トルコリラ円見通し 8月3日からの下落一服で戻す、失業率改善も寄与(21/8/11)

トルコリラ円の8月10日は12.89円から12.70円の取引レンジでの推移。

トルコリラ円見通し 8月3日からの下落一服で戻す、失業率改善も寄与(21/8/11)

8月3日からの下落一服で戻す、失業率改善も寄与

〇トルコリラ円、トルコ失業率の予想外の改善に夕刻から夜にかけ上昇、高値12.89をつける
〇11日朝は薄商いの中13.01まで一時的に上昇するも長続きせず12.83前後の揉み合い水準へ押し戻される
〇対ドルでは全般ドル高の中、トルコ失業率改善の発表からリラ買いが優勢となり8.54まで持ち直す
〇トルコ6月失業率は10.6%と5月から大幅改善、予想は悪化も見込まれていた為リラ買いの材料に
〇12日のトルコ中銀金融政策決定会合は政策金利の据え置きを予想
〇12.80以上で推移か割り込んでも回復するなら上昇余地あり、12.90超えから13.01を目指す上昇を想定
〇12.75割れから下げ再開を警戒し12.70前後への下落を想定

【概況】

トルコリラ円の8月10日は12.89円から12.70円の取引レンジでの推移。12.83円で終了して9日終値12.73円からは前日比は0.10円の上昇。8月3日から8月9日までは5日間連続の日足陰線での続落となったが、10日はトルコ失業率が予想以上に改善したこともあって夕刻から夜にかけての上昇で直前2日分の下げ幅を解消した。
8月11日未明にかけては12.83円を挟んでのもみ合いで推移していたが、11日朝には薄商いの中で13.01円まで一時的に上昇する場面があった。しかし長続きする動きにはならずにその後は12.83円前後の揉み合い水準へ押し戻されている。
8月6日の米雇用統計からはドル高基調に入っているが、ドル/トルコリラのリラ安が一服して下げ渋る中でドル円の上昇が継続したことで持ち直しの動きとなった印象だ。

【ドル/トルコリラは6日ぶりに反発】

ドル/トルコリラの8月10日は8.66リラから8.54リラの取引レンジで推移。
8月3日高値8.27リラから下落に転じて8月9日安値8.66リラまで5日間連続の日足陰線で下落したが、8月10日は6日ぶりの日足陽線で戻した。
為替市場は8月6日夜の米雇用統計が予想を上回る改善を示したことでドル高基調となりトルコリラも8月9日へ続落の動きだったが、8月9日深夜に8.66リラまで下げた後は下げ渋りに入り、8月10日は全般ドル高の中でも確りし、夕刻のトルコ失業率改善発表からはリラ買いの動きが優勢となり8月11日未明には8.54リラまで持ち直した。8月11日早朝には8.53リラまで若干高値を切り上げ、その後は8.58リラを挟んでのもみ合いとなっている。

【トルコの6月失業率は予想外に改善】

【トルコの6月失業率は予想外に改善】

8月10日16時にトルコの6月失業率の発表があったが、6月の失業率は10.6%となり5月の13.1%から2.5%の大幅な改善となった。市場の事前予想では前月から変わらずか若干の悪化が見込まれていたために、予想を大幅に超える改善だったことでリラ買い材料となった。
トルコでは感染拡大の第三波に対して5月前半にロックダウンを導入しており、今回はその悪影響が懸念されていたものの、5月後半からの規制解除により懸念されていたほどの悪化にはつながらず、その後の感染拡大の収束もあって却って雇用回復につながったといえる。

トルコの失業率は2019年8月に14.1%まで悪化した後も高水準を維持し、2020年7月にはパンデミックの影響により14.4%まで一段と悪化したが、その後は感染拡大も落ち着いて2020年9月には12.6%へ改善した。トルコ政府がパンデミックによる解雇を制限したことも効果的だった。感染拡大の第二波、第三波による影響も随時見られて今年4月には13.8%まで悪化したものの持ち直している。観光業はまだ冴えないものの製造業、サービス業の業況が改善していることが示された印象だ。
若年層の高失業率が問題視されてきたが、6月は若年層(15歳から24歳)も5月の23.2%から20.7%へ改善した。今年2月には27.1%まで悪化していたところからは大幅な改善だ。

【8月12日のトルコ中銀金融政策発表に注目】

8月12日にトルコ中銀の金融政策決定会合がある。現行の政策金利である週間レポレートは19%であり、8月3日に発表された7月の消費者物価上昇率(前年同月比)が18.95%へと上昇しており、政策金利との差はわずかとなり実質ゼロ金利からマイナス金利状態に陥っている。
トルコのカブジュオール総裁はインフレ率を下回るような政策金利への引き下げはしないと繰り返してきたが、一方では必要に応じて利上げする用意があるという前総裁が繰り返し強調してきた引き締め姿勢の文言を最近は削除している。6月2日にトルコリラ円が12.44円まで急落したのは前日にエルドアン大統領が利下げに言及したと報じられたことがきっかけであり、政権は利下げが物価安定を生むという異説を繰り返しているため、トルコ中銀も利上げを示唆するような姿勢を示せないジレンマに陥っている。
今回は政策金利の据え置きが予想されているが、中銀のスタンスがインフレ抑止への積極姿勢を示せないようだとリラ売りも活発化しかねないところだ。

8月10日にはドイツ銀行がトルコ中銀による利下げ予想時期を11月と12月の2回でそれぞれ0.50%の利下げになるのではないかとの見通しを示したと報じられた。年末のインフレ率を18%と想定して現行の19%から0.50%ずつ2回の利下げが可能という見方と思われる。ただ同行は従来の年末インフレ率予想を17%としていたので、従来予想よりもインフレの低下は進まないとの認識を示している。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月8月3日夜の急落で8月2日午後安値を割り込んだために8月4日午前時点では8月3日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして5日午後から9日午後にかけての間への下落を想定してきた。8月9日夕刻まで安値を切り下げてきたが、その後の反騰で0.10円以上を戻しているので8月9日夕安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。高値形成期は6日午前高値を基準として11日午前から13日午前にかけての間と想定する。12.75円以上での推移中は高値試しを続けやすいとみるが、12.75円割れからは弱気転換注意とし、12.70円割れからは弱気サイクル入りとして12日午後から16日夕にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では8月10日夜への上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも突破しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。弱気転換は先行スパンから転落するところとし、その際は遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は8月10日夜の上昇で70ポイント台へ到達したが、その後の高値切り上げに際しては指数のピークが切り下がる弱気逆行の気配がみられる。50ポイント以上を維持するうちは上昇余地ありとするが、50ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント前後への下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12.75円を下値支持線、13.01円を上値抵抗線とする。
(2)12.80円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、12.90円超えからは13.01円を目指す上昇を想定する。12.97円以上は反落注意とするが、12.80円以上を維持しての推移なら12日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)12.75円割れからは下げ再開を警戒して12.70円前後への下落を想定する。12.70円以下は買い戻しも入りやすいとみるが下げ足が速まる場合は12.67円前後へ下値目途を引き下げる。また12.75円以下での推移なら12日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

8月12日
 16:00 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 1.3%)
 16:00 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 40.7%)
 16:00 6月 小売売上高 前月比 (5月 -6.1%)
 16:00 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 27.0%)
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 週間レポレート (現行 19.0%)
 20:30 週次外貨準備高(グロス) 8/6時点 (7/30 641.3億ドル)
8月13日
 16:00 6月 経常収支 (5月 30.81億ドル)
8月16日
 17:00 7月 財政収支 (6月 -250.3億リラ)


※ポイント要約は編集部

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