ユーロは一段高か(7月第2週)

CDUとCSUを対立したのち万事決着ということになっていますが、今後の政局にも火種を残したことになるかもしれません。

ユーロは一段高か(7月第2週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、週初こそメルケル首相率いるCDUと歩調を揃えるCSUの対立が高まりゼーホーファーCSU党首の閣僚辞任も、というギリギリの議論が行われましたが、結局はメルケル首相の説得もあり、移民問題に関してCDUと歩調を合わせることで合意しました。ドイツでは同じキリスト教系でもバイエルンのみのCSUと他の州のCDUは別の党であることは先週も書いたとおりですが、一体何がCDUとCSUを対立させたのかは、知っておくべきかと思います。

もともと両党は似たような政策を掲げる兄弟政党ですが、CDUがやや左派よりの動きを見せる中でCSUは従来通りの右派を継続する流れとなっていました。他国からの難民は2015年には100万人を超え当時のバイエルン州知事であったゼーホーファー氏は政府に対して国境での難民流入阻止を要請、しかしその後も難民に寛容な態度を続けていました。今回のEUサミットでは結局他国も国境での難民阻止、つまるところEUには入れないということを基本とする内容で合意しています。

EUサミット後にメルケル首相は、CSUが掲げていた方向で決着したものを全てCDUの成果としたことでCSUが怒ったという流れのようです。大人のしかも政治を付帯にした喧嘩ですから今回は収まったものの、今後の政局にも火種を残したことになるかもしれません。ただ、表向きは万事決着ということになっています。

そして、先週後半にECB内からタカ派発言が出ていますが、今週はドラギ総裁を始めとするECB要人の講演が続きますし、欧州関係の経済指標も連日出てきます。強い数字が出てきた場合には、前回ECB理事会よりも早いタイミングで利上げもあり得るのではないかという思惑が高まってくる可能性があります。次回理事会は今月26日とまだ時間はありますが、前回の内容から変化する可能性もゼロではないこと、また現状ユーロが強めに推移していることからも、利上げ前倒し的な発言やそのきっかけとなる強い数字の場合には注意したいところです。

もうひとつ気になるのは、英国政府の動きです。週末にはブレグジットに関して英国とEUとで合意とのニュースに、週明け早朝はポンドがギャップアップして始まったにもかかわらず、月曜の東京朝に離脱担当相が辞任とのニュースが流れ、ギャップを埋める動きとなりました。いったい、どうなっているのかこちらも内情はもう少し経たないとわからないのですが、新たな離脱担当相が任命されるとのこと。

これについては、離脱担当相のデービス氏は強硬派として知られ、政府が柔軟路線へと方針を転換しつつあることに反発した辞任と考えることが妥当でしょう。他にも強硬派のジョンソン外相をはじめ、まだまだ強硬路線を主張する議員が少なからずいます。はたしてメイ首相が、柔軟路線で党をまとめていくことが出来るのかどうか、元MPC委員の一人からはメイ首相は来週までといった発言まで飛び出しています。

今週は政治問題がドイツから英国に移ったという流れになりますが、ポンドにとってもユーロにとっても悪材料となりかねない、英国政府内での対立で収まりどころを見つけられるのか、メイ首相のお手並み拝見相場からのスタートとなりそうです。

今週の週間見通しと予想レンジ

テクニカルにユーロドルの日足チャートをご覧ください。

*日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

先週はユーロ高が続いたこともあって、5月14日高値と6月高値を結んだレジスタンスラインを上抜けたことで三角もちあい(ピンクのライン)はいったん終了、上値のターゲットを探る段階にあると言えます。その場合、6月安値とその後の押し、そしてその後のトレンドラインの上抜けというN波動を考えることができ、その場合は127.2%(161.8%の平方根)エクスパンションが1.1797、161.8%エクスパンションが1.1871となっていて(青のターゲット)、少なくともこれらのターゲットを目指しやすいということは、テクニカルな観点から考えることができます。

いっぽう下値については、N波動の最初の山となる1.1721水準が下げ止まりやすい水準となってきます。材料的に英国の悪材料がそれほどユーロに波及しないとすれば、下値は限定的に考えてもおかしくはありません。そうなると、1.17水準と1.18台後半と一段のユーロ高を見込むこととなりますが、6月高値が1.1852であったことを考えると同水準も引っかかりやすい水準です。結論として、今週は1.1700レベルをサポートに1.1850レベルをレジスタンスとするユーロ続伸の値動きを考えておきます。

今週のコラム

本文内に書いたとおりですが、英国のEU離脱が柔軟路線へと舵を切ってきたことで、きちんと話が進むのだろうかと逆に心配になってきます。先週はブックメーカーのブレグジットに対してYes / Noの倍率を紹介しましたが、今の所目立った変化は無いようです。今後もブックメーカーの倍率は時々見ていきましょう。

さて、今週はポンド(GBPUSD)のチャートを見てみましょう。

今週のコラム

ユーロドルと似たチャートの形となってはいますが、ポンドは5月6月と安値も切り下げていますので、いまだピンクの平行線で示した下降チャンネルの中での推移を続けていると見ることができます。今朝いったん高値をトライしたことで、レジスタンスラインの所まで来たところに離脱担当相辞任のニュースで下げています。

ポンドについてはこの5月初めからのレジスタンスラインを上抜けられればユーロドル用にポンド買いの動きが見られ、逆に上値を抑えられて反落ということになると、ユーロポンドでユーロ買い・ポンド売りが出やすくなると考えることができそうです。ポンドにとっては週前半の動きが、今後の鍵となってくるように思えます。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

7月9日(月)
14:45 スイス6月失業率
15:00 ドイツ5月貿易収支
16:50 英中銀副総裁講演
20:00 オーストリア中銀総裁講演
22:00 ドラギECB総裁講演

7月10日(火)
15:45 フランス5月鉱工業生産
17:30 英国5月鉱工業生産、貿易収支
18:00 ドイツ7月ZEW景況感指数
18:00 ユーロ圏7月ZEW景況感指数

7月11日(水)
 16:00 ドラギECB総裁講演
24:35 英中銀総裁講演

7月12日(木)
15:00 ドイツ6月CPI改定値
15:45 フランス6月CPI改定値
18:00 ユーロ圏5月鉱工業生産

7月13日(金)
20:00 英中銀副総裁講演

前週のユーロレンジ

       始値   高値  安値  終値

ユーロドル 1.1678  1.1768  1.1591  1.1743
ユーロ円  129.32  129.96 128.42  129.72

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週のユーロ

7月2日(月)
ユーロドルは週末に飛び出したドイツCSU党首が辞任の意向とのニュースが尾を引き、NY市場の昼過頃までは一貫してユーロが売られる展開が続きました。一時1.1591レベルの安値をつけましたが、メルケル首相(CDU)とゼーホーファーCSU党首との間で移民に関する合意と閣僚継続の確認がなされたとのニュースをきっかけに上昇、1.16台半ばへと戻しての引けとなりました。

7月3日(火)
ユーロドルは、前日のCDUとCSUの移民問題合意の流れ以降底堅い動きを続け、東京後場以降はユーロ円の買いも手伝って欧州市場序盤に1.1673レベルの高値をつけました。その後は4日がNY市場休場となることもあって小動き、1.1650を挟んでもみあいのまま引けました。

7月4日(水)
ユーロドルは東京市場ではドル円同様にドル売りの動きから底堅い動きとなっていましたが、欧州市場に入りユーロクロスの売りが出たことから50pipsほど水準を切り下げ、その後は安値圏でのもみあいとなりました。欧州市場引け間際にECB関係者から2019年末の利上げでは遅すぎるとの発言が出たことで日中の高値圏へと反発、その後は上下とも動きにくい流れの後、やや押して引けました。

7月5日(木)
ユーロドルは、東京後場までは全く動かずユーロが対ドル、対円で大口の買いが出たことから1.17台を回復しての海外市場入り。その後も底堅い展開を続けNY前場には1.1720レベルと6月26日高値に並んだものの抜けられず、FOMC議事録では欧州市場の下振れリスクについて言及されていたことから1.1672レベルまで下押し、その後やや戻して引けました。

7月6日(金)
 ユーロドルは、東京市場では動きは見られなかったものの、米国の関税発動の影響も少なかったことで欧州株も強い動きとなったことから、前日に続いての買いの動きとなりました。米国雇用統計後のドル売りもユーロドルの上昇を支え、一時1.1768レベルまで高値を切り上げ、引けにかけてやや押しての週末クローズとなりました。

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