トルコリラ円見通し トルコ中銀の政策金利維持後に戻してから失速(22/5/27)

トルコリラ円の5月26日は7.82円から7.71円の取引レンジ、27日早朝の終値は7.76円で前日終値の7.77円からは0.01円の円高リラ安となった。

トルコリラ円見通し トルコ中銀の政策金利維持後に戻してから失速(22/5/27)

トルコリラ円見通し トルコ中銀の政策金利維持後に戻してから失速

〇トルコリラ円、5/26政策金利発表直後7.71の安値をつけたが、買い戻し優勢となり7.82まで持ち直す
〇買い戻し一巡後は再び7.80を割り込み、安値更新を試しかねない状況での推移
〇対ドル、5/26午後に16.45へ安値を切り下げた後、リラ売り一服
〇政策金利発表直後16.24まで反発したが戻り売りで16.30台へ下落、5/27午前序盤も16.30台で推移
〇トルコ中銀、政策金利の週間レポレートを現行の14.0%で据え置く、5会合連続での金利据え置き
〇7.75割れからは7.71試しとし、7.71割れからは7.65前後への下落を想定する
〇7.82を超える場合は、7.85から7.87にかけてのゾーンを試す上昇を想定する

【概況】

トルコリラ円の5月26日は7.82円から7.71円の取引レンジ、27日早朝の終値は7.76円で前日終値の7.77円からは0.01円の円高リラ安となった。
5月26日20時にトルコ中銀は金融政策委員会(MPC)を開き政策金利の週間レポレートを14.0%に据え置いた。市場予想と一致したことで発表直後に7.71円の安値をつけたもののサプライズは無いとしてイベント通過後の買い戻し優勢へと転じて7.82円までいったん持ち直した。しかし高インフレが続く中で利上げをしないトルコ中銀及びエルドアン政権の金融政策に対する不信感は大きく、買い戻し一巡後は再び7.80円を割り込んでおり、安値更新を試しかねない状況での推移となっている。

【政策金利据え置き反応は鈍かったが、1ドル=16リラ台前半で安値圏にとどまる】

ドル/トルコリラの5月26日は16.45リラから16.24リラの取引レンジ。27日早朝の終値は16.34リラで前日終値の16.34リラと変わらずだった。
5月5日にトルコの4月CPI上昇率が約70%へと大幅に加速したことをきっかけにリラ売りが加速し、5月9日に3月11日に付けた1ドル15リラを超えてさらに勢い付き、5月24日には1ドル=16リラを超えてから25日も16.40リラへ続落、26日午後には16.45リラへ安値を切り下げた後はリラ売り一服となり26日夜のトルコ中銀金融政策決定会合を待った。
市場予想通りに政策金利が14.0%で据え置かれたことでいったんイベント通過によるリラの買い戻し優勢となって16.24リラまで反発したものの、早々に戻り売りにつかまり16.30リラ台へ下落、27日午前序盤も16.30リラ台での推移を続けて安値更新を伺う位置取りとなっている。

【トルコ中銀への利上げ催促型のリラ売りが勢い付く】

トルコ中銀のMPC(金融政策委員会)は政策金利の週間レポレートを現行の14.0%で据え置いた。据え置きは5会合連続であり、昨年9月から12月までの4会合連続での利下げにより19.0%から14.0%まで大幅に引き下げた後はインフレ動向を踏まえて1-3月期を様子見とする姿勢を示した。
様子見とされた1-3月期もインフレはさらに悪化したため、エルドアン大統領や中銀としての利下げ再開の条件は整わず、さりとてインフレを一層悪化させかねない追加利下げには踏み切れないとして現状維持が長引いている状況だ。
トルコ中銀は今回の政策金利据え置きについて、「地政学的な要因によるエネルギー価格の上昇と経済のファンダメンタルズに裏付けられていない価格形成の一時的な影響によるもの」とし、ウクライナ情勢が落ち着きファンダメンタルズに即した価格形成が反映され始めればディスインフレへ向かうとの見方を示し、インフレ対策としての利上げは不要で現状維持にとどめたという姿勢を示した。

トルコのインフレ高進は昨年から始まっている。パンデミック発生後の世界規模での金融緩和を背景に感染の波が繰り返されながら景気回復へ進んだことが世界規模での人手不足とモノ不足によるサプライチェーン混乱を招いたことがインフレ高進の背景であり、そこにウクライナ戦争とロシア制裁の影響が加わったことによりインフレが一層悪化したといえる。さらにトルコにおいては無謀な利下げ政策がトルコリラを史上最安値更新へと暴落させたために通貨安によるインフレが一段と深刻化したといえる。そうした状況を無視してインフレの収まりを期待して利上げをしないということは市場の不信任感を助長するものであり、リラ安はさらに継続してゆくのではないかと懸念される。

5月26日夕刻に発表された5月経済信頼感指数は96.7で4月の94.7からは改善した。
政策金利発表後だった週次の外貨準備高はグロスで600.1億ドルとなり前週の612.0億ドルから減少、ネットでは95.6億ドルとなり前週の115.3億ドルから減少したが、直近で最低水準となった今年1月の75.5億ドル以来の100億ドル割れの低水準となった。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月19日夜安値を直近のサイクルボトムとして底割れからは弱気サイクル入りとしていたが、23日夜へ戻したところからの反落で底割れに余裕が乏しくなったために24日午前時点では5月23日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして5月24日夜から26日夜にかけての間への下落を想定した。
26日夜の政策金利発表を前後して一段安したところからいったん戻しているため、26日夜安値で直近のサイクルボトムを付けて強気サイクル入りしたと思われ、底割れ回避のうちは27日の日中から30日の日中にかけての間への上昇余地ありとみるが、既に戻り一巡から反落しているためにサイクルトップを付けて新たな弱気サイクル入りとなっている可能性がある。このため7.75円割れからは下向きとして26日夜安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして31日夜から6月2日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では、5月26日夜の反発では先行スパンに届かず、遅行スパンもいったん好転=実線を上抜いたところから再び悪化しているので戻り一巡による下落再開の可能性ありとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。また遅行スパンが一時的に好転しても先行スパンへ潜り込めないうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とし、先行スパンへ潜り込む上昇がみられる場合は遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は5月26日夜の反騰時に60ポイントへ迫ったもののその後の反落で50ポイントを割り込んでいるため既に戻り一巡から下落期に入っている印象だ。55ポイント以上へ切り返す場合は上昇再開とするが、50ポイント以下での推移中は下向きとし、26日夜安値を割り込む場合は20ポイント台への低下へ向かうとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.71円を下値支持線、7.82円を上値抵抗線とみる。
(2)7.79円から7.82円手前にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいところとし、7.75円割れからは7.71円試しとし、7.71円割れからは7.65円前後への下落を想定する。7.65円以下は反騰注意とするが、7.75円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)7.82円を超える場合は7.85円から7.87円にかけてのゾーンを試す上昇を想定するが、7.85円以上は反落警戒とし、その後に7.77円を割り込む場合は下げ再開とみる。

【当面の主な予定】

5月31日
 16:00 1-3月期GDP 前期比 (10-12月 1.5%)
 16:00 1-3月期GDP 前年同期比 (10-12月 9.1%)
 16:00 4月 貿易収支 (3月 -81.7億ドル)
6月1日
 16:00 5月 イスタンブール製造業PMI (4月 49.2)
6月2日
 20:00 トルコ中銀 金融政策委員会議事要旨
 20;30 週次 外貨準備高 グロス 5/27時点 (5/20時点 600.1億ドル)
 20;30 週次 外貨準備高 ネット 5/27時点 (5/20時点 95.6億ドル)
6月3日
 16:00 5月 消費者物価 前月比 (4月 7.25%)
 16:00 5月 消費者物価 前年同月比 (4月 69.97%)
 16:00 5月 消費者物価コア指数 前月比 (4月 4.5%)
 16:00 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 52.4%)
 16:00 5月 生産者物価 前月比 (4月 7.67%)
 16:00 5月 消費者物価 前年同月比 (4月 121.82%)


注:ポイント要約は編集部

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