ドル円見通し 7月2日以降の安値を更新、リスク回避型円高(21/7/20)

ドル円は7月19日夜に109.05円まで一段安した。

ドル円見通し 7月2日以降の安値を更新、リスク回避型円高(21/7/20)

7月2日以降の安値を更新、リスク回避型円高

〇ドル円、19日夜に109.05まで一段安して7/2以降の安値を更新、下げ幅は2.60円に拡大
〇NYダウは前日比725.81ドル安と大幅下落、一時950ドル近い下げ幅となり昨年10月以来の下げ幅に
〇バイデン米大統領はパウエル議長と会談したと発表、インフレ加速のリスクに目配りするように伝える
〇19日に米国が日本やNATO諸国等と共同で中国がサイバー攻撃を行っていると非難する声明を発表
〇米中や米同盟国と中国との関係悪化への懸念が株安に影響を与えたか
〇109.60から109.80にかけては戻り売りにつかまりやすいとみる
〇109.50以下で推移中は下向き、109.05割れから108円台中盤を目指すとみて、108.50以下は反発注意

ドル円は7月19日夜に109.05円まで一段安した。欧州株が全面安となり米主要株価指数が大幅下落する中でリスク回避感が強まり米長期債利回りが低下、夕刻から夜にかけてはドルストレートにおいてドル全面高となり、クロス円全般が大幅安、ドル円も109円割れ寸前まで一段安となった。
19日深夜にかけて米長期債利回りが一時的に上昇した局面でドル円は若干戻しており、20日午前序盤も109.50円を挟んだ揉み合い水準となっているが、7月2日以降の安値を更新してこの間の下げ幅は2.60円に拡大した。
ユーロドルは5月25日以降の最安値を更新、ポンドドルも6月1日以降の最安値を更新、豪ドル米ドルも2月25日高値以降の最安値を更新している。メジャー通貨の加重平均であるドル指数は5月25日以降の最高値を更新している。

【NYダウは今年最大の下げ、これまで繰り返してきた調整レベルにとどまれるか?】

7月19日のNYダウが前日比725.81ドル安と大幅下落、一時は950ドル近い下げ幅となり、昨年10月以来9か月振りの下げ幅となった。ナスダック総合指数も同152.26ポイント安と下げた。世界的な変異株の感染拡大への警戒感が史上最高値近辺にあったNYダウにとっては自身の高所恐怖症と重なって手仕舞い売りを急がせた印象だ。米国が英国への渡航禁止を発表したこと、西部カリフォルニア州の一部などでマスク着用が再び義務化する動きを見せていこと、米国での感染者数が過去30日間平均で3倍に拡大し1万人台序盤だった新規感染者数が7月18日には3万人を超えたこと、アジアや中東での感染爆発の深刻さ等が不安心理を増長させているようだ。パンデミックからの景気回復感は継続しており、7-9月期の米GDPも上ブレする予想だが、一方ではインフレ進行への懸念もあり楽観し過ぎへのブレーキがかかっているようだ。

株安からの逃避買いで米長期国債は買われて利回りは低下、10年債利回りは前日比0.10%の大幅低下で1.19%となったが、一時は1.176%まで低下した。30年債利回りも0.10%低下の1.82%。2年債利回りは変わらずの0.22%だったが、一時は0.19%まで下げて7月13日へ反発する前の7月8日の水準まで下げた。

バイデン米大統領が7月19日にパウエル米連銀議長と最近会談したことを明らかにした。大統領は「強固で持続的な景気回復を支えるため必要と判断するあらゆる措置を講じるべき」「経済が盛り返して物価がいくらか上がったが専門家の見方やデータは大半の上昇が一時的であることを示している」として景気悪化を招くインフレ加速のリスクに目配りを続けるようにパウエル議長に伝えたと述べた。大統領が米連銀議長と直接会うことは政権による介入への誤解を招くため手控えられる傾向にある。元連銀議長だったイエレン氏が財務長官を務めている状況の中で大統領が直接パウエル議長と会談するというのは、よほど物価上昇に対して神経をとがらせているのではないかとも受け止められる。
米国は7月19日に日本やNATO諸国等と共同で中国政府が国家安全保障や経済の脅威となるサイバー攻撃を行っていると非難する声明を発表した。米中及び米同盟国と中国の関係悪化への懸念が株安にも影響を与えたようだ。

感染拡大、物価上昇、対中関係等が交錯してNYダウ等が大幅下落したわけだが、NYダウの下落規模は今のところは6月18日への調整安や1月20日への調整安の規模に近い。昨年3月の暴落から切り返しに入って史上最高値更新まで大上昇してきたが、途中では昨年6月、9月と10月等に大きな調整安を入れつつも、高値更新後の安値も底上げをして一段高を繰り返してきた。
今回の調整安も同様のレベルにとどまって6月18日安値割れを回避して持ち直せばさらに最高値更新へ向かう可能性も考えられるところだが、5月10日高値と7月16日高値がダブルトップ型となっての急落であるため、6月18日安値を割り込むような下落規模へ発展するとこれまでの調整安規模を超えるような展開へ進みかねない。そうなると為替市場もリスク回避的にドルストレートでのドル高、クロス円での円高、ドル円においても米長期債利回り低下傾向を見てドル安円高という流れが加速しやすくなると注意したい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、7月8日深夜安値から5日目となる7月16日夕安値で直近のサイクルボトムを付けて反騰していたが、19日夜に底割れから一段安入りしているため、16日夜高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしたと思われる。ボトム形成期は20日夕から22日夜にかけての間と想定される。強気転換には109.80円を超えるようなV字反騰が必要と思われる。

60分足の一目均衡表では19日夕刻に遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とする。強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。

60分足の相対力指数は19日夜の一段安で20ポイント台へ下げてから戻しているが50ポイントに届かずにいる。50ポイント以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは再び20ポイント台を試す可能性があるとみる。強気転換には50ポイントを超えた後も50ポイント以上を維持する反騰が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月19日夜安値109.05円を下値支持線、109.80円を上値抵抗線とする。
(2)109.60円から109.80円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)109.50円以下での推移中は下向きとし、19日夜安値割れからは108円台中盤(108.70円から108.30円)を目指すとみる。108.50円以下は反発注意とするが、109.50円以下での推移なら21日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

7/20(火)
休場、トルコ、シンガポール、マレーシア、インドネシア
10:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨
15:00 (独) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 1.5%、予想 1.1%)
17:00 (欧) 5月 経常収支・季調済 (4月 228億ユーロ)
17:00 (欧) 5月 経常収支・季調前 (4月 314億ユーロ)
21:30 (米) 6月 住宅着工件数・年率換算件数 (5月 157.2万件、予想 159.0万件)
21:30 (米) 6月 住宅着工件数 前月比 (5月 3.6%、予想 1.2%)
21:30 (米) 6月 建設許可件数 年率換算件数 (5月 168.1万件、予想 170.0万件)
21:30 (米) 6月 建設許可件数 前月比 (5月 -3.0%、予想 1.0%)

7/21(水)
休場、トルコ、インド
08:50 (日) 6月 貿易統計・通関・季調前 (5月 -1871億円、予想 4844億円)
08:50 (日) 6月 貿易統計・通関・季調済 (5月 431億円、予想 175億円)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
10:30 (豪) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.1%、予想 -0.6%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省20年債入札



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