トルコリラ円見通し 8月3日のトルコCPI発表から流れ変わる(21/8/10)

トルコリラ円の8月9日は12.80円から12.67円の取引レンジでの推移。12.72円で終了して前日比は0.02円の下落で8月3日からは5日間連続の日足陰線での続落となった。

トルコリラ円見通し 8月3日のトルコCPI発表から流れ変わる(21/8/10)

8月3日のトルコCPI発表から流れ変わる

〇トルコリラ円、9日は12.80から12.67の取引、3日から5日連続の日足陰線で続落となる
〇8/6米雇用統計の強めの結果受け、米長期債利回り反騰、ドル全面高にドル高リラ安加速
〇トルコCPI18.95%となり、政策金利週間レポレートとの差0.05%、実質ゼロ金利の状態
〇12日のトルコ中銀政策決定会合での利上げ可能性への言及の有無に注目
〇中銀会合で強気サプライズのリラ買いならば13円超えから反騰再開、高値更新の可能性
〇そうでない場合は下向きとし12.60割れから12.44試し、底割れの場合12.03を目指す流れの可能性も

【概況】

トルコリラ円の8月9日は12.80円から12.67円の取引レンジでの推移。12.72円で終了して前日比は0.02円の下落で8月3日からは5日間連続の日足陰線での続落となった。
6月21日安値12.48円からジリ高基調を続けて8月3日夕高値では13.15円を付けて6月11日高値13.21円以来の高値としたが、8月3日のトルコ物価上昇率発表後に流れが変わったようだ。
8月3日16時発表のトルコ7月消費者物価上昇率が前年同月比18.95%となり6月の17.53%から加速したことに対して、発表直後にいったんリラ売りに動いてから早々にリラ買いへと反転してこの日の高値を付けたのだったが、リラ買いは長続きせずに3日夜に急落に転じて12.86円へ失速、8月4日夜に12.83円、8月5日夕に12.77円、8月6日夕に12.70円、8月9日も夕刻にこの日の安値となる12.67円を付けて5日連続の安値更新となった。

当初はリラ買い反応が優勢に見えたトルコ物価上昇率に対する反応も、政策金利の週間レポレートが19.00%であるため、「当面は利下げ無しとしてのリラ買い」よりも「実質マイナス金利化への懸念による利上げ催促的なリラ売り」へと様相が変わったと思われる。そこへ8月6日の米雇用統計へ向けた米長期債利回り反騰とドル高が重なり、ドル円が急伸する一方でドル高リラ安も加速したためにトルコリラ円としては円安による押し上げ効果よりもドル高リラ安による圧迫感が勝る形となった。
8月10日午前序盤は12.81〜12.71円のレンジで下げ渋りの動き。

【ドル/トルコリラは6月11日高値を超えられずに4日連続陰線で下落】

対ドルでのトルコリラは8月9日に8.66リラから8.59リラの取引レンジでの推移、
6月25日に8.79リラの史上最安値を付けたところからリラ売り一巡となって戻しに入り、8月3日のトルコ物価上昇率発表当初のリラ高反応時に8.27リラの高値を付けたが6月11日高値8.25リラには一歩届かず、8日3日夜から急落に転じて8月3日当日から8月9日まで5日連続の日足陰線で大幅下落となり、8月9日深夜にはこの日の安値となる8.66リラまで安値を切り下げた。

8月3日のトルコ物価上昇率発表から流れが変わったところにドル全面高が重なったことでリラ売りが加速した印象だ。8月4日にクラリダ米連銀副議長、5日にウォーラー米連銀理事が相次いで年内の量的緩和縮小開始に言及し、その条件として7月分と8月分の米雇用統計で雇用増が80〜100万人の規模となることと示唆したために8月6日の米7月雇用統計が注目されたが、非農業部門就業者数は予想の87万人を超える94.3万人増、6月分も当初の85万人から93.8万人に上方修正、失業率も0.5%改善の5.4%となるなど力強い内容だった。これを受けて米10年債利回りは6日に1.30%台へ上昇、8月4日から3連騰での上昇となり、9日には前日比0.03%上昇の1.33%で7月22日に付けた戻り高値1.31%を上抜いている。
為替市場ではドル全面高の様相となり、ユーロドルは8月9日に1.173ドル台へ下落して7月21日の1.1750ドルを割り込み1月6日高値とのダブルトップであった5月25日以降の安値を更新、豪ドル等資源通貨も売られ、南アランドやメキシコペソなど新興国通貨も総じて下落した。

【8月12日にトルコ中銀金融政策発表、米連銀との政策スタンスの差も意識】

全般的なドル高に押されてトルコリラも下落したが、パンデミックからの景気回復と物価上昇を見て主要国中銀が金融緩和政策の見直しに入りつつあり、米連銀が量的緩和縮小議論を開始する中ですでにカナダ中銀が量的緩和規模の縮小に入り、豪中銀も9月からの縮小方針を示しており、世界規模の金融緩和拡大にブレーキがかかり為替市場にとっては投機的なポジションを縮小させる動きを強いられ始めている。そうした中でいったんは暴落的商状から脱却していたトルコリラも金融政策的な脆弱性を再認識されつつ売られ始めているのではないかと思われる。

8月3日のトルコCPI発表から流れ変わる

8月12日にトルコ中銀金融政策決定会合がある。消費者物価上昇率が18.95%となり政策金利の週間レポレート19.0%へあと0.05%しか余裕がない状況は実質ゼロ金利ないしはマイナス金利状態ともいえる。トルコ中銀のアーバル前総裁は在任中に三度の利上げで昨年11月6日の史上最安値12.03円(ベンダーによっては12.04円から12円割れも)から今年2月16日高値15.26円までリラ反騰を演出したが解任された。現任のカブジュオール総裁はインフレ率を下回るような政策金利にはしないと繰り返し強調してきたが、前総裁が示していた「必要に応じて利上げの可能性もある」との表現を削ってきた。今回の金融政策決定会合で利上げ可能性への言及があるのか、エルドアン大統領による利下げ要求を忖度して言及を避けるのかにより、市場も大きく反応するのではないかと思われる。

【鍋底型の上昇はとん挫、再び6月安値試しへ】

【鍋底型の上昇はとん挫、再び6月安値試しへ】

トルコリラ円は6月2日にエルドアン大統領による利下げ言及から12.44円へ急落し、6月11日高値13.21円へいったん戻した後の下げでは6月22日安値12.48円で底割れを回避し、両安値をダブル底とし、その後の緩やかな上昇で6月21日を中心に鍋底型の上昇基調を形成してきた。しかし8月3日からの5日連続陰線による下落でそれまでのジリ高基調も崩れた。8月6日安値で12.70円をつけて7月27日安値12.75円を割り込んだことにより底上げをしつつ戻り高値を切り上げるジグザグ上昇パターンも崩れている。
以上を踏まえれば、当面はもう一度6月2日安値及び6月21日安値のある12.50円以下のゾーンを試しに向かいやすい状況と思われる。
8月12日のトルコ中銀金融政策で強気サプライズ的にリラ買いが回復すれば13円超えから反騰再開、高値更新を目指す可能性も出てくると思われるが、そうならない限りは下向きとして12.60円割れからは6月2日安値12.44円試し、底割れの場合は昨年11月の史上最安値12.03円を目指す流れへ進む可能性も出てくるのではないかと考える。

【当面の主な予定】

8月10日
 16:00 6月 失業率 (5月 13.2%)
8月12日
 16:00 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 1.3%)
 16:00 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 40.7%)
 16:00 6月 小売売上高 前月比 (5月 -6.1%)
 16:00 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 27.0%)
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 週間レポレート (現行 19.0%)
 20:30 週次外貨準備高(グロス) 8/6時点 (7/30 641.3億ドル)
8月13日
 16:00 6月 経常収支 (5月 30.81億ドル)
8月16日
 17:00 7月 財政収支 (6月 -250.3億リラ)


※ポイント要約は編集部

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