ドル円見通し FOMC前の調整安だが日足は大きな陰線が観測(21/7/28)

ドル円の7月27日は前日比0.61円幅での下落、連日の陰線引けとなった。

ドル円見通し FOMC前の調整安だが日足は大きな陰線が観測(21/7/28)

FOMC前の調整安だが日足は大きな陰線が観測

〇ドル円、27日朝からじり安で推移し深夜に109.57まで下落、コロナ変異株感染拡大懸念などが原因か
〇NYダウはFOMCを控えた利益確定売り優勢と前日比85.79ドル安と下落
〇FHFAによる5月全米住宅指数は前年同月比18.0%上昇、1991年以降で最高の伸び率に
〇5月ケースシラー全米住宅価格指数も前年同月比16.6%上昇で過去最高の伸び率となったが反応は限定的
〇110円以下で推移中は下向き、109.57割れから109円前後への下落を想定、109円以下は反発注意
〇110円超えから強気サイクル入りとみて110.25前後への上昇を想定

【概況】

ドル円の7月27日は前日比0.61円幅での下落、連日の陰線引けとなった。7月27-28日の日程で米連銀のFOMCが始まり29日未明には声明発表と議長会見があり、金融市場全般も重要イベント前のポジション調整的な動きとなり、米耐久財受注や消費者信頼感指数が予想を下回ったことと5連騰してきたNYダウが利益確定売りに押されて下落したこと、米10年債利回りが低下したことで為替市場全般がドル安へとなびいたが、特にドル円は変異株による感染拡大への懸念もあって目立った下落となった。27日は朝からジリ安基調で推移し、110円台序盤にあった動きから深夜には109.57円まで下落、7月23日夜高値110.58円からの下げ幅は1.01円となり7月19日夜安値109.05円から23日夜高値110.58円までの上昇幅1.53円に対して3分の2を削った。深夜以降は下げ一服でやや戻しているが110円に届かずにいる。

NYダウは7月27日まで5連騰で史上最高値を更新してきたが、27日はFOMCを控えた利益確定売り優勢となり前日比85.79ドル安と下落、ナスダック総合指数も180.13ポイント安と下落した。デルタ株によるアジアでの感染急増が深刻化しているが米国でも変異株感染拡大傾向にあり、米疾病対策センター(CDC)がワクチン接種後も屋内でマスクを着用するよう要請するなど懸念が再燃しつつあることも株高にブレーキをかけている。米中の高官協議が中国で行われたが米中対立及び中国当局による自国IT企業等への規制強化の動きも市場心理をやや悪化させた印象だ。

米長期債利回りでは10年債利回りは前日比0.05%低下の1.24%。30年債利回りが同0.05%低下の1.90%と下げたが、利上げ時期に敏感な2年債利回りは0.01%上昇の0.21%となった。年限によりやや差のある動きだが、ドル円が意識する10年債利回りは7月20日に1.12%へ低下して3月31日の1.77%以来の最低となったところから22日に1.31%台まで戻していたが、その後は伸びずに失速している。3月31日以降は数日から1週間のリバウンドを入れながらも一段安を繰り返して下降トレンドを形成してきたが、今回のリバウンドもその範囲にとどまって下げ再開に入りつつある印象だ。

【FOMC待ち】

7月27日に発表された米連邦住宅金融局(FHFA)による5月全米住宅指数は前年同月比18.0%上昇で1991年の統計以降で最高の伸び率となった。リモートワークの普及と不動産投機の過熱、建材と労働力不足による需給ギャップが価格高騰を招いている。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによる5月のケースシラー全米住宅価格指数も前年同月比16.6%上昇で過去最高の伸び率だった。いずれも遅れた統計のために市場の反応は限定的だった。
米商務省による6月の耐久財受注は前月比0.8%増で市場予想の2.1%増を下回った。輸送機器を除くと前月比0.3%増で市場予想の0.8%増を下回った。また調査会社コンファレンス・ボードによる7月の消費者信頼感指数は129.1となり市場予想の123.9を上回った。景気回復感は継続しているものの、最近の景況感などでは急激な景気回復に一服感も見られる。そのあたりをFOMCがどう判断するのか注目されるところだ。

FOMCは6月会合で量的緩和縮小=テーパリング開始の議論を始めることとメンバーによる利上げ想定時期を前倒しした。パウエル米連銀議長はその後も繰り返し物価上昇の上ブレは一時的で年後半には鈍化するとみて量的緩和縮小着手を急がないとしてきたことで市場も落ち着いている。今回のFOMCでテーパリング開始の条件や時期について踏み込んだ内容になるのか、従来と変わらずに議論はするがまだ着手する段階にないとして市場に落ち着きを維持するようにアピールするのか、それによってはドル全面高のケースと全面安のケースと流れも一挙に変わる可能性もあるので注目されるところだ。踏み込まない内容になれば8月のワイオミング州で開く経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)での議長講演で量的緩和縮小計画への姿勢が示されることとなり市場もしばらくは待ちの姿勢となることも考えられる。

【逆三尊構成できるか、底割れからの下落基調加速か試される】

ドル円は7月14日高値110.69円と7月23日夜高値110.58円は対となり、19日深夜安値109.05円を挟んで左右対称となっている。7月27日深夜安値109.57円は7月8日深夜安値109.52円と対となる水準に来ており、19日深夜安値からは底上げとなっている。このため、現状で踏み止まって反騰入りして110.69円を超える場合は7月19日深夜安値を頭、8日深夜と27日深夜の安値を両肩とした逆三尊の底打ち型となる可能性がある。しかし109.50円割れから続落に入って7月19日深夜安値に迫る場合は逆三尊型も崩れて不発となり、7月19日深夜安値割れからは7月2日高値111.65円を起点とした中勢レベルの下落継続となり下落期が長期化する可能性がある。
FOMCをきっかけに反騰入りできるか、一段安か、試されるところだが、8月から9月にかけての相場趨勢を決める流れとなりやすいと注意し、方向性が見えたところからは流れに乗りたいところだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、7月19日深夜安値から3日目の7月22日夜安値を起点として一段高したが、その後の反落で22日夜安値を割り込んで弱気サイクル入りとなった。安値形成期は22日夜安値を基準として27日夜から29日夜にかけての間と想定されるので既に反騰注意期にあるが、110円台を回復できないうちは一段安余地が残る。FOMC後に急落反応の場合は売り一巡からのリバウンドで強気転換する可能性もあると注意。また110円超えからはいったん強気サイクル入りするとみて28日夜から30日夜にかけての間への上昇を想定するが、強気転換した後に23日夜以降の安値を更新するところからは新たな弱気サイクル入りとなる点に注意する。

60分足の一目均衡表では26日午後の下落で遅行スパンが悪化し、27日午前からの下落で先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、安値更新を回避して進めば遅行スパンは好転しやすくなると注意し、遅行スパン好転からは高値試し優先とする。ただし先行スパンを超えない範囲にとどまるうちは遅行スパンが好転した後に再び悪化するところからは下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は27日深夜への急落で20ポイント割れへ突っ込んだがその後は30ポイント台へ戻している。50ポイントを超えないうちは一段安余地ありとするが、相場が安値を更新する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる場合は反騰入り注意とする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月27日深夜安値109.57円を下値支持線、110.00円を上値抵抗線とする。
(2)110円以下での推移中は下向きとし、109.57円割れからは109円前後への下落を想定する。109円以下は反発注意とするが109.75円以下での推移か、FOMC後に反転できない場合は29日の日中も安値試しへ進みやすいとみる。
(3)110円超えからはいったん強気サイクル入りするとみて110.25円前後への上昇を想定する。110円台序盤は戻り売りにつかまりやすいとみるが、FOMC後に上昇が勢い付く場合は110.50円前後へ上値目途を引き上げる。ただしいったん110円を超えた後に今週の安値を割り込むところからは下げ再開により109円割れを目指す流れへ進みやすくなると考える。

【当面の主な予定】

7/28(水)
休場 タイ(国王誕生日)
10:30 (豪) 4-6月期 消費者物価 前期比 (1-3月 0.6%、予想 0.7%)
10:30 (豪) 4-6月期 消費者物価 前年同期比 (1-3月 1.1%、予想 3.8%)
14:00 (日) 5月 景気先行指数CI・改定値 (速報 102.6)
14:00 (日) 5月 景気一致指数CI・改定値 (速報 92.7)
15:00 (独) 8月 GFK消費者信頼感 (7月 -0.3、予想 1.0)
15:00 (独) 6月 輸入物価指数 前月比 (5月 1.7%、予想 1.5%)

15:00 (独) 6月 輸入物価指数 前年同月比 (5月 11.8%、予想 12.6%)
15:00 (英) 7月 ネーションワイド住宅価格 前月比 (6月 0.7%、予想 0.3%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省変動利付2年債入札
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC) 政策金利 (現行 0.00-0.25%、予想 0.00-0.25%)
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見

7/29(木)
10:00 (NZ) 7月 NBNZ企業信頼感 (6月 -0.4、予想 )
10:30 (豪) 4-6月期 輸入物価指数 前期比 (1-3月 0.2%)
16:55 (独) 7月 失業者数 前月比 (6月 -3.80万人、予想 -2.80万人)
16:55 (独) 7月 失業率 (6月 5.9%、予想 5.8%、予想 5.8%)
18:00 (欧) 7月 消費者信頼感・確定値 (速報 -4.4)
18:00 (欧) 7月 経済信頼感 (6月 117.9、予想 118.5)
21:00 (独) 7月 消費者物価指数・速報値 前月比 (6月 0.4%、予想 0.5%)
21:00 (独) 7月 消費者物価指数・速報値 前年同月比 (6月 2.3%、予想 3.2%)

21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 41.9万件、予想 38.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 323.6万人、予想 320.0万人)
21:30 (米) 4-6月期 GDP・速報値 前期比年率 (1-3月 6.4%、予想 8.5%)
21:30 (米) 4-6月期 GDP個人消費・速報値 前期比年率 (1-3月 11.4%、予想 10.5%)
21:30 (米) 4-6月期 コアPCE・速報値 前期比年率 (1-3月 2.5%、予想 6.0%)
23:00 (米) 6月 住宅販売保留指数 前月比 (5月 8.0%、予想 0.5%)
23:00 (米) 6月 住宅販売保留指数 前年同月比 (5月 13.9%)
26:00 (米) 財務省7年債入札


注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る