル)
1月14日
 16:00 11月鉱工業生産 前年比(10月 3.8%)
1月15日
 16:00 10月失業率 (9月 13.8%)
 16:00 11月小売売上高 前月比 (10月 -0.2%)
 16:00 11月小売売上高 前年比 (10月 5.9%)
1月16日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 12.0%)

【最近のトルコ・シリア情勢推移】

10月14日 米国がトルコに経済制裁発動
10月23日 トルコが米国提案の恒久的停戦を受け入れ、米国のトルコ制裁解除
10月27日 トランプ大統領、IS指導者バグダディ氏殺害を報告。
10月29日 米下院によるトルコ制裁決議可決


11月01日 トルコとロシア、シリア北東部の合同巡回開始
11月11日 トルコ政府、IS戦闘員の本国送還を開始
11月13日 トランプ米大統領とエルドアン大統領がワシントンで首脳会談
11月25日 トルコがロシア製S400ミサイルシステムの試験開始

12月03日 NATO首脳会議、英独仏とトルコの首脳会談
12月04日 米トランプ大統領とエルドアン大統領会談、特に動き無し
12月11日 米上院外交委員会がトルコに対する制裁法案を可決
12月12日 米上院がオスマン帝国時代のアルメニア人殺害を「ジェノサイド認定」
12月21日 トルコとリビア西部暫定政府が軍事協定締結、武器輸出の場合は国際的批判の可能性
12月23日 トルコ代表団がロシアを訪問してシリア情勢等について協議
12月26日 エルドアン大統領、リビアへの派兵(暫定政府側支援)を表明
     米トランプ大統領、「トルコは虐殺を食い止めるために取り組んでいる」とトルコ支持

【トルコ中銀 金融政策決定会合(MPCD)予定】

2020年
1/16 金融政策決定会合  1/23 議事録要旨 1/30 インフレ報告書
2/19 金融政策決定会合  2/26 議事録要旨
3/19 金融政策決定会合  3/26 議事録要旨
4/22 金融政策決定会合  4/30 議事録要旨 4/30 インフレ報告書
5/21 金融政策決定会合  6/01 議事録要旨 5/29 金融安定化報告書 
6/25 金融政策決定会合  7/02 議事録要旨
7/23 金融政策決定会合  7/29 議事録要旨 7/29 インフレ報告書
8/20 金融政策決定会合  8/27 議事録要旨
9/24 金融政策決定会合 10/ 1 議事録要旨
10/22 金融政策決定会合 10/28 議事録要旨 10/28 インフレ報告書
11/19 金融政策決定会合 11/26 議事録要旨 11/27 金融安定化報告書 
12/24 金融政策決定会合 12/31 議事録要旨

**********************************************
<年末年始のレポート配信について>
令和元年におけます執筆は、本日分を持ちまして終了致します。
今年も残りわずかとなりましたが、「FX羅針盤・トルコリラ見通し」を、購読頂きました事、厚く御礼申し上げます。
来年は1月6日(月)より再開致します。
より一段、トルコリラ通貨の市場予測や分析レポートとしてお役立てできるよう精進致しますので、引き続き、宜しくお願い致します。
*********************************************

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る