ユーロ週報 今週ももみあい、ややドル安に動きやすい(5月第2週)

欧州経済は引き続き減速懸念が根強く、仮に米中間の貿易摩擦が激化すると中国発の一段の景気鈍化という可能性があります

ユーロ週報 今週ももみあい、ややドル安に動きやすい(5月第2週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週はトランプ大統領の発言から始まるリスクオフ相場に市場参加者の注目は、株式相場を中心に為替市場ではドル円とクロス円が主役の一週間、ユーロドルはすっかり蚊帳の外となり、週間レンジも90pips弱とドル安ではあったものの、比較的静かな動きに留まりました。

欧州経済は引き続き減速懸念が根強く、仮に米中間の貿易摩擦が激化すると中国発の一段の景気鈍化という可能性がありますので、当面は米中間の協議継続がどのような形で影響していくのかを見極める必要があります。ドル円週報に書いた通りで、現段階では関税が増えた分を中国企業が引き受ける形ですから、協議の遅れや更なる第4弾(全ての中国製品への制裁関税)というところまで考えると、新たなチャイナショックに繋がる可能性があります。いつ米中間の本当の合意が見えてくるのかですが、ここまでの経緯を見ている限りユーロドルへの影響は、欧州の悪材料とドル売り要因とが打ち消しあう流れが続きそうです。

もうひとつユーロにとっての懸念材料は英国与野党間におけるブレグジットの協議ですが、先週もまったく進展が見られないどころか、今のままでは全く着地点が見つけられない状態となってきました。期限はまだあるとはいうものの、これまでもそう言って2年間が過ぎてきたことを考えると10月末までに本当に合意できるのかどうか誰もわからないという状況です。

そうした中で、期限が10月に延期されたことに伴って、欧州議会選に英国からも候補者が出ることになりますが、英国内の政党支持率の世論調査では新党のブレグジット党が一番人気で34%の支持率となっているそうです。与党保守党は11%、労働党が21%ですから両者の合計よりも新党の方が人気があることとなります。英国の政治がますます混迷を深めそうなことを考えると、ポンドとともにユーロの上値を抑える要因になってくるでしょう。

さて、今週ですが予定を見てもわかるようにそれほど目立った材料がありません。今週も米中間協議の様子を見てのドルの上下の動きとなってくるでしょうが、中国もすぐに是とは言えないでしょうから、ドルの上値が重たい(ユーロが底堅い)材料となります。一方で欧州と英国を取り囲む材料はユーロ安要因となり、それぞれが打ち消しあう先週のような値動きを継続しやすいと言えそうです。

テクニカルにはどうでしょうか。日足チャートをご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ

ユーロドル日足 
日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

大きくはこれまで同様に年初からの下降チャンネル(ピンクの太線)の中での動きを継続しています。そして短期的には4月安値からのサポートラインと4月下旬の高値から引いたラインとで構成される、小さな上昇ウェッジ(ピンクの細線)の中での動きです。値幅は狭いものの今週もテクニカルには、このウェッジの中か多少上下にずれる程度の動きが想定されますので、1.1150レベルをサポートに1.1280レベルをレジスタンスと、若干ドル安にバイアスをかけたレンジを見ておきます。

今週のコラム

今週のコラム

先週もユーロ円チャートを見ましたが、今週も継続して見てみます。
ドル円での円高の動きが強かったことからユーロ円も一時122.49レベルの安値をつけ123円台半ばへと戻して引けました。先週の安値は年初来安値と高値の61.8%押しにあたる122.29にも近く、いったんテクニカルにはいい水準をつけたという感じがします。

しかし、米中間の貿易摩擦激化によるリスクオフの流れが、当面はユーロ円の上値を抑えやすくすること、また主要3通貨では円がもっとも強いため、ユーロ円という組み合わせでは戻り売りが出やすくなります。現在のユーロ円はピンクの平行線で示した下降チャンネルの中での推移となっていて、このチャンネルの上限がGW最終日に下抜けた長期上昇チャンネルのサポートラインとも重なります。

引き続き上がったところでは売りが出やすいという観点で、123円台後半では実需もトレーダーも売りを構えていると考えてよいでしょう。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

5月13日(月)
(特になし)

5月14日(火)
15:00 ドイツ4月PPI・CPI
17:30 英国4月失業率
18:00 ドイツ5月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏5月景況感


5月15日(水)
15:00 ドイツ1〜3月期GDP速報値
15:45 フランス4月CPI
18:00 ユーロ圏1〜3月期GDP改定値

5月16日(木)
18:00 ユーロ圏3月貿易収支
**:** ユーロ圏財務相会議


5月17日(金)
18:00 ユーロ圏4月CPI
18:00 ユーロ圏3月建設支出
**:** EU財務相会議

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

5月6日(月)
週末にトランプ大統領が対中制裁関税を突如10日から25%に引き上げると発言し、ドル円はリスクオフの動きから円高となりましたが、ユーロはまったくの蚊帳の外に置かれ、終日のレンジは30pipsにとどまりました。ユーロ円はドル円の動きに沿ってアジア時間に123.36レベルまで大幅安となり、引けは124円台に戻す荒っぽい動きとなりました。


5月7日(火)
ドル円がリスクオフでドル安に動く中、ユーロドルは欧州時間に英国与野党のブレグジット協議に進展が見られないとのヘッドラインに反応しポンド売りからのユーロ安となりました。その後もドル円と歩調を揃えてユーロ円売りが目立ったこと、また改めて欧州の景気減速懸念等が悪材料となり、NY市場では1.1167レベルまで水準を下げた後に1.12近くへと戻しての引けとなりました。

5月8日(水)
ユーロドルは前日までと異なりドル売りに反応、ドル円でのドル売りが東京市場ではユーロの買い戻しとなりました。しかし欧州市場に入り、英国与野党のブレグジット協議決裂の可能性を嫌気したポンド売りとともにユーロは上値が重たくなりましたが、終日のレンジは30pips程度にとどまり方向感のはっきりしない一日となりました。


5月9日(木)
ユーロドルはNY市場までは動意薄の動きを続けていましたが、NY市場に入りダウの下げが全般的なドル売りとなったことで、ユーロドルは1.1251レベルまで上伸。引けにかけては調整も入り、1.12台前半へと押して引けました。


5月10日(金)
ユーロドルは、目立った材料は特に無かったこともあって、週半ばからのドルの動きに追随する展開となりました。NY市場までは緩やかなドル安に留まりましたが、NY市場でダウが下げる動きを見せた際には1.1254レベルと前日高値をやや上回りました。その後、引けにかけてはやや押して1.12台前半での週末クローズとなりました。

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