ドル円 短期的高値を見て調整局面入り(週報7月第1週)

ADP全国雇用者数と月末実需をきっかけにドルが上昇、111円台乗せ、翌1日には雇用統計を前に高値更新の仕掛け買いが更なるストップオーダーを巻き込み一段高となりました。

ドル円 短期的高値を見て調整局面入り(週報7月第1週)

短期的高値を見て調整局面入り

〇先週のドル円、週半ばにADP全国雇用者数と月末実需をきっかけにドル上昇、111円台に乗せる
〇7/1には雇用統計を前に高値更新の仕掛け買いが更にストップオーダーを巻き込み一段高に
〇雇用統計当日は予想より強いNFPに反応しドル買い、その後弱い失業率に反応してじり安に
〇下げの要因は米国が独立記念日で3連休、週半ば以降のドル買いに対し調整売りが入ったため
〇今週は7日発表のFOMC議事録でタカ派メンバーのテーパリングも含めた発言に注目
〇今週は110.50レベルをサポートに111.50レベルをレジスタンスとする流れ

今週の週間見通し

先週のドル円は週初に111円台乗せに失敗したこともあり、その後週半ばまでは110円台半ばの狭い値幅でのもみあいとなっていました。水曜には強いADP全国雇用者数と月末実需をきっかけにドルが上昇、ストップオーダーが重なり111円台乗せ、翌1日には雇用統計を前に高値更新の仕掛け買いが更なるストップオーダーを巻き込み一段高となりました。

雇用統計当日は若干高値を切り上げた後に若干の調整を挟んでの数字待ちとなりましたが、初動は予想よりも強いNFPに反応してのドル買い、その後は日中高値を超えられなかったことや予想よりも弱い失業率に反応してじり安となりました。下げの最大の要因は米国が独立記念日で3連休となるため週半ば以降のドル買いポジションに対して調整の売りが入ったことです。

冷静に見ると雇用統計は強い数字も弱い数字もミックスしていましたし、債券市場ではテーパリング議論を速めるほどの数字でもないと見られ、米金利がやや低下する動きとなったことも上値を重くしたと言えます。ただ、下げたとは言っても週前半の安値圏にまで押したわけでもなく当面は調整局面入りとなりそうですが、中期的なドル高トレンドそのものには変化は無いと見てよいでしょう。

今週は7日に発表されるFOMC議事録でタカ派メンバーがテーパリングも含めてどのような発言をしたのかを見極め、7月FOMCへのシナリオを立てることとなりそうですが、おそらくは7月FOMCではテーパリングの議論が行われ、それがいつから始まるのかが示されるかどうかという流れでしょうか。7月FOMCで時期が示されない場合には8月下旬のジャクソンホールで9月FOMCに向けての見通しが示されることになるでしょう。

FRBとしては今後のインフレ指標が低下する見込みを立てているものの足元ではターゲットを大きく超える数字が続いていること、またテーパリングの前に市場に伝えるとしていることからも7月FOMCに向けていよいよ思惑が交錯する時期に入ってきたという感じです。最近は米金利とドル円の相関は負の相関(米金利低下+ドル高)が続いていますが、参考までに米国10年債利回りの日足チャートを見ておきましょう。

今週の週間見通し

サブチャートはドル円日足との20日相関係数ですが弱い負の相関が依然として続いていることがわかります。そして最大の注目点は3月末以降高値安値ともに切り下げる展開が続いていて、米金利が上昇に転じる兆候が現状では見えてこないことです。ドル円との相関は参考にならないものの、7月FOMCに向けて金利動向を考えるためにも定期的に観察を続ける必要はあるでしょう。

ドル円のテクニカルも見ていきます。いつもの日足チャートもご覧ください。

こちらのチャートでは4月安値からの平行上昇チャンネルを引いてきましたが、月末月初にこのチャンネル上限をわずかに上抜けました。そのまま使ってもよいのですが、月末終値で抜けた動きは気になりますので、サポートラインと平行に上側のラインは5月3日高値に合わせて引き直しました。

いずれにしてもドル高トレンドの中で上下しながらもドル高方向に向かっていることはたしかです。上側に引いてある水平線は下がコロナショック後の高値。上がコロナショック前の2020年高値です。まずは下側の水平線である111.71レベルが当面のターゲットとなり、ここを上抜けると昨年高値の112.21レベルが視野に入りますが、今週のところは先週高値を見た後の横ばいを考えます。

今週は先週のADP前の水準であった110.50レベルをサポートに、111.50レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定

(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

7月5日(月)
**:** NY市場休場
10:00 黒田日銀総裁講演
10:30 豪州5月住宅建設許可件数
10:45 中国6月MarkItサービス業PMI
16:00 トルコ6月CPI
16:50 フランス6月サービス業PMI
16:55 ドイツ6月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏6月サービス業PMI
17:30 英国6月サービス業PMI
26:00 デギンドスECB副総裁講演

7月6日(火)
13:00 豪中銀理事会
15:00 ドイツ5月製造業新規受注
16:00 スベイン中銀総裁講演
17:30 英国6月建設業PMI
18:00 ドイツ7月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏7月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏5月小売売上高
22:45 米国6月サービス業PMI
23:00 米国6月ISM非製造業景況感

7月7日(水)
15:00 ドイツ5月鉱工業生産
15:45 フランス5月貿易収支
27:00 FOMC議事録公表

7月8日(木)
08:01 英国6月住宅価格
11:30 豪中銀総裁講演
15:00 ドイツ5月貿易収支
21:30 米国新規失業保険申請件数
24:00 週間原油在庫統計

7月9日(金)
08:50 本邦5月貿易収支(国際収支)
10:30 中国6月PPI
15:00 英国5月貿易収支
15:45 フランス5月鉱工業生産
16:00 トルコ5月経常収支
19:00 英中銀総裁講演
23:00 米国5月卸売上高・在庫
**:** G20(〜10日)

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

6月28日(月)
ドル円はNY市場まではやや上値の重たい展開となっていましたが、ユーロドルに売りが入る流れの中でドル円でもドルが上昇、NY市場朝方には110.98レベルの高値をつけました。NY市場では米金利が急速に下げる流れとともに110.50レベルまで下げ、安値圏でもみあいのまま引けました。

6月29日(火)
ドル円は東京前場に株安とともに下げたものの安値は110.45レベルまで、その後は欧州市場朝方までじり高の流れとなりました。ユーロドルも含めドルが全般に強い流れから一時110.76レベルまで買い戻されたものの、海外市場に移ってからは狭いレンジの中で月末実需なども出て細かく上下に振れる神経質な展開を続けました。

6月30日(水)
ドル円はNY市場が始まるまでは動意薄の展開が続きましたが、ADP全国雇用者数が強かったことに加え、続いて発表された経済指標も強かったことからドルが上昇、前日高値を上抜けたあたりからストップオーダーも巻き込みながら111円台乗せ。ダウ上昇の動きも手伝って引けにかけては小動きだったものの111.12レベルと前週高値に並び、そのまま高値圏での引けとなりました。

7月1日(木)
ドル円は欧州市場序盤までは狭い値幅でのもみあいとなっていましたが、東京朝方の高値を上抜けるとストップオーダーも巻き込みながら一段高となりました。欧州市場昼前には111.63レベルまで上伸したものの、その後は利食いも出て111.35レベルまで調整。しかしNY市場では雇用統計を前に改めてドル買いが強まり111.64レベルまで上昇後高値圏での引けとなりました。

7月2日(金)
ドル円は米国雇用統計を前に東京市場では前日高値をわずかに切り上げ、111.66レベルをつけてからは高値圏でもみあいのまま欧州市場入り。欧州市場ではユーロ円での売りに引っ張られやや押されての雇用統計待ちとなりました。雇用統計はNFPが予想よりも強い+85万人となったことを受けドル買いで反応しましたが、111.59を戻り高値にすぐに反落。その後も引けにかけて米金利低下とともにじり安の展開を辿り110.95レベルの安値をつけた後にやや戻して引けました。



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