『下落リスクに要警戒。実質金利のマイナス化がトルコリラの重石』
〇トルコ円週初13.08まで下落するも週央にかけ4か月ぶり高値13.34まで上昇
〇エルドアン大統領とUAE皇子の電話会談による両国関係改善期待等が背景
〇その後はトルコ中銀総裁の利下げ示唆、トルコCPI高進による実質金利低下に反落
〇トルコ円、テクニカルの地合い強いが上方に200日線控え上昇余地は乏しいか
〇ファンダメンタルズもトルコ経済の不透明感、エルドアン大統領の利下げ圧力等売り材料多い
〇トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想、来週の予想レンジ(TRYJPY):12.95ー13.35
今週のレビュー(8/30−9/3)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初13.15円で寄り付いた後、翌8/31にかけて週間安値13.08円まで下落しました。しかし、先週末金曜日(8/27)に記録した直近安値13.07円をバックに下げ渋ると、@エルドアン大統領とUAEのムハンマド皇子との電話会談(両国の緊張関係が改善されるとの期待感)や、Aトルコ経済の回復期待(トルコ第2四半期GDPおよびトルコ8月製造業PMIの良好な結果)、B世界的な株価上昇(リスク選好の新興国通貨買い)が支援材料となり、週央にかけて、週間高値13.34円(4/29以来、約4ヵ月ぶり高値圏)まで上昇しました。もっとも、週後半にかけては、Cトルコ中銀カブジェオール総裁が「利下げ局面が近い」ことを示唆したとの一部報道や、Dトルコ8月消費者物価指数(結果19.25%、予想18.75%、前回18.95%)の伸び率高進(トルコのCPIが政策金利である19.00%を上回ったことで改めて実質金利のマイナス化が市場の焦点→トルコリラ売り)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間9/4午前6時15分現在)では、13.18円前後まで値を崩す展開となっております。
来週の見通し(9/6−9/10)
トルコリラの対円相場は6/2に記録した約7ヵ月ぶり安値12.45円をボトムに反発に転じると、今週半ばにかけて、約4ヵ月ぶり高値となる13.34円まで上昇しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、90日移動平均線や21日移動平均線、雲上下限を上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する三役好転やバンドウォークも成立するなど、テクニカル的に見て「地合いは強い」と判断できます。但し、上方には強力なレジスタンスポイントとして市場参加者に注目されている200日移動平均線が控えている為、余程強いトルコリラ買い材料が出てこない限り、続伸余地は乏しいと考えられます(急ピッチで上昇した反動が出易い相場環境)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@トルコ経済の先行き不透明感(新型コロナウイルス感染再拡大懸念)や、AEU及び米国との関係悪化懸念、Bエルドアン大統領による根強い利下げ圧力(トルコ中銀カブジェオール総裁は今週「利下げ局面が近い」ことを示唆→中銀の独立性への疑念からリラ売り材料と見做される恐れ)、Cアフガニスタンを巡る地政学的リスク(アフガニスタンからの難民受け入れ問題)、Dトルコリラの実質金利マイナス化(CPI上昇率が政策金利を上回ったことで実質金利がマイナス化→通常であれば利上げ観測が台頭する局面であるが、トルコの場合、エルドアン大統領への配慮から利上げの選択肢が取りづらい為、実質金利低下は素直にリラ売り材料と見做され易い)など、トルコリラの下落を意識させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(9/23に予定されているトルコ中銀会合に向けてトルコリラにはもう一段下押し圧力が加わると予想)。
来週の予想レンジ(TRYJPY):12.95ー13.35
注:ポイント要約は編集部
トルコリラ円日足
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