ドル円見通し 19日以降の持ち合いから上抜け切れず失速(21/9/2)

ドル円は9月1日夕刻への上昇で110.41円を付けて8月16日夜安値109.10円以降の高値を更新した。

ドル円見通し 19日以降の持ち合いから上抜け切れず失速(21/9/2)

19日以降の持ち合いから上抜け切れず失速

〇昨日のドル円、夕刻に110.41をつけ8/16安値以降の高値更新
〇その後21時15分発表の米ADP民間雇用報告が予想を大幅に下回る低調で109.86へ急落
〇23時発表のISM8月製造業景況指数は59.9、7月から0.4%上昇で市場予想も上回りドル安一服
〇今週末の雇用統計が冴えなければドル安、予想以上に改善なら早期テーパリングの可能性でドル高に
〇ナスダック総合指数は50.14ポイント高、取引時間中及び終値ベースの史上最高値更新
〇109.86以上での推移中は反騰の可能性あり、110.25超えからは1日夕高値110.41試し
〇109.86割れからは31日深夜安値109.57試し、底割れからは109円台序盤を目指すとみる

【概況】

ドル円は9月1日夕刻への上昇で110.41円を付けて8月16日夜安値109.10円以降の高値を更新したが、21時15分発表の米ADP民間雇用報告が予想を大幅に下回る低調さだったことで109.86円へ急落、その後はISM製造業景況指数が予想を上回ったことで下げ渋りからやや戻したが、深夜以降は110円を挟んだ揉み合いとなっている。31日も米住宅価格指数が強かったことでドル高に振れてからシカゴPMIが予想を下回ったことで下落に転じ、突っ込み警戒感から反騰するなど乱調な展開だったが、今週末の米雇用統計を控えて市場も米経済指標の強弱を巡ってやや過敏な反応を続けている。

【ADP民間雇用はデルタ株の感染拡大に影響されて低調】

米民間雇用サービスのADPが集計した8月全米雇用報告では非農業部門民間就業者数が前月比37万4000人増となり市場予想の61万3000人増を大幅に下回った。7月は速報の33万人増から32.6万人増へ下方修正された。ADPはデルタ株が雇用回復の妨げになったと分析した。
ADP統計が予想を大幅に下回ったことで週末の米労働省雇用統計でも低調な結果になり米連銀によるテーパリング(量的金融緩和による資産購入の縮小)開始が遅くなるのではないかとの思惑が働いて発表後はドル全面安の様相となった。
その後に発表されたマークイットの8月米製造業PMIも速報値の61.2から61.1へとわずかながら下方修正されたためにドル円はこの日の安値となる109.86円まで下げたが、23時発表のISM8月製造業景況指数は59.9となり7月から0.4%上昇で市場予想の58.6を上回ったためにドル安も一服となった。

前回の7月米雇用では先行して発表されたADP統計で非農業部門民間就業者数が6月の68.0万人増から33.0万人増(速報)へ伸びが鈍化したものの、8月6日の労働省雇用統計の非農業部門就業者数は6月の93.8万人増に続いて94.3万人増と高水準を維持した。8月5日には米連銀のウォラー理事が80万人から100万人増のペースなら9月のFOMCでテーパリング開始を決定できると述べたことで8月6日の雇用統計発表後はドル全面高となった経緯がある。今週末の労働省雇用統計でも公共部門の就業者の伸び等によっては高水準を維持する可能性もあるが、今のところの市場予想は75万人増とされてウォラー理事が示した基準を若干下回る。
市場としては、遅かれ早かれテーパリングは年末までには始まるが利上げはまだまだ先という認識であり、今週末の雇用統計が冴えない内容ならドル安、予想以上に改善ならややテーパリングが早まる可能性を意識してドル高に反応しやすいというところだ。

9月1日の米10年債利回りは前日比0.01%低下の1.30%。8月27日夜の米連銀議長講演を挟んで8月26日の1.37%から31日には一時1.27%まで低下したが、1日はいったん1.33%台まで戻してから1.30%まで再び低下した。小動きの範囲で週末の雇用統計待ちの状況だ。2年債利回りは前日から変わらずの0.21%で終了。
NYダウは前日比48.20ドル安と下落したが、ナスダック総合指数は50.14ポイント高と上昇して取引時間中及び終値ベースの史上最高値を更新している。ダウは高値圏でやや揉み合いだが、ナスダックはADP統計を見ても楽観的な先高期待を継続している。
為替市場全般はドル安、ユーロドルは1.1850ドルを超えて8月20日以降の高値を更新、豪ドルや南アランドも対ドルでこの間の高値を更新している。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、8月24日夜安値から5日目となる8月31日深夜安値で直近のサイクルボトムを付けて反騰入りしたが、9月1日夕高値からの反落で直前の上げ幅の半値以上を削っているため1日夕高値で直近のサイクルトップを付けて下落期に入った印象だ。安値形成期は3日夜から7日夜にかけての間と想定されるが、31日深夜安値割れを回避して1日夕高値を上抜き返す場合は31日深夜安値を起点とした上昇期の継続と改めて2日夜から3日深夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では1日夜の急落では先行スパンからの転落を回避しているので、26本基準線超えからは再び1日夕高値を試す可能性が残るが、先行スパン転落からは1日夕高値からの下落継続とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は1日夕高値形成時に70ポイントを超えたもののその後の反落で50ポイントを割り込んだ。このため60ポイント超えからは上昇再開とみるが、40ポイント割れからは20ポイント台へ向かう下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)109.86円を下値支持線、110.25円を上値抵抗線とする。
(2)109.86円以上での推移中は反騰の可能性ありとし、110.25円超えからは1日夕高値110.41円試しとする。1日夕高値手前で反落なら毛抜き天井型形成からの反落警戒とするが、高値を更新する場合は110.50円台から110.70円前後への上昇を想定する。
(3)109.86円割れからは下げ再開とみて31日深夜安値109.57円試しとし、底割れからは109円台序盤(109.25円から109.00円)を目指すとみる。また110円以下での推移なら3日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

9/2(木)
10:30 (豪) 7月 貿易収支 (6月 104.96億豪ドル、予想 102.0億豪ドル)
14:30 (日) 片岡日銀審議委員、記者会見
18:00 (欧) 7月 生産者物価指数 前月比 (6月 1.4%、予想 1.1%)
18:00 (欧) 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 10.2%、予想 11.0%)
21:30 (米) 4-6月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (速報 2.3%、予想 2.4%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 35.3万件、予想 34.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 286.2万人、予想 277.5万人)
21:30 (米) 7月 貿易収支 (6月 -757億ドル、予想 -710億ドル)
23:00 (米) 7月 製造業新規受注 前月比 (6月 1.5%、予想 0.3%)
26:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演

9/3(金)
10:45 (中) 8月 財新サービス業PMI (7月 54.9、予想 51.3)
16:55 (独) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 61.5、予想 61.5)
17:00 (欧) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 59.7、予想 59.7)
17:30 (英) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 55.5、予想 55.5)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前月比 (6月 1.5%、予想 0.0%)
18:00 (欧) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 5.0%、予想 4.5%)

21:30 (米) 8月 非農業部門就業者数 前月比 (7月 94.3万人、予想 75.0万人)
21:30 (米) 8月 失業率 (7月 5.4%、予想 5.2%)
21:30 (米) 8月 平均時給 前月比 (7月 0.4%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 平均時給 前年同月比 (7月 4.0%、予想 4.0%)
22:45 (米) 8月 サービス業PMI改定値 (速報 55.2)
22:45 (米) 8月 総合PMI改定値 (速報 55.4)
23:00 (米) 8月 ISMサービス業景況指数 (7月 64.1、予想 62.0)

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